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新宿二丁目のほがらかな人々。
おねぇ言葉や裏声とかで語る別角度批評。

旅に出ましょう。その3
機内でいい思いをするの。

ジョージ あと、カーディガン。
ノリスケ カーディガンは、ぜったい持ってく。
ジョージ カシミアだよ。ぜーったいカシミア。
ノリスケ でも、僕、ギャルソンだからウールか麻混。
つねさん 僕、カーディガン、持ってない。
ジョージ 中国製でもいいから、カシミアっ。
ノリスケ なんで、カシミア?
ジョージ コットンでも、いい。麻でもいい。
だけど、ぜったい化繊が入ってないこと。
ノリスケ 静電気がねー。
ジョージ 乾燥するから、静電気が大変。
つねさん あ、そっか。
ノリスケ 静電気、怖い。
ぼくは死ぬときはきっと
静電気にびっくりして死ぬのよ。
それくらい嫌い。
ジョージ だから、天然素材の、
上質の、カーディガン。
荷物持ちたくない旅行のときは、
ジャケット着て行くじゃない?
つねさん うんうん。
ジョージ で、ジャケットは、旅先の使い回し考えると、
黒とか濃いめのグレーとか、
茶とか紺とか、濃いめの色でしょう?
ノリスケ うん、うん。
ジョージ で、これはね、あの、裏のラベルが、
いわゆる、あの、勝負ですから、
Cクラス以上に乗るラッキーな方は、
ステュワーデスが受け取ってくれるわけですから。
エルメス、とは申しませんので、
くれぐれも、ギャップは、買わないように。
ノリスケ ハハハハハハッ。
けっこう極端なんだけど、それ。
ジョージ あー。間であれば、何でも可。
うん。あの、23区でも、結構です。
つねさん ハハハッ。
ジョージ で、その、どゆのかな?
機内に入って来たときの、
ジャケットの姿と、それを脱いで、
機内のくつろぎのための
カーディガンを着たときの姿の、
ギャップが激しければ激しいほど、
ステュワーデスの印象に残るんだよ。
ノリスケ そうか。
ジョージ そうすっとね、
お部屋着は、ちょっと派手目の色。
ノリスケ うん。
ジョージ ピンクだとか、黄色だとかね、
オレンジ色だとか。
ノリスケ 赤っぽい色。
ジョージ そゆのを着て、私はここにいますっ!!!
ってゆうふうにいわなきゃいけないの。
つねさん 主張するんだ。すごいね。
ジョージ ぜったいにね、上質なカーディガン。
これは女性のために言ったんですけど。
ノリスケ え? 男だって。
ジョージ 男はね、Fクラスの、ステュワーデスにね、
どういうお客さんを、
いちばん大切にしたいですか?
って聞くとね、まず、お行儀のいい人。
つねさん あー。
ジョージ で、手荷物が、多すぎず少なすぎず、
洗練されてる人。
で、機内に入って、いちばん最初に、着替える人。
ノリスケ はい。
ジョージ ただし、ズボンまで着替えるのは、NG。
つねさん あー。
ノリスケ あたりまえだ。
つねさん ジャケットとって・・・
ノリスケ カーディガン。
ジョージ そう、ジャケットとって、
渡したときのジャケットが、
とっても軽くて上質で、シワもなくって、
で、そのあと、パッて振り返ったら、
カシミアのカーディガンを羽織ってたらば、
あ、あの人に真っ先にサーヴィスをしに行こう。
って思う。僕、それで、けっこう、
いい思いをしてるもんねー。
つねさん あんた、あと、カバンでしょう?
ジョージ カバンもそうだしね。
ノリスケ 機内持ち込みは、何?
ジョージ ん、機内持ち込み、基本的に、エルメス(笑)。
ノリスケ エルメス。
ジョージ すいませ〜ん。エルメス、
一時期、フリークをやってたんで・・・
ノリスケ あー。こないだ、僕、
ちっちゃいリモア買って、持ってったらさ・・・
つねさん あ、なんか・・・
ジョージ かわいいよ。
ノリスケ けっこうね、褒められた。
ジョージ あとね、ちっちゃいグローブ・トロッター。
ノリスケ あ、あるんだ。
ジョージ ちーっちゃいグローブ・トロッターはね、
ほんとに、いいよ。
あー、こんなのがあるんですねー。
ってね、もね、一躍、人気者。
ノリスケ へー。
つねさん あんた、人気者系、好きだもんねー。
ジョージ 要は・・・
つねさん 目立つの?
ジョージ 目立つというか、飛行機に行ったらば、
僕たちはお客さんなんだけど、
数多くのお客さんの一人であって、
優先的におもてなしをしてもらおうと思ったら、
ステュワーデスに、
心良いと思ってもらわないと、
いけないんだよね。
だから、そのための工夫だよ。
ありとあらゆるものが。
つねさん 演出するんだ。
ジョージ 着席するまでに、機内履きをポーンと置いたり、
カーディガンを置いたり、
本、単行本かなんかをポーンと置いて、
で、カバンを上にあげて、
トイレにまず入って、出てきたら、
すいません、新聞を下さい。とか、
現地の時間は何時なんでしょうね?
とかって、適当にボロボロボロボロいってると、
いちばん最後にシャンパン一本くれたりとかするの。
ノリスケ あー。
ジョージ 飛行機の中の客を、
生かすも殺すも、ステュワーデス次第。
