KANA
カナ式ラテン生活。
スペインは江戸時代の長屋みたいさ、きっと。

 
【必然エコノミーでエコロジー、の話】



その昔、といってもほんの数十年前のこと、
ふつうの家には洗濯機も掃除機もなかったとげな。

洗濯は、洗濯板でゴーリゴーリ。
掃除は、ぞうきん絞ってゴーシゴシ。
あぁ家事ってば汗だくだく。

時はうつり、
洗濯は洗濯機がワシワシまわってくれて、
掃除は掃除機がガーガー吸ってくれるようになった。
最近では、
洗濯機にタイマーついてたり洗剤が自動で入ったり、
掃除機がコードレスになったりダニ退治もしてくれる。
これ常識……、ん!?




なんだ? この古式ゆかしきモップとバケツ
ハッハァ、小学校の掃除用具でしょ。
え、違うの?
ウソ、スペインの一般的な家庭で使われている掃除用具?
この21世紀の現在に?

たしかにスペインでは、掃除機は
"一家に一台"と言えるほどには普及していない。
貧しいから、じゃないかもしれない。
だって別荘を持ってても掃除機がなかったりするから。
床がタイルだから、でもないかもしれない。
だってフローリングの床やじゅうたんも多いから。
じゃあどうして?
モップにまたがって、考える。


マリカルメンは掃除機が欲しかった。
先日、家電店で見かけた、あの最新型。
吸い込み口の角度が変化して5cmの隙間もラクラク、とか
床がきれいになったらランプの色が変わります、とか
そんな機能はついてない
日本ではもう数年も前に発売されたようなタイプだけど。

家に帰って「ねぇねぇお父さん。」と、ご相談。
親父のホアンホは笑ったね。
「お前ね、このモップとバケツのどこに不満があるんだ。
 モップは先っちょを変えればいつでも最新型だしよ、
 それにご覧、バケツにさりげなく乗ってるこのカゴを。
 どんなに水を吸ったモップだって、
 この穴あきのカゴにぐるぐる巻きながら突っ込んで
 最後に上から力いっぱいギュウギュウ押してやれば
 アラ不思議、あっという間に水切りができるんだ。
 掃除機なんて高いし、電気代もかかるし、だめだだめだ」
「でもほら、疲れないし、それに時間が節約できるし」
「疲れるって、それが元気な若者の言葉かい。
 父ちゃん泣いちゃうね。
 それに時間を節約したいなら、まず長電話をやめんかい」
マリカルメンの夢、破れたり。


ある日、ふたりはデパートでおもしろいものを見つけた。
ウォシュレット、とかいうトイレ。
その機能を見て病人用かと思ったら、"快適用"らしい。
周囲は興味津々のお客さんですごいひとだかり。
「ね、お父さん」
「また欲しいなんて言うんじゃなかろうな」
「いや、これはとっても気持ちよさそうだけど、高いね。
 今のトイレが壊れたり、おかんが病気したら考えよう」
「お、ええこと言うた。そういうこっちゃ」
おや、隣の見知らぬおじさんまで頷いてるよ。


結局、こうしてスペインでは、
掃除機はあんまり、
ウォシュレットはちっとも普及しないのでありました。

ウソ、かもね。

2001-08-13-MON

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