京都
「知りあいの宿」を
つくろう。



日ざしが加速度的にきつくなり、
夏を迎える時期になってきました。
今年の京都の初夏はどんな具合でしょうか。


サカベ
みなさん、こんにちは、
「旅館 銀閣」のサカベです。
京都も、あっつうなってきましたえ。
こういうときこそ、わたくしはやはり
お茶と甘味で、頭をホッと
させるようにしています。
── 和菓子もお茶も、
暑さでイライラギスギスした心を
すーっと落ち着かせてくれますね。

サカベ
このところの緑茶ブームもあって、
実は以前からみなさんに
宇治(うじ)をご案内したいしたいと
思うてたんですよ。
この時期、おいしいお菓子もたくさん出るし、
宇治は京都市内ほど
「観光、観光」していなくて、
自然がたっぷりで、おごそかなんです。


宇治茶の新芽です。もう新茶もできあがっていますよ。
── 宇治は、京都駅からはJRで、
四条からは京阪電車で、
それぞれ25分くらいのところです。
十円玉のデザインとなっている世界遺産、
平等院鳳凰堂(びょうどういんほうおうどう)
がある町ですね。

サカベ
宇治は戦火を免れまして、
町自体がとても古いんです。
住んだはる人たちにちょっと質問をしたら
「これは140年前の‥‥」などという言葉が
平気で返ってきます。
建物や、お茶屋さんに飾ってある
お道具などが、えらい骨董品なのに
ごくふつうである。そんな町なんです。
では、宇治の甘味からご紹介しましょう。
まずは、この写真を見てください。

── これは、宇治名物の茶団子ですね。

サカベ
そうです、茶団子です。
宇治で茶団子を扱うお店は数あれど、
ぜひ召し上がっていただきたいのは、
稲房安兼(いなぼうやすかね)の茶団子です。
とびきりおいしい!
── では、この写真はその、
稲房安兼というお店の茶団子だ、と。

サカベ
いえ、それが、ちがうんですよ。
これはイメージフォトです。
── い、イメージ‥‥?

サカベ
じつはですね、稲房安兼さんの茶団子を
撮影用にちょっと買ってきたんですけれども、
「旅館 銀閣」のスタッフが
それを食べてしもて‥‥。
── なんと!

サカベ
茶団子のかわりと言ってはなんですが、
ちまきの写真は撮りました。
この時期、
ちまきがすごくおいしいんですよ。
稲房安兼のちまきには、
抹茶味があります。


※6月3〜5日の間だけの販売です。
── ちまきって、5月の食べ物ではないのですか?

サカベ
宇治では旧暦の5月、つまり現代の
6月にちまきを食べる習わしがあるんです。
お店によっては真夏まで
扱っているところもありますよ。
── 稲房安兼は、創業は1717年。
どのくらい昔なのか、
頭で想像できないです。

サカベ
店内には、お茶の木の棒でつくった
茶摘みのおばちゃんの人形が置いてあります。

── な、なんですか、これは‥‥。

サカベ
そやから、茶摘みのおばちゃんたちです。
これ、よう見るとけっこう古くて
よくできてるんですよ。
お店の人も
「いまはこんなもんつくる人いやへんわ」
とおっしゃっています。
── よく見ると、ひとりひとり
表情がちがいますね。

サカベ
それからですね、宇治でお茶の葉を
おみやげに買うなら、
伊藤久右衛門(いとうきゅうえもん)さんが、
ええよ。
店内のカフェでは
抹茶味のパフェやチーズケーキを
出しています。
さすがお茶屋さんなだけあって、
洋菓子でも、ほんまのお茶の味がするんです。
特に、抹茶の生チョコは
チョコのころあいもよく、
ほんまにおいしいです。


※この写真は、サカベさんのご自宅で撮影しました。

それから、宇治を歩いていると
宇治茶という、ストレートな名前の
ペットボトル入りのお茶が売られていますので、
見つけたら記念に飲んでみてくださいね。
── この伊藤久右衛門も、創業280年ですね。
すごい。

サカベ

同じお茶屋さんで、もう一軒、
中村藤吉(なかむらとうきち)本店も
かなりおすすめです。



古くからあるお茶屋さんなんですが、
ここにも喫茶店があって、
抹茶パフェや生茶ゼリィが人気です。
こないだ行ったときなんて
休日だったせいか30分も待っちゃったです。
平日はもうすこし落ち着いていると思いますが。
ここのよいところは、お茶のお味見ができること。
ブレンド茶の「中村茶」を
一服点てていただけるんです。
気に入ったらひと袋、お茶っ葉を
買うていったらよろし。


若旦那さんがお茶をいれてくださいました。

── 歴史あるお店の方が直々に
煎茶をいれてくださるのですね。
それはぜひいただかないと。

サカベ
こうしていろいろとお茶を味わったあとに
行っていただきたいのが
宇治茶の歴史がわかる資料館、
上林(かんばやし)記念館です。


入館料は200円です。

おそろしく古い、貴重な茶道具が
展示されています。
なかでもおもしろいのが、
「お茶壺道中絵巻」の写し。



お茶を摘んで献上するまでの物語を
絵巻物にしてあるんですけど、
こまかいとこで
いろんな人がいろんなことをしてはって、
お茶にまつわる昔の人々の表情がユニークで
じぃーっと見入ってしまいます。
この上林家は、14世紀に茶園をひらき、
江戸時代に代々宇治茶師を勤めたお家なんです。
わたくしサカベは以前、
宇治で開かれたお茶会に
招かれたことがありまして。
── はい。

