OL
ご近所のOLさんは、
先端に腰掛けていた。

vol.53
- intelligent interface, Pong -


ロボットのPong(ポン)ちゃんに会ってきました。

Pongの開発者の
IBM東京基礎研究所の長尾さんから

「今度のPongはクイズを出します。」
とメールが届き、

「こりゃー、Pongのクイズにぜひとも答えなくちゃ!」

と、居ても立っても居られず、
田園都市線にゴトゴト揺られて1時間弱。
優雅な田園風景とやっぱりすごい威厳に包まれた
IBM東京基礎研究所を初めて訪問しました。

今のところ頭だけのPongと、
頭だけ(ごめん!)の長尾さん。


「IBMの本社ってどこにあるか、知ってるかい?」

早速Pongちゃん、クイズでお出迎え。

後ろの連動モニタ画面には選択肢。

  1. アメリカ・ニューヨーク州
  2. アメリカ・カリフォルニア州
  3. アメリカ・イリノイ州
「3番!」と私が答えると

「おいおい、やってらんないねー。」

と私のアホ回答に対してキレのいい江戸っ子口調で
文句を飛ばしてくるPongちゃん。なによ。
っていうんで、今度は、

「1番!」と当てちゃうと、

「おっと、やられちまったーい!」

と言って潔く兜を脱ぎます。

けっこうかわいいじゃないかー。

赤いスケルトンの顔。
目がキョロキョロして愛嬌を振りまくのと
話をするときゴムのくちびるが上手に動くのが
特徴です。そしてなぜか、ふさふさマユゲ。
そんなPongちゃん。

ところで、ITのセンタン研究者の方々に
会ってお話をじっくり聞いてると、
論文には絶対現れない人間的なところとか、
研究の苦労を垣間見ることができますねー。

で、どの人にも共通して感じるのは、
壮大な研究の夢のビジョンが明確にあって、
その研究のことを語り始めると
コドモのように目がキラキラと輝き出すっていう現象。
つまり、めちゃくちゃ楽しそうってこと。

人工知能分野で活躍している長尾さんの魅力は、
研究のツボをアピールするのがとても上手い!
と言ったら、語弊があるかもしれないけれど。

例えば、おカタい学会で話を聞いていて
「あー難しい〜。」と半ば眠気に襲われているときも、
長尾さんの登場で、
会場のコワバリが一瞬のうちに柔らかい雰囲気になり、
会場の議論もなんだかにぎやかになるような…。
さらに、私みたいなユーザサイドにも
理解できるように話してくれるような…。

要するに
「難しい研究をやさしい“人間の”言葉で置き換える
ことのできるコミュニケーションインターフェース」を
自身の中に持っている研究者。

もっとざっくばらんに言っちゃうと
「言いたいことをはっきり言う」ので
その大胆不敵さが気持ちよかったり
ドキドキしてしまったりもします。

つまり、自分のナチュラルな言葉を大切にする研究者
だと、(僭越ながら)勝手に感じているのですが…。
それもそのはず、長尾さんの研究は”言葉”に
深ーく関わっているのでした。

そんな長尾さんの、
最近の「ロボット」の研究の話と
「トランスコーディング」という
“言葉”に関する技術の話を
(実はこの技術で有名な方なんですが)
長尾さんの面白い話に乗せて
今日からクローズアップしてみたいと思います。

ロボット開発の渦中にいる人のエピソードとか
氾濫する情報の海の中で、どうやって
人間として知性を保ち育んでいけばいいのか。
そのために研究者は何をすべきなのか。
はたまた教育問題にまで
話はエクスプローリングして行きます。

私たちユーザ側も
そろそろちゃんと考えなきゃいけないポイントが
いっぱい出てきます。
でもなんせ聞き役が私なので、
しっちゃかめっちゃかで進んで行くし、
内容はとても柔らかです。
ぜひ最後まで読んでみてくださいね。

今日は、ピンポン玉で目を作ったので、
ポン(Pong)と名付けられた(意外と単純なのね。)
Pongと長尾さんの出会い辺りから聞いてみましょう。

Pongは、Webやメールの読み上げや、
情報検索をするなど、
人間の知的ワークを音声でサポートをするための、
生活に密着したロボットとして
研究開発されている真っ最中です。

(インパクのIBM Technology館にもポンちゃんが居ます。)

