OL
ご近所のOLさんは、
先端に腰掛けていた。

vol.26
- fifth generation -


「第5世代を語るとき…。」

Fifth …ではじまることって何を連想しますか?
リュックベッソン監督の 映画「The Fifth Element」
”Aquarius ”を歌う 「Fifth Dimention」かなぁ。
ふるいよね、私も。 (この間、本間千代子を知ってる
といったら、全員振り向いた、おじさんたち)

さて、センタン近辺で「Fifth…」とか「だいご…」と聞くと
ここらの人たちは大抵、おハナがピクピクと反応します。

それは必ず”The Fifth Generation Computer Systems”project を
指すからです。センタンの前身のミッションです。

日本語では「第5世代コンピュータプロジェクト」
短縮して”第5世代”、英語の頭文字をとって”FGCS ”
とか呼ばれています。

センタンのホームページにも
「第5世代コンピュータ、博物館」が
目立つようにしこんでありまする。

じゃあ、「第5世代コンピュータプロジェクト」
ってなんじゃらほい。
知る人は、知っている。知らない人は知らないでありましょう。
(そりゃそうですね)
私もここに来るまでは「知らない人」でした。
それは、簡単には説明できないくらい、
コンセプトもなにもかも壮大なプロジェクトなのです。
だから、簡単には説明は無理です。(あらら)
”まったく新しい概念のコンピュータを作る”というゴールが
あったんですね、とにかく。

1989年に今岡和彦さんというジャーナリストが書いた
『我が志の第五世代コンピュータ
  −渕一博とICOTの技術戦士たちー』(TBS ブリタニカ \1,600)
という本は、第5世代のことを知るバイブル的文献です。
詳しく知りたい方は、ぜひこの本をお読みください。

(と、逃げたところで)
ここではほんのさわりだけ。(しか、できない)

この本によると
コンピュータの世界では、

  • 第1世代:素子が真空管の時代
  • 第2世代:素子がトランジスタの時代
  • 第3世代:素子がIC(集積回路)、LSI(大規模集積回路)の時代
  • 第4世代:素子がVLSI(超大規模集積回路)の時代

    と呼ぶのだそうです。

    そうやってコンピュータは育ってきて
    現在は、第4世代コンピュータの時代にあたるのだそうです。

    で、肝心の「第5世代コンピュータ」というのは
    第4世代までの、回路素子に基づいた名称ではなくて
    素子は何でもよくて、ま、さしあたってはVLSIを使う
    のだそうですが、
    ”第5世代というのは、第4世代の次に来るから第5世代と呼ぶ”
    のだそうで、内容的には、
    第4世代までの流れとは違う新しいコンピュータを
    指すということらしいです。

    ついでに言うなら、
    アーキテクチャーを提案した数学者の名前をとって
    第4世代までを「フォン・ノイマン型コンピュータ」
    それ以降を「非フォン・ノイマン型コンピュータ」と呼んでいます。

    ん?
    むつかしくなってきた。(もうちょっとがんばって)
    例によって言葉を借ります。(上記の著書から)
    「第5世代コンピュータは---
    計算ではなく、
    推論をする。
    三段論法をこなす。
    従来のコンピュータを計算機械とすれば、
    推論機械である。
    専門家のような知識をもって
    専門家のような判断を下す。
    情報処理ではなく、
    知識処理を行う。
    いわれたことしかやらないコンピュータではなく、
    自分で考えるコンピュータだ。
    人間が意思決定するときに助けてくれる。
    逐次処理ではなく、並列処理なので、
    処理スピードがものすごく速い。
    千台ものコンピュータをつないで一台のコンピュータとしての
    機能を果たす。
    人間の言葉を理解する。
    国語の問題が解ける。
    人工知能を実現するコンピュータである。
    普通のプログラミング言語ではなく
    論理型言語というものを使う等々。」

    ようするに、超進歩したコンピュータですね。
    (ああ、なんてO型なんだ、わたし。)
    著者は、これらはイメージでありプロジェクトの全貌を
    現すには十分ではないと述べていますが、
    イメージとしてはこんな感じです。
    でも実現するとなると、高いハードルです。

    現代ではもう「考えるコンピュータ」と言われても
    答えるロボット犬や、学習するキャラのゲームが出てきたりして
    想像できる範疇にどんどん入ってきました。

    しかし、1982年にプロジェクトははじまっていました。
    18年も前です。
    「人工知能」という言葉が、ある種の「万能」を意味し
    まるで人間のように言葉を解し話すことが可能なほどに
    夢のコンピュータができてくるのだと
    ちまたでは、過剰な期待が高まっていた時代背景があります。

