| つねさん |
こないだね、
ジョージさんと二人でご飯食べてたのね。
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| ノリスケ |
どこで？
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| つねさん |
パーク・ハイアット。
メイン・ダイニングでディナー。
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| ノリスケ |
素敵！
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| つねさん |
うん。それでね、聞いて聞いて、
そしたら、隣りの席に、
外人の、ゲイの、二人組が来たの。
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| ノリスケ |
どんな外人？
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| つねさん |
とりあえず、ひとりは、そおね、
崩れたケビン・スペイシーみたいな。
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| ノリスケ |
ハハハッ。
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| ジョージ |
そうね。なんちゃってケビン・スペイシーと、
なんちゃって痩せちゃったジーン・ハックマン。
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| つねさん |
じゃなくって、ランディ・バースじゃない？
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| ジョージ |
ランディ・バースかなぁ？
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| ノリスケ |
ランディ・バースとジーン・ハックマンじゃ、
ずいぶん違うでしょ。
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| つねさん |
いや、だからね、すごい中途半端なのよ。
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| ジョージ |
どっちにしても、クマさん系なの。
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| ノリスケ |
クマさん系なんだ。
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| ジョージ |
うん。ちょっと、クマキャラ。ふふ。
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| つねさん |
短髪でー、ゴーティー（あごひげ）のー。
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| ジョージ |
でも、ゆるいんだな、これが。
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| つねさん |
そう。すっごい。僕より腹、
ゆるかったからね。
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| ノリスケ |
（笑）触ったのかい。
あんたよりゆるいなんて相当だわ。
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| つねさん |
も、見てわかるもんね。
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| ジョージ |
揺れてるの！
でも、僕ね、素敵だな、と思ったのは、
その二人が食べてるのって、
ハンバーガーなんだよ。
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| つねさん |
そう。ハンバーガーとワイン。
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| ジョージ |
いいホテルのメイン・ダイニングで、
ぼくらは、コースのように食べたんだよね。
シーザー・サラダ頂いて、
パスタを二人でシェアして。
ぼくらは、シェアが基本だからね。やっぱり。
あの、んと、慣れないノンケ（男女）の
カップルっていうのは、
私はこれ、あなたはこれ、
前菜、前菜、メイン、メイン、でしょ？
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| つねさん |
で、逆に同じやつを
頼んじゃったりとかするんだけどね。
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| ノリスケ |
ほんとだね。
そういえば、ぼくらって、
シェアが、あたりまえだよね。
あたりまえすぎて、考えたことなかったよ。
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| ジョージ |
でしょ？ べつにゲイの話じゃなくっても
小洒落て、手慣れたカップルっていうのは、
シェアなんだよ。
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| つねさん |
そう。
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| ノリスケ |
当然でしょう。
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| ジョージ |
で、シーザー・サラダ、シェアして、
ワタリガニのリングイネを、
少し多めに作ってもらって、
メイン・ディッシュはひとつづつ。
だけど、チーズが食べたかったから、
チーズの盛り合わせにして、んで、この人が・・・
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| つねさん |
僕は、クスクスと、
地鶏と、チョリソーと・・・
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| ジョージ |
小羊のブロセットが上に乗っかったやつ。
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| つねさん |
そうそうそう。モロッコな。
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| ジョージ |
そう、モロッコな、
ちょっとエスニックな感じ。
ワイン飲みながらね。
そしたら、横に来た二人が、
えーっとね、僕らが、たぶん、
シーザー・サラダを食べ終えたころに、
彼らがやってきたの。
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| ノリスケ |
泊まり客なのかな？
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| つねさん |
だと思う。
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| ジョージ |
泊まってるの。
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| つねさん |
あのね、チェックしなかったんだよね、最後。
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| ジョージ |
うん。それがねー、ま、順番立てていこう。
二人が来ました。
そしたら、まず、つねさんの目が泳いだんだよ。
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| つねさん |
そう！
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| ジョージ |
ペローンて。僕のほうからは見えなくて。
あ、誰かいい男が来たんだなー、と思ったら、
僕を横切る影があって、見たらクマさん。
ていうか、なんちゃってクマさん。
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| つねさん |
ところが、なんで僕、