Pongとの出会い

ナガオ Pongは、去年の7月頃から
イベント(IBMの)でやんなきゃいけなくて
でも、人がいない状況だったんです。
で、結局、僕がやんなきゃいけなくて
それだったら1から作り直したいなあって。
…っていうか気に入らないんですよ。
今のコレは、正直言って。
アルマデン研究所っていうアメリカのIBM研究所で
作ったロボットをもらってきて。
で、僕らがソフトを作ったんですけど。
マーシャ 感情表現するロボットって
テレビで見たような気がするけど…。
(Pongは、テレビ東京「未来灯台、進化のプリズム」
(2000/11/08)で紹介されました。)
ナガオ んー。感情…、まあ、表情っていうのは
ある種の感情ですけどね。
あと声ですね。声の抑揚で。
それは、ココの東京基礎研究所で
作ったんですけど、そのボイスフォントって。
声によって感情表現をするっていうのは。
だから、「やられちまったーい」っていうのは
合成音声なんですよ。
マーシャ ふーん。
ナガオ ちょっとほら、
普通の「やられちまったい」(平板に)
とは大部違うでしょ?
マーシャ 違いますよね。かなり抑揚がついてた。
ナガオ そういうようなわりとこう、リアルに近いような
イントネーションとか韻律をつけるっていうのが
音声合成でやれてる話なんですね。
それとロボットの融合なんです。
マーシャ うん、うん、うん。
ナガオ だから、いろんな要素技術はあるんです。
で、ロボットはその複合ですから、
その要素技術を複合して、形にしてみせる、と。
僕としても、その要素技術だけ見せても
しようがないと思ってるから。
なんかアピールしないといけないんですね。
僕は、ロボットっていうのはいいなーと思ってるので。
ま、Pongは自分とこで引き受けることになったわけ。
マーシャ そっか。
ナガオ っていうか、コレ、組み立てるのを
手伝ってるんですよ。
マーシャ へーえ。そこから始ったんですか?出会いは。
ナガオ うん。去年の2月ころなんだけど、
僕がアルマデンに行ってた時にPongに出会って。
それで、接着剤つけたりとか(笑)。
このサーボモータのネジ止めしたりとか。
そんなことやって。だって10台作るっていうから。
マーシャ え?そんなにあるの?
ナガオ うん。
もう今、全世界にPongが行ってますから(笑)。
マーシャ そうなんだ。日本は?
ナガオ 日本はもう1台あります。2台。
だからその2台が、ロボットが…例えば
しりとりをするとか、そういうようなことも
やったことあるんですけど。
マーシャ しりとり?
ナガオ そういう、もろもろね、あって。
今現在に至ってるんですけど。
ともかく我々としては、できれば、もうちょっと
僕らがやりたいことを近づけて行きたいと思って。
それは、確かに顔のあるロボットっていうコンセプトは
「良い」と思いますし。
マーシャ うん。
顔のあるロボット

ナガオ それはそのアメリカのアルマデンの人たちが
デザインしたことで、
それは非常にいいと思うんです。
マーシャ ええ。
ナガオ だってPongが出る前は、
顔のあるロボットってあんまりなかったし、
どこかの大学とかでやってたのありますけど。
けっこうね、気持ち悪いんです。リアルで。
だから、リアルなものをリアルに
作ってはいけないっていう部分が あって。
マーシャ うん。
ナガオ 例えばね。テレビでも、
かなりデフォルメされてやった方が…。
マーシャ ドラえもんとかね。
ナガオ ええ。リアルじゃないんだけど、
バーチャルな世界ではデフォルメされてた方が
受け入れやすいってことはあるでしょ。
マーシャ ちびまる子ちゃんの顔も
よく見ると、凄いですよね。
ナガオ

シンプルですよね。
だから、ロボットに顔つける時に
どうすべきかっていう判断は
いろいろあると思うんですよ。
研究の方向をみて、
リアルな表情の再現であれば、
顔が自然にリアルになっていくわけですよ。

だけど、僕らがめざしているのは、
そういうことじゃないから。
デフォルメされた情報伝達でいいんですよ。
少なくともこういうひじょうに微妙な部分はね、
表情みたいな。
表情を記号で伝達するわけにいかないから。
やっぱりなんらかのアナログな
あいまいな表現になっちゃいますね。

それがあまりにも微妙だと。
けっこう受取る側の人間の感性に
すごく依存しちゃうでしょう。
それは笑ってる顔なの?怒ってる顔なの?
とかいう…。
人間は微妙な顔するけど、
ロボットにはあんまりさせたくないんです。
マーシャ ふーん。
ナガオ その意味で、デザインも
シンプルにしなくちゃいけない。
という意味では、Pongは当ってると思います。
もうちょっとねー。こうみんなこう無視しないで。
評価してくれるといいと思いますね(笑)。
マーシャ この(目を)ピンポンにしようと
思ったのは…長尾さんなの?
ナガオ いや違います。アルマデンのラジコンおたく。
マーシャ 何ていう人なの?
ナガオ デビッド・クーンズていう人なんですけど。
その人はねー。IBMの職員じゃなくて、実は
テンポラリーに来てる人だったんです。雇われて。
マーシャ へーえ。
ナガオ 週に何日かだけ来る感じで。
僕もその人と会って、
その人が凄い詳しいの。ラジコン(笑)。
マーシャ ラジコンの友?
ナガオ そう。それでマユゲも、
ルアーフィッシングのルアー使って。
マーシャ そうなの。
ナガオ そんなのも詳しいし。
マーシャ ああ、ふかふかしてる
(Pongのマユゲを触りつつ)。
ナガオ 口もゴムチューブだし。
よくそういう身の回りのものでね、
思いつく人なんですよ。

次回は、Pongのマブタの話から
新しいロボットプロジェクト「QB」の話へと。
その新しいロボット企画に参加しませんか?という
学生さんの研究員募集のお知らせもありますから、
どうぞお見逃しなく。

marsha

2001-06-12-TUE

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