KANA
カナ式ラテン生活。
スペインは江戸時代の長屋みたいさ、きっと。

【10週間】


5月になって2週間め。
順調ならばハラの子は10週間になる。
4月下旬に行った初めての検診では、
8cmになったコケシ状のものが
トピトピトピトピ盛大に脈打っていた。
イエー。


ところで前回、
「私の不注意のせいで流産の危機ってやつばい、
 ヨヨヨヨ……」なんて
思わずピンスポットの中で慟哭してみたものの、
どうも、ンなこたーないそうです。

初期流産というのは
わりとよくある話(説によるが1.5〜3割くらい)で、
それは赤ちゃんの力がもともとちょっと弱かったり
あるいは妊娠超初期の薬やなんかの影響で
「これは生まれてきても、大変かもね」
という状態になったりしたとき、
ごく自然に起きる現象なのだという。

たしかに友人や読者さんからいただいたメールにも
「2度流産しましたが、いま2児の母です」
というような内容が、意外なほど多かった。
また、私は少量の出血が続いているのが
ずっといちばん心配なのだけど、それも、
「私もあったけど、大丈夫だったよ!」
という話を、たくさんのひとがしてくれた。

そういう話をたくさん聞いているうちに、
「つまり、赤ちゃんなるものは『縁』があれば
お日さまの下に出てきてくれるってことなんだね」
と、
わりと腹を据えて考えられるようになってきました。
ありがとうございます。


ちょうど先週、中学の同級生(妊娠6ヶ月)から
届いたメール。
誰もが認める頑張りやさんの彼女・Oちゃんが

妊娠して初めて自分でコントロールできないモノに
ぶち当たった気がします(笑)。

と、言っていた。
読んで、(そうそう!)と頷いた。
私もまた、ガガガガ、頑張ってきたもんなぁ。
それはもう「人事を尽くして天命を変えたらぁ!」と
握りこぶしも高々と、
全打席予告ホームラン!!の勢い。

それを「正しい」と思っていたし、
「正しいのだから、みんなもそうしないと!」と
学級委員長的に思っていたし
(Oちゃんと私は、生徒会で知り合ったのだ)、
まぁ成功すりゃ達成感なんかもあったりした。

でもそれは、はたして、
楽しかったかしら?
うーん、少なくとも、まわりのひとたちを
あんまり楽しい気分にはさせなかっただろうなぁ。


やがて結婚というのをして、
どうもいろいろ合わない人間と生活を共にして
いちいち思い通りにならないことばっかりで、
でも、気がつくと、ずっと自由になっていた。
(※「結婚して自由になる」は、糸井さんの名言)

さらにスペインなんていう
ママ大好きで自分大好きで故郷がいちばんで
シエスタでフィエスタで「なんでも、明日!」な
いろいろダメーなかんじの謎の国に住んでみて、
気がつくと「正しい」が、
ぜんぜん偉く思えなくなっていた。

そうして私は、わりとすごくハッピーになっていた。
それは、予告ホームランが実現してくれる
「想像どおりのサクセス」とはまったく違う、
ウッヒャッヒャッヒャ楽しいハッピーだ。


ひょっとしたら、
赤ちゃんというお客さまがうちに来るというのも
そういうことなのかしら?

たとえばいま、つわりが、けっこうきつい。
常に船酔いだか二日酔い状態で
毎日、「ゲゲゲが来たぞう」中だ。
でも、エコー画像でちっちゃな心臓を見た感動ときたら
そらもう、ウッヒャッヒャ!ことばになんない。
だからトータルとしてよろこびの方が大きく……、
っていうのではなく、
それもこれものあれやこれやぜんぶをひっくるめて
ベイベーとの毎日を
おもしろがれるようになるといいな、思ってます。

私もプレママ初体験だけど、
ハラの子に至っては、毎秒が初体験なんだろうしなぁ。
旅行とおんなじで、
不便もトラブルも、おもしろがっていいんだよね。


さて、スペインでの妊婦の常識について。それは、

「妊婦は生ものと炭酸飲料を摂るな」

私の妊娠を知るや、友人も、ツレアイの同僚も、
見事に口を揃えて真っ先にこう言った。
国立助産婦協会のパンフレットにも、書いてあった。

スペインにはもちろん
寿司や刺身を食べる日本のように生魚を食べる習慣は
マリネなどを除いてほとんどないが、生肉がある。
そりゃもう美味しい生ハムや、腸詰類。
でも妊婦はダメらしい。
おそらく、腹下しによる流産回避のためだという。
うーん、つわりがおさまったら久々に寿司で乾杯!
といきたかったのだが、
それは叶わぬ夢となりそうだ。
(日本でも、生魚禁止?)

乾杯、といえば、アルコールもダメ。
んじゃあノンアルコールのビールにするか、
と思いきや、炭酸飲料全般もアウトらしい。
これは理由がよくわからないので、
次回検診のときに訊いてみるつもりです。
(日本では?)

ちなみにタバコは、私は吸ってないのだけど、
「できれば止める、ダメなら1日5本まで」とのこと。
また、ドラッグは全面的に禁止。
と、ちゃんとパンフレットに書いてあるところが
マリファナ吸ってても捕まらない国なのでした。
(註:売買や持ち込みは違法。基本的にはダメなのよ)


それでは、アスタ・プロント!

カナ

※内田樹研究室内
 「今夜も夜霧がエスパーニャ」もよろしく。





『カナ式ラテン生活』
湯川カナ著
朝日出版社刊
定価 \700
ISBN:4-255-00126-X



ほぼ日ブックスでも
お楽しみいただけます。

もれなく絵はがきが届きますよ。

カナさんへの、激励や感想などは、
メールの表題に「カナさんへ」と書いて、
postman@1101.comに送ってください。

2006-05-17-WED

BACK
戻る