| ジョージ |
「やめたこと」といえば、
ろくでもない人に親切にするの、やめた！
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| ノリスケ |
なにがあったのよ。
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| ジョージ |
また、海外出張行ってきました。
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| つねさん |
はい。おつかれさまでぇ〜す。
今度はどっち行ったの？
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| ジョージ |
ま、ちょっと都会？
やっぱり、美味しいもの食べに行くじゃん。
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| ノリスケ |
うん。都会に行ったらね。
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| ジョージ |
いいお店に行ったのよ、１軒。
日本人の観光客が来ないところ。
来ないとこっていうか、
絶対ガイドブックにも出てないし。
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| ノリスケ |
何系のお店？
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| ジョージ |
シーフード系のお店。
アメリカの老舗のレストラン。
メニューといえば‥‥。
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| ノリスケ |
ロブスター？ ステーキ？
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| つねさん |
クラムチャウダー？
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| ジョージ |
そうね、ロブスター、お魚。
もちろんステーキもあるけど。
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| ノリスケ |
老舗なのに観光客が来ないお店があるんだ。
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| ジョージ |
あるある。いっぱいあるんだよ。
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| ノリスケ |
へぇー。
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| ジョージ |
知る人ぞ知る、みたいな。
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| つねさん |
あ、あそこ？
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| ジョージ |
うん、そう。
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| ノリスケ |
やぁね、「あそこ」でわかるの？
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| ジョージ |
日本でいうと、なだ万とか吉兆とかって
いうと、観光客も行くよね。
お金の問題だよね、行く行かないはね。
だけど、たとえば、
人形町にあるしゃぶしゃぶ屋さんだとか、
浅草にある、天丼が美味しいお店とかって
いうのは‥‥。
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| ノリスケ |
外国からのひとは、なかなか行かない。
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| ジョージ |
行かないじゃない。で、ガイドブックも、
そこまでは外国人向けには
書いてなかったりとかするから。
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| ノリスケ |
そういうお店ね。なるほど。
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| ジョージ |
そう。で、行ったの。
んで、行ったらね、
日本のおなごたちがいるんだわ、これが。
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| ノリスケ |
ありゃりゃりゃりゃ。いないと思ったのに。
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| ジョージ |
いるんだ、３人。日本のおなご。
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| つねさん |
なぜか３人。
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| ノリスケ |
それは、見るからに観光おなご？
向こうで働いてる子たち？
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| ジョージ |
まあ、観光客系だね。
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| つねさん |
そうなんだ。
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| ジョージ |
うん、だけど、けっこう英語も
しっかり喋ってるし、
なんか馴染んでるのよ。その環境に。
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| ノリスケ |
素敵。やるぅ。
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| つねさん |
普通の観光客よりは食べ慣れてるって感じ？
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| ジョージ |
うん、たぶんその街の観光は
リピーターなんだろうね。
で、僕は、お客さんたち連れて、
５、６人ぐらいだったのかな？
入ってったら、案内されたのが、
たまたま彼女たちの横のテーブルだったの。
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| ノリスケ |
ありゃま。
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| ジョージ |
そうすると彼女たちはね、
ガチョ〜〜ンなんだろうね、たぶん。
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| ノリスケ |
嫌だったのね、きっと。
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| つねさん |
「日本人はいないと思ったのにぃ」
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| ジョージ |
自分たちは、ガイドブックにも出ていない、
地元の人しか来ないと思って来たのに、
やだ、日本人のおやじが６人も！
でね、彼女たちは、
一生懸命メニューを見ながら、
何を頼むのかって考えてるのね。
で、そのときに、
この店は初めてなんだなと思って、
初めてお越しになったんですか？ って、
訊いたの。丁重に。
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| つねさん |
そしたら？
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| ジョージ |
「ええ」。
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| ノリスケ |
ひとことだけ？
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| ジョージ |
そう。で、こちらのお店は、野菜と、
ロブスターがひじょうに美味しい
お店ですよ、って、言って差し上げたの。
言って差し上げたら、
「あ、そうなんですか」って言いながら、
ひとしきり考えて、ウェイターに、
スープ頼んでパスタ頼んで
ステーキ頼んだの！
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| ノリスケ |
はははははは。
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| つねさん |
頼みやがったのね。
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| ジョージ |
しかもパスタよ？！
絶対アメリカでは食べてはいけない、
クリーム系のパスタよ？！
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| ノリスケ |
