まるで、NASAのようなメディアになりたい?

 第10回 次の試合が、はじまっている。






↑渋谷を走る「ほぼ日ブックス」!!!!!

みなさんこんにちは。ほぼ日のメリー木村です。

昨日から、ほぼ日ブックス創刊記念で
「ほぼにちわ。」のバスが走りだしました。
バス見たよお!のメールもいただいておりまっす。

・・・ただ、ひとつここで、
あやまらなければいけないことがあるんです。

さっそく買ったよ、というメールとともに、
「発売当日、『特約店である』と
 ほぼ日紙上で発表されたチェーン店に出かけ、
 ほぼ日ブックスを買おうとしたんです。
 でも、どこにも見あたらない・・・。
 店員さんに聞くと、
 『そのような本は、当店には、ありません』。
 どこにいけば、あるのでしょうか?
 確かに、特約店のはずだったのに・・・」
このようなお問いあわせのメールも、
11月1日に、たくさん受けとりました。

「ほぼ日ブックスを見たい!」と
ご足労いただいたのに、このようなことで
ストレスを与えてしまい、ほんとうにすみません。

さっそく、現状を調査してみました。

「入荷日が11月1日だったために、
 店員さんが荷物を開封して陳列するには、
 1日いっぱいかかってしまう場合がある」
「店員さんがあまり本を知らないまま
 アルバイトをしていたために、
 入荷状況をわからないでお答えしてしまった」
などの、さまざまな原因があるにはあるようですが、
実際に、発売日にお目にかけられなかった場所が、
出てしまったことは、残念ながら事実でした。
ほんとうにもうしわけなく思っております。

そこでほぼ日ブックスとしましては、
「どこにあるのかわからない状況」を
少しでも緩和するために、入荷したお店のリストを、
本日、こちらで発表させていただくことにいたします。

上記で発表したお店には、たとえ店員さんが
「あ、そういうのは、ないかもしれません」
と言ったとしても、入荷しているはずとお考えください。
(※こちらで発表した以外のお店でも、
  ほぼ日ブックスが入荷してる場合もあるようです。
  また、お近くの書店にない場合は、
  朝日出版社内、ほぼ日ブックス専用電話の
  『03-3238-1101』まで
  平日の9:30〜18:00にご連絡いただけますと、
  送料がかかりますが、日本内なら、原則として
  2〜3日でお届けできるようになっております)

・・・さて、今日の内容にうつりますね。
今回は、ほぼ日ブックスが創刊したいま、
糸井重里が、このシリーズに対して、
何を考えているかについての談話をお届けします。

創刊したばかりですが、思いがけず、
割と先の構想について話すものになりました。
かなりチカラが入っている談話ですので、
どうかぜひ、お読みいただけるとうれしく思います。

    ★    ★    ★

<↓糸井重里による談話を、お届けします>

ほぼ日ブックスの第1弾の10冊は、
かなり実験的なことをやっているとは言え、
いまはまだ、
「いままでの流通の枠にいたり、
 迷惑にならない限りで、なおかつ一緒に
 市場の可能性を追及していきましょうよ」
というチームで作られていると思うんです。

いま一緒に組んでいる
「ほぼ日」と「朝日出版社」のそれぞれが、
次の試合がはじまっているというカタチでの
工夫と努力をしていかないと、
チームを組めないなあ、と思いはじめています。

こちらも油断していたら、
誰ともチームを組んでもらえないし、
それは逆に、いま組んでいる人たちが
油断していたら、ぼくたちにだって
組む理由がないということになりますから。
そんな、スリリングなものに、
次の2弾以降の展開は、
なってゆくだろうと思っています。
そうすると、チームを組んでいるおたがいが
やらなければならないことと言うと・・・。

「ほんとうに商品力のあるもの」
を、作ることですよね、やっぱり。

いまの時代の主人公に
求められている商品を生みながら、
自分が社会の主人公であるという意識を
きちんと重ねられるような場所に、
いつでもいたいと思うんですよ。

そんな商品が、これから先、
1回に10冊ずつ出ていくとすると、
考えられないぐらい潤沢なものが
輝いて出てきますよねえ。

そういう試みを通した未来に、
やっと、ぼくたちなりの
「本って、いったいなんだろう?」
という答えにたどりつけるんじゃないか・・・。
いまは、そう考えています。

「俺の好きなものは、ああでもない」
「いや、こうでもない」とか、
グダグダ言っているヒマがあったら、
現物を作って考えてみよう、という実験を、
やっと、スタートできたんじゃないかと、
このほぼ日ブックスの創刊に対しては、
ぼくなりに、そう思っています。

「あるべき本」「必要とされる本」
・・・本の前につけるキャッチフレーズが、
これからのほぼ日ブックスには、
いろいろと、生まれてくることでしょう。
「持っているだけで気持ちいい本」だとか。

