ポケットに『MOTHER』。
〜『MOTHER1+2』プレイ日記〜

8月8日 電話が見つからないので


電車のなかや駅のホームなど、
おもに屋外で『MOTHER1+2』をプレイする僕は、
セーブポイント、つまり電話のある場所からの距離を、
つねに頭のどこかに置きながら
プレイするようにしている。
というのは、電車が駅に着いたとき、
僕はそこでプレイを中断しなければならないからだ。

電車が駅に着くまさにその瞬間に
電源を切らなければいけないというわけではないが、
できれば前後5分以内くらいには
電話のある場所まで行って、
きちんとセーブし、きちんとパパに挨拶して、
おたがいよくやったな、と言い合いながら
電源を切りたい。そういう人に私はなりたい。

ところが万事その調子で進むわけもなくて、
とくに先の見えないダンジョンを行くときなどは
たいへんに判断が難しい。
なにしろどこまで進めば一段落つくかの
見当が皆目つかないから、
奥へ向かって進むべきか、
大事をとって引き返すべきかをずいぶん迷う。

今日はとくにそういう感じで、
砂漠にあるダンジョンのなかをうねうねと進みながら
降りる駅が近づくにつれて深く思案した。
けっこう経験値も稼いでいたから、
ぜひどこかでいったんセーブしたい。
けれど、入口は背後遠くにあり、
行く先にすぐ出口があるとも思えない。
中途半端な感じでうろうろしていたら
電車は駅まで着いてしまった。

そこで僕は初の試みとして、
電源を切らずにそのまま放っておくことにした。
フロントライトのスイッチを切り、
ボリュームをゼロにして、
少しでも消費電力を抑えながら
ゲームボーイアドバンスSPを
そうっとバッグにしまった。

どこかで時間を見つけてセーブできるところまで
ちゃちゃっと戻ってしまおうと考えたわけだが、
案の定、僕はそれをすっかり忘れてしまっていた。

思い出したのはそれから数時間後の昼過ぎである。
わっ、と実際に声に出して
僕は慌ててそれをバッグからつかみだした。

幸い、リチウム電池はまだもっていた。
主人公と仲間たちは、暗いダンジョンのなかで
そのままじいっと待っている。
なんとも申し訳ない気分でいっぱいである。

大急ぎでセーブできるところまで戻ろうとしたが、
なぜか十字ボタンを押してもキャラクターが動かない。
どうしたことかとでたらめにボタンを押してみたら
ウインドーが開いてつぎのようなメッセージが流れた。

「だいぶ長い時間、冒険を続けているようだね。
 ちょっと休憩してはどうだ?」

ああ、そうだったそうだった。
『MOTHER2』では長い時間プレイし続けていると
パパからメッセージが届くんだった。

おもに屋外でプレイする僕は、
どうしてもこまめに電源を切る必要があったから
そのメッセージをいままで聞かずにきていた。
昔、スーパーファミコンでプレイしていたころは
よくこのメッセージを聞いたような気がする。

「電源を入れっぱなしにしちゃダメだぞ」

パパからのメッセージは
そういう内容ではなかったけれど、
ウインドーに書かれた文字を
そんなふうに解釈してみた僕である。

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2003-08-09-SAT


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