OL
ご近所のOLさんは、
先端に腰掛けていた。

vol.23
- virtual ≠ supposed No.3 -


YA,YA,YA,2000年がやってきた。
みなさま、おめでとうございます。

といっても、これを書いているのは、
まだ2000年問題発生前夜。地球はまだある。
まさか…

ロシアの管制塔が狂い、飛行機事故多発。
東欧ではオイルラインが絶たれ
中国のミサイルが発射され
世界は空前絶後の大惨事に…。
おおおぉ。

じゃ、ないよね。

みんな、平気のへっちゃらで、カウントダウンライブに興じ
電車も滞りなく動き、エレベータに閉じ込められる人もなく
いつもの年のように、初詣のごった返しもあり
おみくじ「凶」をひいた人も、ちゃんと神社の神木に結んで
甘酒飲んで帰ってきたよね。

そして、お雑煮をほおばって
「ほぼ日」を見ているわけですね。
(そうでありますように。)

よかった、よかった。
ピース。

…と、安心するのはまだ早い。
Y2K専門家によると、2月29日、3月1日など
他にもまだややこしい日があるのだとか。
そうです、今年は閏年。
2000年かつ閏年ということで
しばらくはエマージェンシーグッズの備えは、
しておいたほうがよさそうです。

さて今日は
「バーチャルリアリティと人間の認知機構」のお話。
このあたりになると
まさに専門領域。神の域。
カントは出てくるし、もう哲学の世界突入!
っていったって、参考文献はむつかしくて長い。
そこはトットトすっ飛ばして行っちゃいます。
(後記の参照URLまで旅してみてください。)

今回も)先生に
お導きいただきます(神っぽい)。

では、新約聖書の第2章「イエスの誕生」…。
じゃない、じゃない。

バーチャルリアリティと人間の認知機構との関係
あるいは
人間の認知機構に基づくバーチャルリアリティ
いうことについてのお話です。
(引用部分は太字です。)

これからいろんな言葉が出てくるのですが
舘先生に習って
整理しておきたい言葉を並べます。

表象知覚などによって意識にもたらされる 外界などの対象の心象
感性表象をもたらす人間の精神作用
悟性感性による表象ないしは観念から概念を構成し
判断および推論を行う精神活動

それから
<感性による表象>には

  • 対象が現前する表象→知覚表象
  • 記憶により想起される表象→記憶表象
  • 想像により想起される表象→想像表象
    があります。

    これらを踏まえて、いざ。

    バーチャルリアリティは、それがそこにない
    (現前していない)にもかかわらず、
    観察する者にあると感じさせる
    (同一の表象を生じさせる)ものです。


    では、なぜ、そこにないのに
    同一の表象を生じさせられるのか?
    という疑問が湧きます。

    なぜでしょう?

    「それは、人間が
    現前している対象を認識している際にも
    物自体を意識しているわけではなく、
    カントが
    「悟性のアプリオリな(先験的な)形式」
    (注1)
    と呼んだ人間の認識機構の仕組みにより、
    時間的・空間的に制約されている感覚の世界に
    物自体が立ち現れた姿、すなわち現象を
    認識しているにすぎないことに関係しています。

    どう?
    平易に表現するとどうなるのかなー。
    わたしたちが、ものを認識するときのやり方だと
    例えば、目の前にグラスがあるとすると
    グラスが存在するから、「グラスがある」と理解すると
    いうよりも、脳にグラスの形や色の情報が
    目などの感覚器を通して届けられているから
    グラスがあると思っている、ということになるかな。

    ということは、
    人間が認識する世界も、人間の感覚器による
    一種のバーチャルな世界である、

    と極論できます。

    え?ここもバーチャルな世界?

    その人間の感覚器はごく一部の世界
    を捉えているに過ぎません。

    ふーーん。そうなのか。

    たとえば、色は
    RGB(赤緑青)を担う
    それぞれの錐体細胞に、本物と同一の
    神経インパルスパターンを励起させれば
    自然の色とスペクトルが異なる光でも
    まったく同じ色に見えます。

    印刷物やテレビなどはまさにこの原理を
    利用しています。実物と同じ色でないにも
    かかわらず、人がそれを、あたかも天然色で
    あるかのように見紛うような色を
    再現しているのです。

    その意味でいえば、我々の身の回りには、
    印刷物やテレビなどのバーチャルな色が
    あふれています。

    なるほどねー。バーチャルに包囲された世界。

    現実とバーチャルの間の境界線が
    薄れてきた気がする、だんだん。
    今たたいているキーボードもバーチャルな
    気がしてきた。

    さて、そうすると、バーチャルリアリティを
    なぜ、生じさせることができるかの疑問の答えに
    だんだん、近づいてきたね。

    ですから、人間が現前する現実空間から
    現象空間を得るのと同じメカニズムを
    利用して、現前しない空間の情報の
    本質部分を人間に与え、そのことによって
    現前する場合に生じるのと等価な現象空間を
    生じさせることができるわけです。

    そうすると

    バーチャルリアリティが成立するのは
    人間がもともと有する感覚器と
    認知メカニズムのもつアプリオリな時間と空間
    の制約に基づいて、現実世界の写像を脳内に構成
    する仕組みをそのまま利用しているからです。

    というところにたどり着いたわけです。

    現在、バーチャルリアリティの研究は、まっ最中で
    大脳生理学、神経生理学、心理学、工学の研究者が
    垣根を越えてひとつのチームになって
    行うのもあるそうです。

    そして、vol.21でちょっとお知らせした
    「日本バーチャルリアリティ学会」が1996年に設立され、
    研究活動の基盤となっているのです。

    さーて、3回にわたって、
    バーチャルリアリティづくめで お送りしてきました。

    バーチャルリアリティは「仮想現実」ではなく
    「人工現実感」であることや
    バーチャルリアリティは「現実のエッセンス」であるとか
    バーチャルリアリティの三要素のこととか
    人間の認知機構に基づいてバーチャルリアリティが
    成り立つもんなんだ、ということだったですね。

    いかがでしたか?
    はまっていただけたでしょうか。
    最後に舘先生の深ーい言葉をもうひとつ
    聞いてください。

    バーチャルリアリティは
    人間を知ることから初めて可能となり、
    逆にそのバーチャルリアリティを使う
    ことで、人間を改めて深く知り直し、
    そして読み解いてゆくことが
    できるようになるのです。

    では、 21世紀のバーチャルリアリティ技術の発展を祈って。

    (注1) 【先験的観念論】  哲学で、カントの首唱した立場。 知覚の対象が物自体ではなく現象であり、 こうした対象が人間の直観の先天的形式(時間・空間)と 悟性の形式(カテゴリー)によって条件づけられてはじめて 存在を認められるものであるとする学説。 この学説は、認識作用によってとらえられない物自体を、 感覚的所与の根拠として認め、 事物の実在性が現象であると強調している。 批判的観念論。(Microsoft/小学館 Bookshelf Basic より)

    福嶋(まーしゃ)真砂代
  • 2000-01-02-SUN

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