APPLE
新宿二丁目のほがらかな人々。
おねぇ言葉や裏声とかで語る別角度批評。

カミングアウト。その3
ボーイフレンズ。

ノリスケ 男友だち? ゲイじゃない、友だちね。
普通に仲がいいよ。
ふるい友だち、いまだに仲いいよ。
ジョージ でも、数少なくない?
ノリスケ 少ないね。すごく。
つねさん あ〜。あんまりいなかったね。
ノリスケ カミングアウトしてないで、仲いい人、
今、ひとりかふたりだな。
でも、カミングアウトしてないで仲いいのに、
ふつうの友だちよりも、
ずっと濃い、不思議な関係の友だちもいる。
ジョージ 僕もいるよ。すーごく仲いいのが。
高校のときから一緒なんだけど、
結婚して娘ひとりいるの。地元で。
で、たまに、電話掛かってきて、
「東京に行く」って言うんだよ。
で、
「何で? 何か用事があるんかー?」
って言ったら、
「いやー、急にお前の顔が
 見たくなったから行きたい」
って言うんだよ。
つねさん いやんっ。
ノリスケ 不思議な友情。わかるよ。
ジョージ んで、うちの学年には、
オカマがふたりいたんだよ。
ん、もっといるんだけど……
ノリスケ 表立ってたのは二人?
ジョージ そう。僕と、もうひとり。
で、そいつは、その両方とも友だちなの。
ノリスケ ほー。
ジョージ で、直接接点があったわけじゃないのに、
両方とも友だちなの。んで、
「俺はお前らふたりと一緒にいると、
 ものすごく気が楽だ」
とまで、言うんだよ。
ノリスケ 不思議だね。
ジョージ でね、だから僕、地元に帰るとそいつがね、
家に泊まれ泊まれってんで、そいつん家行くと、
奥さんが最初、適当にメシの準備するんだよね。
ところが、いなくなるんだよ、そのうち。
で、ふたりっきりになるの。
で、なんか、ドキドキしちゃってさ。
寝れないで、いや、帰るわ、
ホテル取ってあるから帰る、って。
んで、他の友だちに聞くと、
そんなことはないんだよ。
奥さんはものすごくフレンドリーで、
一緒に、話をするんだって。
で、この前、奥さんとふたりだけで
話をする機会があったの。そしたら、
奥さんから、いやー、家の主人と、
ジョージさんがふたりでいるところを見るとね、
なんか私……
つねさん 入れないって?
ジョージ そう、入れない何かがあって、
気恥ずかしくなるから
出ていっちゃうんですよ、って言われて。
ノリスケ ハハハハハ。恥ずかしくなっちゃうんだ。
二人の間にある、割って入れない何かを
感じるんだろうね。
ジョージ 何やこれはーって。
で、奥さんがいうには、
学年のもうひとりのゲイの、
×××君っていうんだけど、
×××さんがいらっしゃった時と、
おんなじような感じなんです、って言われて!
こーれは、こーの女房も、
なんかー、センサー付いとるぞ、みたいな。
ノリスケ 付いてるんだねー。センサー!
それはそうだね。
僕も、仲のいいノンケの男友だちの、
奥さんって、センサー付いてるよ。
ジョージ 付いてる。
ノリスケ 付いてる。××んちもそうだし。
××さんちもそうだ……。
つねさん その本人は、わかんないの?
ノリスケ 鈍いんだよ〜。
ジョージ 本人はわかんないんだよ。
わかんないから、
一歩踏み出さずにそこに
とどまってるんだと思うんだよ。
んで、わかったら、踏み出すか逃げるか、
どっちかなんだよ。
で、彼の中には、あるの。
つねさん あ、それ(ゲイを理解する何か)がね。
ジョージ それが。
つねさん ほんとは。
ノリスケ ほんとはあるのか。
ジョージ どゆの? 男が好きとかじゃなくって、
女と一緒にいるよりも男と一緒にいる方が、
気が楽で、自分が自分らしくなれるというものが
あるはずなんだよ。
つねさん あと、もうひとつはたぶんその、
男だっていうよりは、
ジョージのことが好きっていうのが
あるんだと思うよ、たぶん。
ノリスケ ああ、それはそうだね。
ジョージ っつうか、僕「のような男」なんだと思うんだよ。
僕のような感性だったり、
感じ方だったり喋り方だったり。
で、何より、そいつの受け止め方っていう。
ノリスケ あ、そうそうそう!
どう受け止めるか、というので、
その人の懐に、深く入ることができるんだよ。
ジョージ その、スネて見せたり、
攻撃的になって見せたりするときに、
たとえば、男が男に対して攻撃的になると、
おんなじ攻撃を仕掛けるのに、
僕を攻撃しても、僕は、スルッと逃げるわけじゃない?
つねさん うん、うん。
ノリスケ あと、甘えてくるでしょ?
不思議なことに。
ジョージ で、甘えてくると、
甘えさせてやるわけじゃん?
ノリスケ うん、そうだよね。
僕らには、それができるんだよ。
ジョージ だけど、甘えすぎると、
ピシッとやったりとかするんだよね。
そういう、‘あ・うん’が
あるんだろうと思うんだよね。
つねさん 手練手管だね。
ジョージ いやー、そういうんじゃない。
お互いの呼吸だよね。
つねさん ああー。
ジョージ そういうのあるよね。
ノリスケ あるっ。カミングアウトはしてない?
その人に?
ジョージ うん、その人にはしてない。
ノリスケ してない。それって、すごくよくわかるよ。
ジョージ そいつには、してない。
ノリスケ 僕は、××くんがそうだよ。
知ってるよね?
あの人との関係がすごく近い。
友情、というのではくくれない気がする。
わかんない。
つねさん でも、ノリさんの場合は、
××くんのこと、好きだったでしょ?
ノリスケ 好きっ。いや、いまでもじゅうぶん好き。
つねさん あんたっ、××さんも好きだったもんね。
ノリスケ 好きよ(笑)。
つねさん で、それをぜんぶ奥さんが分かってんだよ。
ノリスケ そうなの、わかってんの!
どうかんがえても、わかってるのよ、
ジョージ 僕がいないところで、たとえば、
僕の地元では、けっこう同級生が
噂してると思うんだよ。
つねさん あ〜。
ノリスケ そうだろうね。
ジョージ うーん。僕とか、そのもうひとりの子だとかを、
あいつらはおかしい、昔から何かおかしかった。
ノリスケ 酒のネタにね。
ジョージ そう。言うんだよ。で、言ってるときに、
そいつはきっと、
「別にそうでもええやないか」
って言ってくれてるのが、わかるんだよね。
ノリスケ うん、うん、うん、うん。
ジョージ で、下手したら、
「お前も、おかしいんじゃないか?」
くらいも言われてるんじゃないかと思うんだよ。
ノリスケ うん、うん。
ジョージ そしたら、いや、別に、それでも、それこそ、
いいじゃないか、と言ってくれてるのが
分かるんだよね。んで、下手したら
奥さんかなんかに言う
変なやつらもいると思うんだよ。
で、そんときに、奥さんは奥さんで、
いや、うちの主人に限って
そういうことはないだろうと思うし、
もしそうだったとしても、
いいじゃないですか?
って言ってくれてると思う。
で、そういう感性は感じるよね。
つねさん ああ。いいねー。いい友だちがいて。
ジョージ ね。そういう友だちがいることはいいことだよ。
(つづきます)


2001-08-05-SUN

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