サカベ
そしたら、すんごい茶杓や
水指(みずさし)が出てきまして。
── それは緊張しますね。

サカベ
ええ。
めちゃくちゃ古そうな水指なんです。
水指を拝見するときに
ひじの骨がボワキィッッ
音を立ててしまいました。
まわりの先生方も
えらいびっくりしてはりました。
── それはそれは‥‥。
宇治がお茶の産地として栄えたのは、
どうしてなんでしょう?

サカベ
やっぱり、水がいいんですね。
宇治にある、宇治上(うじがみ)神社には
境内に「桐原水」と呼ばれる
水が湧き出ています。
もちろん飲むこともできて、
これは宇治7名水のうちのひとつです。
まあ、宇治だけでなく、
もともと京都の名産には
水にゆかりのあるものが多いんです。
お茶、豆腐、伏見のお酒、パン‥‥。
── なるほど。

サカベ
この宇治上神社は、平等院とおなじく
世界遺産なんですよ。

── それは、知りませんでした。

サカベ
宇治上神社は、なんと
日本最古の神社建築なんです。
拝殿と本殿は国宝。
空気が、なんや、ちがうんです。
ぜひぜひぜひぜひ、行ってほしい。
── 宇治は、平等院だけじゃないんですね。


サカベ
平等院もすばらしいですよ。
鳳凰堂にある国宝の本尊、
阿弥陀如来像も穏やかでよろしいですが
鳳翔館に展示してある
十一面観音菩薩像(重文)が最高です。
上品でお顔もよろしいし、
十一面のぐあいもいいし、お人柄もいい。
── お人柄も。

サカベ
まちがいない。いい方なんです。
是非、見てください。
ところで、同じく鳳翔館にある、国宝の
雲中供養菩薩像52躯のうち、
「南24」と番号のふってあるお人が
私はとても気になります。
だいたいのみなさんは雲に乗り、
お経を唱えたり
さまざまな楽器を奏でて舞っていますが、
この方だけ背中に「愛」と文字が書かれていて、
にんまりしてはるんです。
お顔も、親戚のおっちゃんというかんじなんです。
── 愛を背中にしょって。

サカベ
何を考えてはるんでしょうか、
あの方は 。
── というようなことを宇治で考察しつつ、
また、お茶を一服いただいたりして。

サカベ

宇治川を上り下りする、
に乗るのもいいですよ。
塔の島喜撰橋から約20分のコースで、
おひとり500円です。
宇治の水の豊かさを
感じていただけると思います。



あ、そうそう、平等院近くにある
県(あがた)神社では、6月5日に
お祭りがあります。
ここでは昔、露店でホタルが売られていて、
小さい頃はよく買って帰ったものでした。

ホタルがお祭りで売られていたなんて、
水がきれいだからこそ、ですね。
いま、県神社のお祭りでは、
ホタルは売られていないそうですが、
最近、京都の街なかに流れる高瀬川で
ホタルが舞う姿が見られることもあるそうです。
豊かな水に恵まれた京都を
お茶の郷、宇治で味わう。
抹茶味のお菓子が好きな人には
たまらない一日となりそうですね。
初夏の京都が、みなさんをお待ちしています。

サカベは初夏の和菓子が
大好き、のコーナー


今回は宇治のお菓子をご紹介しましたが、
この時期は、ほかにもとっておきの甘菓子が
出はじめる時期なんです。
京都の初夏のお菓子でおすすめお店を
ご紹介します。
お口のまわりが
にんまりしてしまうものばかりですよ。

老松(おいまつ)



つるつるっとした、
かまんでもええようなお菓子が上手な、
北野にあるお店です。
ここの「夏柑糖(なつかんとう)」は、
夏みかんをそのまんまゼリーにしたような一品。
夏らしくて、ものすごくおいしい。
年に一度は食べないとだめです。
「プルプルもの」のなかでは、いち押しです。



川端道喜(かわばたどうき)
下鴨にある和菓子屋さんです。
おすすめは、ちまき。このお店では、
2種類のちまきをつくっていますが、
吉野葛を使ったもののほうがプルプル感があって
おいしいです。
ここのちまきは,笹の葉でひとつひとつを
ものすごくていねいに巻いてあるんです。
心の行き届いたお菓子なんだな、ということが
しみじみ伝わってくるんですよ。素敵です。



和久傅(わくでん)
このお店では、「西湖(さいこ)」という、
蓮根菓子がおいしい。
つるんとしていて、夏にぴったりのお菓子です。

「プルプル軍団」は、日もちがしないので、
お土産には不向きです。
ぜひ京都にいらして、食べて帰ってくださいね。

2005-06-02-THU
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