だいたい、アメリカで
パスタが美味しかったことないわ。
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| ジョージ |
僕はね、基本的に、人から喜ばれたり、
アドバイスするの好きな人なんだけど、
やめた！！
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| ノリスケ |
金輪際？（笑）
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| ジョージ |
いや、金輪際っていうか、
そういうおなごたちにはもう、
絶対言わないっ！
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| ノリスケ |
はははははははは。親切が仇になった。
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| ジョージ |
そう。ほんとよ。
もうそうなると、逆に、
いかに私たちのテーブルを
完璧な状態にするか、よ。
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| つねさん |
ははははははは。
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| ノリスケ |
そうよ。見せびらかしてやりましょう。
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| つねさん |
で、頼んだのが？
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| ジョージ |
そう。ほんで、メニュー見たらね、
今日だけっていうセットメニューが
あったの。
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| ノリスケ |
トゥディズキャッチみたいな。
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| ジョージ |
そう。いつものロブスターさんに、
お野菜の料理が２種類と、
サラダにコーヒーまで付いて。
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| ノリスケ |
ほぉ。
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| ジョージ |
おひとり様40ドル。
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| ノリスケ |
安ぅっ！！
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| つねさん |
わ。
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| ジョージ |
安いでしょ？ ふつう当り前に食べると、
おひとり様60ドルから
80ドルするお店なのに、40ドル。
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| ノリスケ |
いいじゃない。
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| ジョージ |
じゃあ、これ、いこうじゃないのよ、
みたいな？ そうするともうテーブルの上は
にぎやかになるし（笑）、なにより、
僕たちの周りのテーブルは、
みんな同じようにそのお得なメニューを
注文して、同じようなものを食べて、
同じようにハッピーなのに、
その子たちだけステーキ。
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| ノリスケ |
スープとパスタに。
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| つねさん |
でも別にステーキの不味い店じゃ
ないよね？
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| ジョージ |
それがね、彼女たちはね、
くれぐれもステーキは焼き過ぎないで
ちょうだい、ミディアムレアがいいの、
って言っていたけれど、
アメリカ人にミディアムレアっていう
言葉はないわね。
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| ノリスケ |
ないです。あるけどないです。
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| ジョージ |
生か、中くらいか、炭かっていうような
区別しかないんで。
で、やってきたのは‥‥。
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| つねさん |
焦げ？
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| ジョージ |
ま、限りなく炭に近い、中くらい？
んで、パッと見て、
厭だこれ、ミディアムレアって
言ったのにぃ、って騒ぐのよ。
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| ノリスケ |
ふふふふふふ。
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| ジョージ |
ふふんっ、って思ってたの。
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| つねさん |
わっはっはっはっは！
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| ノリスケ |
ふふん、何も言うまい、だからね（笑）。
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| ジョージ |
そしたらね、僕と一緒に行ってた
おじさんたちが、
そんなもん頼むからじゃないですか？
って。
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| つねさん |
え、言ったの！？
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| ノリスケ |
言っちゃったの！？
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| つねさん |
すげぇえ〜！
いけすかないおやじ！
あんたの周りそんなのばっか？
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| ジョージ |
僕は、言いませんでした！
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| つねさん |
なんか、いやぁ〜な
イジメっ子だよね（笑）。
自分では絶対言わないの。
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| ノリスケ |
そんな集団には会いたくないよね（笑）。
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| つねさん |
やだよね〜。
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| ノリスケ |
逆の立場だったら泣くよね（笑）。
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| ジョージ |
なぁ〜んでぇ〜？ なぁ〜んでぇ〜？
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| つねさん |
そう、ほんとに裏番だよ、裏番。
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| ジョージ |
そう。それがつい最近「やめた」話。
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| つねさん |
そうね、アドバイスをやめた話ね（笑）。
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| ジョージ |
そう（笑）。アドバイスをやめた話。
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| ノリスケ |
でもべつに、金輪際ぜんぶの
アドバイスをやめようとは思わないわけね？
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| ジョージ |
思わないよ。
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| つねさん |
基本的には、アドバイス好きだもんね。
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| ジョージ |
うん、好き。
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