目が泳いだかっていったら、
ま、けっこうかわいかったのは
かわいかったんだけど、
向こうもずーっとこっち見てたの。
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| ノリスケ |
あ〜（笑）。
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| つねさん |
で、見て、ニコッて笑って、
首、すこーしかしげて、
スーッて座ってったんだよ。
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| ノリスケ |
なんてわかりやすいの。
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| ジョージ |
向こうの心のうちがわかったわ。
「オカマがいるわっ、オカマよ、オカマ。
ここは私たちオカマの指定席なのねっ」っていう・・・
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| ノリスケ |
どういう席なの？ 位置は。
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| ジョージ |
うん。あのね、いちばん濃密な席だよ。
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| つねさん |
奥の方の。
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| ジョージ |
どういうのかな？
ホテル的にはね、
ホテルのメイン・ダイニングっていうのは、
外のお客さんから見える位置に
どういう人を座らせるかっていうのが
重要なの。そこに座ってる人を使って、
ダイニングの雰囲気とか
格を高めたいわけじゃん。
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| ノリスケ |
そうだね。
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| ジョージ |
そん中に、僕たちは、
ぜったい入んないんだよ。
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| つねさん |
ホテル的な一等席には、
まあ、いわゆる、家族連れとかが多いよね。
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| ジョージ |
だから僕たちはぜったい入らないの。
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| つねさん |
あとはおしゃれなパーティ客とかだね。
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| ジョージ |
あのね、いちばん目立つっていうかね、
パーンと見て目立つところは、
家族連れなんだよ。
幸せな空気があるから。
だけど、目を凝らすと、実は、
いちばん目立つところって、あるじゃない？
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| ノリスケ |
うん。ある。
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| ジョージ |
建物でいうと、影のあるところだよ。
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| ノリスケ |
うんうんうん。
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| ジョージ |
で、そういうとこには、
濃密で、慣れたような、カップルが、座るの。
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| ノリスケ |
あ〜。
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| つねさん |
それは、ある。
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| ジョージ |
しかも、男も女も、
格好いいのが座ってるの。
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| ノリスケ |
はい。
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| ジョージ |
で、僕たちには、
そこに座る権利も、ないのよ。
私たち的にはね。
んで、私たちが通されるところっていうのは、
一応、大切なお客さんなんだけど、
他のお客さんの目につかなくって、
で、しかも、サービスが行き届きやすいところ。
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| ノリスケ |
うん、うん。
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| つねさん |
そう。ハンコ押してるみたいだよね。
ぜったい同じ席だもの。
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| ジョージ |
で、これはね、一歩間違えると、
他のお客さんに見せたくない客を、
座らせる席でもあるんだよ。
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| ノリスケ |
あ〜。
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| つねさん |
微妙だね。
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| ジョージ |
たとえばね、慣れてない、
今日、決めにかかってる、カップル？
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| つねさん |
そう（笑）。多いね。
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| ジョージ |
なんだよね。
だから、そういうのが、たまさか、
他に何組かいて、僕たちがいて。
で、僕たちはキッチンからいちばん近い、
だけど、キッチンがぜんぜん見えない、
他のお客さんからも、見えない場所。
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| ノリスケ |
うん、うん。
華はないけど実があるってかんじね。
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| ジョージ |
で、横が空いてました。
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| ノリスケ |
はい。
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| ジョージ |
ここは、僕たちのような人たちに対しての、
特等席が空いてました。
いつも、埋まることはありません。
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| つねさん |
あー、確かにそうだね。初めてだった。
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| ジョージ |
そう。でも、その日はね、
空きが、あったんですねぇ〜。
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| つねさん |
そう（笑）。
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| ジョージ |
なんちゃってクマさんが、来ましたぁ〜。
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| つねさん |
たまさか。ほ〜んとに、も。
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| ノリスケ |
きゃー。で、どうなったの？
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| ジョージ |
そしたらね・・・
|
（つづきます）
