OL
ご近所のOLさんは、
先端に腰掛けていた。

vol.72
- game and art 3 -


こんにちは。
だんだん佳境に入ってきた
ICO (イコ)』という
ゲームのお話の第3回です。

ICO の海外のサイトがそれぞれ美しいので、
ちょっと並べてみますね。
見比べるとおもしろいです。

ヨーロッパの ICO
アメリカの ICO
韓国の ICO

私の ICO の印象は、
ときにはフィンランドだったり、
ケルティックであったり、
フランスだったり、
はたまた中国や韓国であったり、
北アフリカのモロッコあたりだったり。

およそ国境のない
とても不思議な「無国籍」感触。

そんなわけで今日は、
ICO の海外版ジャケットの話から
国を超えて感動を与える、上田さんの
「美しい絵」へのアプローチの話です。
どーぞ。


無国籍な ICO

icojacket
(クリックすると拡大します)
jacket-matrix
(こんなふうに並んでいます)

斎藤:

海外バージョンのパッケージを
持ってきたんですけど。
韓国、中国、アメリカ、ヨーロッパ版です。
みんな違うけど、
アメリカ版はパッケージがすごく違う。

まーしゃ: あ、アメリカ版のイコの顔!
イコって顔はこんなだったの?
斎藤: いや、アメリカ版のジャケットは、
アメリカのマーケティングの人が
イコの顔を作ったんです。
これが国による解釈の違いですね。
"US old style"のゲームの主人公像がありますね。
ヨーロッパ版は、凝った作りなんです。
これ紙ジャケットなんですけど、
お金かかってるんですよ、見た目よりも(笑)。
上田: 他のゲームと比べて異質ですよね。
まーしゃ: 韓国はモノクロになってますね。
なんだか韓国語が ICO に合うなぁ。
でもゲームの中で使われてる言葉は、
実は何語でもないですね。  
上田: あれは、男の子と女の子が
言葉が通じないことを表現したかったんです。
結果的にローカライズが簡単でしたけど(笑)。
日本語では始まらない。
日本じゃなさを出したかったんです。
まーしゃ: 雰囲気的にはケルティックな感じもします。
やっぱり無国籍ですねぇ〜。
斎藤: 音楽はケルトな感じですよね。
大島ミチルさんの。
まーしゃ: そうそう、音楽。沁みこんできます。
上田: 何か、こう、つみあげられた歴史が
欲しかったんです。
もう少し軽い BGM もあったんだけど
昔からその風景があったという感じ
を出そうと…。
まーしゃ: どこの国の人が見ても懐かしい感じを
受けるんですね。
上田: そうですね。
懐かしさとか、原体験のような感じが
出るといいなと思って。
まーしゃ: そういう哲学的なところを狙ってた?
上田: 正直、自分ではあまり意識していないんですけど。
まーしゃ: では作っているうちに?
ディスカッションとかでそういう方向に
なったのでしょうか。

美しい絵を作りたい。

海道: 作り手のねらいとか、
ストーリーやキャラクター設定よりも
そういうものよりも、
見せ方で、ちょっとしたことが
何倍にも増幅されているんですね。
上田: 絵というと、誤解があるかもしれないけど
「美しい絵」を作りたいっていうのがあって。
それはきれいなグラフィック
という意味じゃなくて。
例えば、背の高い女の子と
小さな男の子をなんで選ぶかというと、
その2人を風景の中に置くことによって
美しくなる、というようなことです。
それが手をつないでいると美しくなるな、
ということです。
海道: つまり、見る人の脳をいかに刺激するのか、
というところですね。
上田さんが言っている「美しい絵」というのは
誰が見ても脳みそを刺激されるような
本能的な原体験を取り扱うという点で
海外の人でもわかりやすい、
というのはありますね。
むしろ、ドメスティックなものは、実は
あんまり無いっていう側面はあるかな。
上田さん自身は、まず日本人に
受けるものって考えたんですけど、
それを海外の人が見ると、
「これはうちの市場にもいいな」っていう、
結果的にそういうものになっていくんですね。
 
上田: シチュエーションって
いうことかもしれないですね。
男の子が13歳で、
女の子が16歳の設定ですけど。
アメリカのユーザも
感じているところは似ているんですよ。
伝わりにくいかなと思ったんですけど。
アメリカで「感情移入」が
いちばんひっかかっているみたいで
感情移入させるためのシステムとして
すばらしいという評価を受けたようです。
海道: 感情移入というよりは、一体験というか
すごくリアルにそこにあるものとして
感じているところかな。
ストーリーがあって、
かわいそうと言って入り込んで行くというよりは、
(キャラクタとユーザの)
お互いに距離が縮まっていく的な
そういうところもありますし。
テキストがないのに感情移入していると
いわれてるのは
むしろシンクロ率が高くなっている
ということかなと思うんです。
斎藤: ICO はストーリーも進展しないし(笑)。
一貫しているんですよね。
お城から逃げること、っていう目的が
あるということで。
上田: それは大きいと思うんです。
たとえば RPG だと
最終目的っていうのががあるじゃないですか。
誰々を倒すとか。
でもゲームをプレイしていると
そんな目的を忘れちゃうんですね。
レベル上げとか目先のことに一生懸命になってね。
だけど ICO の場合、 常に(目的が)そばにいるし、
モチベーションがつねに傍にあるんです。
まーしゃ: ほー、それが女の子の存在ですね!
 
 --敬称略です--

つづく。
boy&girl
うーん。 なかなか聞くことのできない ゲームクリエイタ―の裏話は刺激的です。 次回は「女の子=ヨルダの存在」 のことをたっぷりと…。

marsha
Special thanks to Ueda-san, Kaido-san, Koji-kun
and Sony Computer Entertainment Inc.

2002-08-15-THU

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