ある映画の冒険の旅。
映画プロデューサーは
走り回るよ。

第5回 <映画を買ったらまず最初にやること>

「忙しい、忙しい」と騒ぐのと、
「この忙しいのに、なんでこんなに暑いんだ!」
とわめくのに忙しくしていたら、
いつのまにか朝夕はしのぎ易くなってきましたね。
6月に植えた枝豆の生育状況と、
8月に植えた枝豆の生育状況では、目を見張るほどの
違いがあります。
なんとなく高くなった空に月がぽっかり浮かんでいる、
なんだか人恋しいなぁ。
それが、秋という季節ですね。

さて、前回の続き。
映画を買ったらまず最初にやることは、
原権利者(プロデューサー)との契約です。
「日本で上映してもいい権利」について
細かく取り決めをします。
で、すぐに原権利者(この場合、映画のプロデューサー)と
我が社との国際契約書を交わす準備にとりかかる。
これは、いくらで、何年間、どういう条件で
権利を譲渡するか、といったこまか〜い内容。
ウチの場合、外部顧問として契約内容を
レビューしてくれる弁護士の先生がいるけれど、
契約書の文面は作ってくれない。あるものを評価するだけ。
よって、今回はジョンに叩き台を作ってもらった。
が、しかし!
普通セールス・エージェントと交わす契約書のように
「だいたいみんなフォームは同じ」というわけにはいかず、
ジョンの作ってきた契約書はとにかくややこしくて、
めんどくさくて、難しかったので、
英和辞書、法律の英語の辞典などなど
を首っ引きでとりかかった。
ここでウカウカするとあとで
「ヒットしても儲からない」
ということが起こってくるから気が抜けない。

この契約書を作って、
訂正して、追加して、送って、訂正されて戻ってきて、
と繰り返し、
最終的にサインができるまでに、
今回は5ヶ月くらいかかってしまいました。
なんせ初めてのプロデューサー契約なもので…。
ここでカッコよく、
サラサラっとサインをしたいところだが、
残念なことにやはりここは大事な会社の契約書なので、
私ではなくてパルコの社長がサインをします。

この契約が終わると、
ようやく初号のプリントなどの素材を
送ってもらえることになる。
イニシャル・マテリアルと呼ばれ、
本編・予告編の35ミリプリント(字幕は入っていない)、
宣伝用に使うポジ写真数点、
本国で使用されたポスター、
それから英文のプレス用文字資料、
原語の台本などがワンセットに
なっているもの。
EPK(Electrical Press Kit)といわれる監督や
出演者のインタビューや、撮影風景などを収めた
ビデオがあればそれも送られてきます。
日本のテレビでたまに放送される現地での撮影風景などは
このEPK素材を使ったものの場合が多いのです。

素材が届くとようやく
「日本で公開する準備」を始められます。
本編のプリントが到着すると、
まずは字幕を入れる作業が始まります。
みなさんもよくご存知の
戸田奈津子さんがやっている作業です。
『うちへ帰ろう』の場合は、
ポスト戸田さんの松浦美奈さんに
字幕翻訳をお願いしました。
というわけで、次回は字幕制作や予告編制作の話です。

2000-09-09-SAT


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