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新宿二丁目のほがらかな人々。
おねぇ言葉や裏声とかで語る別角度批評。

嫉妬。その2
憎むことしかしないの?

ノリスケ 英語とは逆なのかな、
日本語って、嫉妬を表すような言葉って、
けっこうあるよ。
「ねたむ」「そねむ」「ひがむ」……
ジョージ そうだよね。「ねたみ」「そねみ」っていうのは、
嫉妬だよねー。
つねさん 誹謗中傷とかね。
ジョージ そう。
ノリスケ 「ひがむ」って言うと、自分をおとしてるか。
つねさん でも、結局「ねたみ」も「そねみ」も、
落ちてんだもん。
ノリスケ そっか。
つねさん おちて、で、下からつついてるからそうなる。
陰だよ。
ノリスケ 陰。
つねさん 死角から、こうやるとかさ。
ジョージ 立場の上下じゃなくって、たとえばね、
「嫉妬」「ねたみ」「そねみ」に似ていて
ぜんぜん違う言葉に、「羨望」とか「羨む」とか。
ノリスケ うん。「羨む」って、字も奇麗だもんね。
「美しい」という字に似てるんだよ。
それにひきかえ「嫉妬」は両方とも女へんだわ。
失礼しちゃうわ。
ジョージ そうかー。
つねさん 「羨望」とかって、やっぱり、あのー、
指、組んでしまいそうだよね、こうやって。
(お嬢様風に窓辺にもたれる感じで)
ノリスケ うん。いつか私も、みたいな。
つねさん そう。
ジョージ たとえば、自分がつきあっている男が、
ものすごい奇麗な女の人が歩いているのを見て、
ボーッて見てるのを、
イヤッ、イヤッ、嫉妬ーっ! って見ると、
すっごい悲しいよね。
多分、それで、そう思った人は、
止まっちゃうんだよ、自分が。
つねさん うん
ノリスケ うん。
ジョージ それから先、たとえば、もし自分が好きな人が、
その奇麗な女の人のほうに魅かれて
ついていってしまったらば、
嫉妬の気持ちは、その連れてった、
自分より奇麗な女を、憎むことしかしないの。
ノリスケ うん。
ジョージ これは、嫉妬だよね。
ノリスケ うん、うん。
ジョージ だけど、男がついていこうとしてるのを、
いや、あの女、確かに奇麗だわ、私より。
何で奇麗なのかしら?
どこをどういうふうにすれば、
私の方が奇麗になるのかしら?
ぜったい奇麗になって、
あの女なんかに引っ張られないように
頑張りましょう、くやしいわー、って思ったら、
嫉妬じゃないんだよね。
ノリスケ そうか。おんなじ「くやしい」でも、違うんだね。
ジョージ そう、気持ちの持ち方だよね。
くやしい、くやしいって思うでしょう?
けっこう、色んなところで。
ノリスケ 思うよー。仕事でも、なんでも。
つねさん くやしいの後の、
気持ちの分岐が上にいくか下にいくかで、
下にいっちゃったら、
それは嫉妬になるわけでしょう?
ジョージ そうだよねー。そう、
たとえは悪いかも知んないけど、
裸になって、鏡の前に立って、
わき腹のところに本来あるはずのない
たっぷりと付いたお肉を見て、
くやしいわ、って。
ノリスケ フフフッ。
ジョージ (つねさんを見ながら)くやしいわ、って。
つねさん ……だよね。
ジョージ くやしいわ、って思ってから、じゃあ……
つねさん 頑張りましょう。
ジョージ そう。腹筋体操しましょう、とか、
これから1ヶ月油もの控えましょう、
と思うのはとっても前向きなくやしさだけど、
いやあ、もう、どうせ、いいわー、と思って……
つねさん もう、3桁までいきましょう、みたいな。
ノリスケ 3桁! いくらなんでも女の人、
あんまりそれは思わない(笑)。
ジョージ でも、焼け食いしちまうのは、悲しい嫉妬よね。
いや、でも、でもさー、自分の彼が、
誰か、自分の彼の陰にある、
目に見えない女の影におびえて、
嫉妬ばかりもつのは、
なんか、食って食って食ってやるっ、て
自分をどんどんマイナスの方向に
しているようなことと同じだろうな、と思うよ。
ね。逆に嫉妬したこととか、ある?
ノリスケ 嫉妬したことかー。
最初ね、うちの彼は営業で、
お客さんと、休日でもおつきあいがあるのね。
それが、営業なのか、ただ楽しくてやっちゃうのか