そういった、本の前につけるキャッチフレーズが
いっぱいできた時には、今度は、
ほんとの意味での企画立てというものが
できることになっていると思うんです。
企画立てとか、キャスト(作者選び)を、
できるようになるんでしょう。

本の企画とキャスティングを
最大限に生かせる方向を
ぼくらが真剣に考えていかなければ、
笑われてしまうものになるでしょうし、
どこにでもいる「ただ弱いチーム」になるなあ、
と思っています。

いま、ほぼ日ブックス創刊の瞬間ですが、
その間にも、末永徹さんと、次の連載の
テーマを相談したりしていますから、
ちょっとおもしろくなりそうですよ。

ただ、こうやって、次の連載に
かなりの力を入れて企画を立てることが
重要だとわかったのは、
一回、第1弾をやってみたからだと思っています。
ついに、このほぼ日ブックス創刊で、
「脱・文化祭」をしたんですよ。

「プロと似てるものだけど、
 もっとよさそうなものを作れるよ」
ということをやってきた時代から、
プロだアマだということをもう超えて、
社会の主人公がいちばん欲しがっているものを
とにかく1球、投げてやるぞという、
そんな気持ちになっていますから。
・・・ある意味、身のひきしまる気持ちです。

ただ、「ありがとうありがとう」と言って
受け取ってきた文章に対して、
これまでよりも負担をかけて、ある意味では
ここはこうしたほうがいいかもしれない、という
視点を混ぜながらの、イヤなつきあいに、
だんだん、なってきているように思います。
イヤなつきあいであり、楽しいつきあいでもあります。

こうして、ほぼ日ブックスが生まれて、
現在、次の10冊の構想を練っているという状態は、
ほぼ日そのものの成長の軌跡とも言えると思うんです。
「場があるから、いっくらでも使って遊んでね」
と言ってきたのがいままでだけど、
今度は、いくらでもスペースがあるんだよ、
ということを言わないでやる必要があります。

そう考えると、「第2期ほぼ日」が
この「ほぼ日ブックス」の創刊で、
はじまったのかもしれないなあと思います。

先日、田口ランディさんが、文学賞の挨拶で、
次のようなことを、おっしゃっていました。
「いままでわたしはインターネットというものを
 やってきて、評価というものと、無縁だった。
 本を出すようになったら、
 『評価』っていうものと縁がある社会に
 入ってきたなあと感じました」
このコメントは、するどいなあと思います。

もちろん、ためし打ちが
じゃんじゃんできるという点で言うと、
インターネットの上での展開は『甘え』じゃなくて
『自由度』になるんですよ。
そちらの面の実験も、ためしたいとは思ってます。

実はいずれ、ぼく(糸井)が
まったくコンテンツにタッチしないで
ただのオヤジになっているタイプの
『ほぼ日刊イトイ新聞』を
作ろうとしているんです。

若いヤツらを野ばなしにして
「やるだけ、やってみろよ」
「新しいゲームを考えてみたら?」
というようなメディアを、ほぼ日のほかに
もうひとつ、作りたいと思っています。

「あたらしいスポーツを作りな」
みたいな試みなのですから、そりゃあ、
やりとげるのは、むつかしいと思うんですよ。
でも、失敗するなら、失敗したらいいじゃない?
ネット上の場所は、タダなんだから。

そのもうひとつのメディアを
『熱湯ほぼ日刊イトイ新聞』
と名付けようと思っているんです。
・・・冷めたら、おしまい、ってやつ。
このコンセプトのもうひとつのメディアの中から、
チカラのあるひとが出てくるかもしれないから。

オヤジのやることの限界というのは、
ないわけではないわけだから、
次の時代につながること・・・
あたらしい価値観を作る人たちを、
育てたいと、思っていますよね。

邪魔をされるとかいう意味じゃなくて、
「こんなヤツらが出てきたら、
 俺はもう、ほんとにやることがないよ」
と、自分がクリエイターとして
ほんとうに大きなダメージを受けるぐらいの
あたらしいチカラを、
自分で育てていきたいんです。

そっちの、まったくの実験での
『熱湯ほぼ日刊イトイ新聞』の構想と、
もうひとつの、いまからはじまった
『ほぼ日ブックス』の試み・・・こちらは、
評価のある社会に向けて、精いっぱいに
自分でボールを蹴りこむという試みと、
両輪でやっていくんだろうなあ・・・。

・・・まあ、創刊したての時に、
なんでこんなことまで話してしまっているんだ、
という気も、しなくもないですが、
これは、ぼくが
本気で考えていることなんですよね。


(この談話は、次回につづきます)

2001-11-02-FRI


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