ノリスケ そうねー。
ジョージ うん。ここ、勘違いすると、
ビジネス・クラスのやな客になるんだよ。
つねさん あー。
ジョージ 「オイ!」とかって。
ノリスケ オイ。
つねさん 客だから。って?
ジョージ ほんとだよ。
ノリスケ いるんだよねー。
ジョージ もう、彼らに言いたいのが、
「有り難うございます」と
「お願いします」の、この2つ。
あと、「はい」「いいえ」。
つねさん 挨拶っていうのは、
ほんとうに重要だよね。
ジョージ ぜったい、「うん」はダメ。
「オイ」もダメ。で、無口は、もっとダメ。
「ねえちゃん」最低。
ノリスケ オレのことちゃんとわかれよ、みたいなね。
未だにいるんだものね・・・
ジョージ あとは、手のあげ方よね。
つねさん こういうのは、ダメなのね?
ジョージ あ、でも、これ、プリティーだよ。
ノリスケ いま、顔の横で、指をヒラヒラさせました。
ジョージ ヒラヒラしている腕に、
何が光っているか。も、けっこう、
ポイントが高いと思います。
ノリスケ 時計?
ジョージ あの、時計、はですね、やっぱり、
時差調節が簡単な時計を持ってって下さい。
それが一番です。
つねさん あー。
ノリスケ 簡単じゃない時計って、なに?
ジョージ デジタル・ウォッチ。
ノリスケ あっ!(笑)思いもよらなかった。
持ってないもの。
ジョージ デジタルはダメです。
ジョージ あと、超複雑系は、一回時刻変えると、
大変なことになって、それで、もう、
時計屋、駆け込んだことがあるんでー。
つねさん あ、そうなの?
ノリスケ トゥール・ビヨンとか。
ジョージ あと、一目で高級だな、と思う時計は、
なるべく持っていかないことだろうね。
腕から先、切り落とされたりとかするしね。
ノリスケ あなたは、どうしてるの?
ジョージ これだって、
そんなに高級に見えないじゃん。
ノリスケ 見えるよー!(笑)
つねさん でも、あの、石は入ってないからね。
ノリスケ そっち系かー。
ジョージ そう。
ノリスケ あの、マカオの質屋に行くと、
売ってるようなやつね(笑)。
ジョージ そいで、複雑系。針がいっぱいあるの。
針がいっぱいあったり、
窓がいっぱいあったりするのはNG。
ちなみに、あのー、JALと全日空の
ステュワーデスが、大好きな時計ていうのがね。
つねさん うん。あるの?
ジョージ うん。口説かれたい男がしてほしい時計は、
なんでしょう?
一位、ブルガリ。
二位、カルチエ。
つねさん あー、そっかー。
ジョージ ただし、カルチエのなかでも、
サントス系は、ダメです。
ノリスケ パシャでないとね。
ジョージ ブルガリは、なんでも可。
ロレックスは、デイトナと、
GMTサブマリーナ以外は、
みんな、もう、目もくれないそうです。
あ、ロレックスしか、知らないんだ、
って思われるんですって。
つねさん あー。
ノリスケ ビンテージ・ロレックスは?
ジョージ ビンテージは、もう、
好き嫌いの問題になってくるから、
ダメみたい。
ノリスケ でも、それしてるからって、
口説かれたいかどうかは、
また別の話だよ。
ジョージ でもスチュワーデスとお友達になると、
けっこう楽しいよ。
地元の美味しいお店、知ってるし。
聞かれるよ。なんかー、
ニュー・ヨークで、お泊まりですか?
ご滞在ですか?
「うん、そう。」
どちらにお泊まりですか?
つねさん 「フォー・シーズンズ。」
ジョージ あーーーっ、私たちは、
ぜったい行けないところなんですー。
アフタヌーン・ティ、美味しいんですって?
・・・もう、彼女たち的には、
そろそろ誘って。っていう。
つねさん ハハハハハ。オーラが出てんだ。
ジョージ どこまで言わせるの? みたいな。
ノリスケ 困っちゃうね。
つねさん ごめん、とかって?
ノリスケ どうするの?
ジョージ え?
つねさん あっちのスチュワードの方が、タイプですとか
言うの?
ジョージ ううん、僕、何回かいっしょに、
お茶飲んだこと、あるよ。楽しいもん。
楽しい。ステュワード嫌いなんだ。なんか。
つねさん あー。
ジョージ 腰が、柳腰でさ。
つねさん ネチっこいよね。なーんかね。
ジョージ だって、鎖の付いた老眼鏡とか、
してるのいるんだよ。短髪で。
ノリスケ そういうのってCクラス以上、
Fクラスくらいなんじゃない?
Yクラスには、いないよ。
ジョージ 最近、Yクラス、
日本人乗務員が乗ってなかったりするもんね。
ノリスケ ハハハハハ。アジア系よね。
ジョージ そう。だって、
「当機はシンガポール・ベースの乗務員が、
 7名乗っております」。
12名のなかで、7名って、
それ、いったい、どういうこと?
ノリスケ Yクラス、全員そう。
(つづきます)

※ほぼ日編集部より
今日は……大丈夫そうですね。だいたいわかった。
解説できなくてつまんないような気さえします。
あ、トゥール・ビヨン。これは、 ブレゲが考案した
精度の高いフクザツな時計だそうです。

2001-05-01-TUE
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