ポケットに『MOTHER』。
〜『MOTHER1+2』プレイ日記〜

7月4日 なんともいえない連帯感


いつかそういうこともあるだろうなあ、と思っていたら、
意外に早くそのときが来た。

電車のドアの横に立って
いつものように『MOTHER』をプレイしていた。
ひょいと座席のほう見ると、
座っている女性が
ゲームボーイアドバンスSPを手にして
熱心にプレイしている。

端から三つばかり向こうの席だったが、
僕のところから液晶の画面を見ることができた。

『MOTHER2』だ。

ぼんやりとしか画面は見えないが、
どうやら戦闘中であるらしい。
体力を表すゲージがドラム状になっていて
くるくる回転するのが『MOTHER2』の特徴だ。
当時は画期的なシステムとして
大々的に告知されたりしてたっけ。

楽しみにしているものの情報を
一切シャットアウトすることにしている僕としては
あまりその画面を見つめたくはない。
けれど、ついつい見入ってしまう。

なんともいえない連帯感。
あの人も『MOTHER1+2』をプレイしている。

あんまりじろじろ見ていてもなんなので、
僕はうれしい気分のままで
自分の『MOTHER』のなかに戻ることにした。
マジカントで買い物をしていたんだった。

しばらくプレイしていたのだが
そういうことって、なんだか重なるもんだ。
僕はヘッドホン越しに、
背後で話す二人組の声を聞き取った。
どうやら彼らは、僕の持っている
ゲームボーイアドバンスSPについて話している。

「……ゲームボーイのソフトもできるの?」
「……いくら?」
「……二つ折りなんでしょ?」

どうやら詳しくない一方が詳しい一方に
ひそひそ声で質問している。
要するに、買おうかなあ、どうしようかなあ、
といった種類のやり取りだ。

僕はちょっとくすぐったいような気持ちになる。
意識しないようにして、ゲームへ集中する。
意味もなく、にやにやしそうになる。

しばらくプレイして、僕の降りる駅に電車が近づいたとき
また背後から声がした。
あっ、という短い驚きの声だった。

「……なぁ、『MOTHER』だよ、あれ!」

詳しくない一方が、興奮気味に告げる。
いちおう声をひそめてはいるが、
もちろんその声は僕に届いている。
詳しい一方が「しいっ」とたしなめる。

「……ほら、『MOTHER』だよ!」
「……わかってるよ!」

駅がホームに着いたので、
僕はゲームボーイアドバンスSPを閉じて
振り返り、二人組のあいだを抜けてドアへ向かった。

大学生くらいの、痩せた二人組だった。
あんまりパッとしない感じだ。

二人組に妙な親近感を抱きながら、僕は電車を降りた。
まあ、キミらも『MOTHER』くらいやりたまえよ。
意味もなく、先輩気分の僕だった。

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2003-07-05-SAT


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