僕には分からなくて……
つねさん 僕がいるのに、休みだからって
お客さんとどっか行っちゃうっ! て?
ノリスケ そう。そうそうそう。それがね、
よく分かんなかったときは、とても、
ただ単純に嫉妬をしていた。
ジョージ んー、今は?
ノリスケ 今はね、とにかく話しあったし、
どういうことを不満に思うか、
立場が逆だったらどう思うかを想像しようよ、
ってことを明確にしたし、
なにかするにしても、
ちゃんと説明をしてからにするから、
なくなったよ。
最初は向こうもそれを、説明しないでいたの。
お客さんだから、あたりまえでしょ?
っていうのを、僕が、
分かってると思ってたらしいの。
つねさん 分からないことが、分からなかったのね。
ノリスケ 分かんなかったの。
で、今はちゃんと説明をされるんで、
説得されて行くぶんには、ぜんぜん。
「僕を説得してみなさいよ」
ってとこ?
つねさん ほんとにお客さんなの? とか思う?
ノリスケ ハハハッ。そこね、考えだすとね、きりがない。
つねさん そうそう。だから、恋愛で言ったら、
あとは相手を信用するとか、信頼するとか。
ノリスケ そっちいくねー。
ジョージ そっかー。
つねさん 嫉妬することある?
ジョージ 僕、ほとんどない。
あ? なになに?
自分のつきあってる人に対して
嫉妬するかってこと?
つねさん いや、いろんな意味で。
ジョージ ああ、僕は……
つねさん ないよね。
ジョージ くやしいと思うことは山ほどあるけど、
嫉妬はないなー。
ただ、人から嫉妬される存在だろうなと思うから。
ノリスケ ん〜?(笑)
つねさん そお〜?(怪訝)
ジョージ よく、高飛車でなく。
つねさん いや、わかるけどね。
ノリスケ それは思うよね。
ジョージ だって、だってー、違うの。
それはね、たまたま僕は、
ものすごく余分に嫉妬されると思うんだけど……
いやーっ、言っててすっごい
イヤな感じがするー(笑)。
つねさん 確かに(笑)。
ノリスケ フフフフッ。言ってご覧。
ジョージ 止めてちょうだ〜い。だけどね、だけどね、
ゲイの人っていうのは、
わりと普通のノンケのサラリーマンから見たら、
けっこう嫉妬されると思うよ。
嫉妬というか、羨ましいなと思うこと、
いっぱい持ってるんだよ。
つねさん 金遣い荒いから?
ジョージ たとえば、家庭を持っていないから、
自分のお金を自由に使えるとか、
それから、あれね、エッチのことに関しては、
もうものすごいめくるめくような、
欲望の実現のしかたが
揃ってるわけじゃなーい?
つねさん そうね。それも格安で(笑)。
ジョージ そう。
つねさん そうなんだよ。
ジョージ ノンケのお父さんたちが、
手っ取り早くいたそうと思うと、
お金遣うしかないでしょ。
ノリスケ お金遣うしかなーい。
つねさん そう。そのお金の遣い方が、
やっぱり、万単位いったりとか、するじゃん。
ノリスケ うん、尋常じゃないよね。
ジョージ で、しかも、たとえば、甘えたい気持ちを、
甘えさせてって、
男が女に言えるか? っていうと、
これはもう、商売づくの
甘え方しかないわけじゃない?
つねさん そうね。か、もしくは家庭にしかないよね。
ジョージ だけど、僕らの世界では65歳のじいちゃんが、
じいちゃんって言っちゃいけないんだ、
おじちゃまが、15歳の男の子に、
甘えようと思えば甘えられるわけだから。
つねさん そうね、ゴロゴロするもんね。
ジョージ で、そんなこと考えたら、
僕たちっていうのは、もう、
みんなから嫉妬されてるの。
つねさん ハハハハハハッ!
ジョージ しかも、それにプラス、
美貌と社会的地位と経済的成功でしょう?
もう、ほんとにどうしようかと
思っちゃうくらい、って感じっ。
ノリスケ ……………………。
つねさん 一瞬、空気が(笑)。
ノリスケ (笑)でもまあ、普通の男の人っていうのは、
ゲイの人が、どういう性的な
人間関係を持っているかっていうのは、
詳しくは知らないとは思うけどね。

(つづきます)

2001-07-23-MON

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