    1982年から後継プロジェクトも含めて13年間。
    出向のエンジニアだけでも500人以上、
    ソフトウエアハウスの人や事務の人など携わった人を
    含めると、のべ1000人近くになるのか(詳細は不明)。
    なにしろ、「参加メンバーの人員や質からいっても
    空前のプロジェクト」
    と今岡氏が表現しているほど
    日本のトップオブザトップの若手研究者たちが
    しのぎを削った場所だったようです。

    今センタンにいる司令塔はそこでも中核の人だったので
    プロジェクトのことは知り抜いているし、全貌を語れる
    数少ない人の1人ともいえるでしょう。

    でも、司令塔、そのプロジェクトの忙しい真っ最中に
    ピアノを習っていた(習い始めた)というのです。

    千葉から芝に通う時間がもったいないと単身赴任し
    徹夜に近い毎日が続く。
    研究所の近くの司令塔の住みかは、若い研究者たちが
    どんどん寝泊りするようになり、まるでタコツボ状態。
    自分の眠るべきベッドにはいつも誰かが既に寝ていたそうな。

    1週間に一度しか自宅に戻らない時間を割いて
    わざわざ、ピアノ。

    私:「どうして、ピアノですか?」

    司:「あのね、ものの値段、しかも、
    価値がわかる人にしかわからない
    アートの値段ってあるでしょう。
    絵画の値段とか、壷の値段とかね。
    例えば、ブランドものの洋服とかも
    ぼくなんか、最初はその値段と価値の関係がわからない。
    でも、ロンドンとか大きな街に行くたびにそういう店に通って
    洋服を見つづけてるうちに、
    どの洋服が高いのか、なんとなくわかってくるのよ」

    私:「はぁ、通ったんですか?買わないのに?」

    司:「ははは、そうそう、通ったの。
    で、ピアノもね、音が違うわけよ。
    安いピアノは安い音がする。
    それから、メーカ固有の音がある。
    Steinway には Steinway の音。
    YAMAHA には YAMAHA の音。
    それぞれ、ブレンダーという職人がいて
    音を決めてるんだよ。それをわかるまで追究しようと思った」

    私:「追究できたんですか?」

    司:「音を正確に聞き分けることができる先生と一緒にね、
    納得いくまでピアノを探した。そして、見つかったさ。
    テクノロジーもね、上の上に行くと、
    もう、何がいいとか単純に決められない世界だ。
    アートと同じだと思うね。でも価値があるんだよ。
    絶対的な価値が。それをわかることは大事なんだ」

    あ、第5世代からずれてしまったけれど
    第5世代時代の話を聞こうと始めた司令塔との雑談の中で
    そんなことを語ってくれたんですよ。

    これはもう、第5世代をすべて語っているのではないかなと
    思いました。

    研究とは、テクノロジーとは、アートである、と。
    フリーな環境に見えても、そこには熾烈な競争が存在し、
    過酷なゴールが定められ、
    結果を出せない研究者は否応なく振り落とされる。
    アメリカなんかはもっとすごい、食うか食われるかの、
    弱肉強食の世界。
    そんな世界で、一心不乱に研究する若者たち。
    頭脳と頭脳のせめぎあい、そして、切磋琢磨。
    日本の研究開発にとって、貴重な貴重な
    環境と時間がそこにあった。
    そんなプロジェクトを引っ張っていた人の1人、司令塔。

    実は、この司令塔がまもなく「ほぼ日」上に登場か?
    という話もあります。イトイさんと何を語ってくれるのかなぁ。
    ワクワクします。(いつのことかわかりませんが)

    きっとしょうもない「研究者のカタツムリ現象」とかの話、
    しだすんだろうなぁ。脱線につぐ脱線で。

    この「第5世代」からはばたいた頭脳が、人が、
    すでに、さまざまな場所で活躍していますが
    これからのデジタルエイジに向けて、
    ますます、とてつもなくはばたくのは間違いありません。
    それは、センタンに集まる第5世代の卒業者の話を
    聞いているだけでも、めきめき、伝わってきます。

    たんぽぽ 別名「タンポポプロジェクト」と呼ばれる、
    第5世代プロジェクト。
    種が飛び散って、また発芽し
    そこで花をつけるように
    第5世代で育った人材が
    世界に飛び散ってそこで
    成果を出してほしい、
    そういう願いがこもっているそうな。

    センタンホームページの 「第5世代コンピュータ、博物館」
    実はセンタン本体よりも売れ筋で、人気商品(販売してません)
    なんですわ。また見に来てくださいね。

    次はデジタルライブラリの話をしよっかなー。
    花粉に悩まされるみなさん、お大事に〜。

    ではまた。
    福嶋(まーしゃ)真砂代
  • 2000-03-09-THU

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