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新宿二丁目のほがらかな人々。
おねぇ言葉や裏声とかで語る別角度批評。

それが青春、それが老後。その10
生きることを、粗末にしちゃダメよね。

ジョージ でね、その、まだその当時って、
電子レンジに何を入れちゃいけない、
っていうのがわかんなくって。
つねさん あれだ、アルミホイル入れちゃダメとか。
ジョージ お客さんが来たときに、
金蒔き蒔きのコーヒーカップとか、
あるじゃない?
つねさん キンマキマキ?
ノリスケ 金の蒔絵ね。
ダメダメ、レンジは‥‥。
つねさん やっちゃったのね。
ジョージ そう、あれを入れたの。
バリバリバリバリーッて音がして、
出したら、金蒔きのとこが真っ黒になって。
そうするとね、泣くのよ、
「奥さま! 奥さま、コーヒーカップが、
 こんなになってーっ!」
「あらあらあらあら」
みたいな。あと、卵1コ丸ごと入れて、
卵ってさ、入れて、フタを開けるまでは、
爆発しないんだよ。
ノリスケ そうなの?
つねさん そう。
ジョージ そう。んで、フタ開けたとたんに、
ボンッ! と爆発して、
髪の毛が、なんかミモザ状態?
「奥さま〜〜! 爆発しましたーっ!」
とかいって(笑)。
だから、ボケたら、
「奥さま!」だったんだと思うよ。
ノリスケ あははははははは!!
いやだわ、泣けるけど笑えるわ。
つねさん ああ、そっか。だから、
そのへんもたぶん思い出してたんだね(笑)。
幸せな時代だったんだね。
ノリスケ 楽しかったんだね。
ジョージ うん、楽しかった。昔はすんごい楽しかった。
つねさん なんか、ゴージャスなサザエさん
みたいな家族(笑)。
ジョージ なんかね。
ノリスケ はぁ〜、思いがけずしみじみしちゃいました。
つねさん ほんとだよね。
ノリスケ ふ〜ん、大事な人の思い出に
残るように生きていこう。
ジョージ うん、だから、
思い出は作んなきゃダメ。
つねさん そう。ね。ほんとだよ。
ジョージ 年を取ったら思い出にすがって
生きるしかないんだから(笑)。
つねさん でも、そのために
思い出いっぱい作っとかなきゃ。
ジョージ そう。やっぱりあれだよね、
5年も付き合ってると、
思い出とかって、
けっこういっぱいあるよね。
つねさん あるよね。
ノリスケ 長いと、できますよね。
ジョージ そうそうそうそう。
ノリスケ あそこに行ったね、とか、
あれ食べたね、とかって、
些細なことができるよね。
ジョージ そうそう。そうなのよ。
ノリスケ そっか。年取って、
つねさんが死んじゃった後に、
ジョージさんは丸いものを見るたびに、
つねさん、つねさんって言うのね、
じゃあ(笑)。
ジョージ そうかもね、デブ見ると、
「つねさん」とかっていう。
「もう、つねさん、ダメ!
 太って。飲み過ぎぃ!」
「声が大っきい!」
とかって言いそうになる感じがするよね。
つねさん ダイエットするから、いいもん。
ジョージ うん、毎日大切に付き合ってると、
思い出は自然とできるかな。
やっぱり、人付き合いは
丁寧にしなきゃいけないなと思うよね。
‥‥ふ〜。あ、ため息ついちゃった。
ノリスケ 遠くを見てため息ついてた。
なぜそこでため息を(笑)。
つねさん どないしはったの?
ジョージ なんかね、
幸せになろうと思う気持ちを
持たなかったり、
人間関係を粗末にしたりする人たちが
いっぱいいるのかな、とかって思ってね。
ノリスケ うーん、多いよね、そういう人たち。
そういうニュースも多いしね。
ジョージ そう。で、自分の人間関係、
考えちゃったわけなんですっ。
‥‥かと思うとね、この前、
とんでもない温泉旅館で
会合をやったの、ウチのお客さんの。
ノリスケ それはなぁに?
そのとんでもない温泉って、なんなの?
ジョージ ほんとにとんでもない!
ほんっとにとんでもなかったの!
ノリスケ それは、ひどいっていう意味なの?
ジョージ そう。
ノリスケ あらま。ジョージさんが選んだのに。
ジョージ 僕が選んだんじゃないよ!
ウチの会社で選んだやつだよ。
ノリスケ とんでもなかったんだ。
ジョージ 宴会やってね、料理ひどいから、
飲むしかないんだよ。
飲んでたら、奥さんが僕のファンっていう
お客さんがやってきて、
国際結婚してる人なの。
で、その奥さん、イギリス人なんだけど。
彼女曰く、日本の男は、
みんな子どもだと思ってたけど、
あなたは大人だ、っていうの。
ノリスケ あら、オカマなのに(笑)。
ジョージ そう、あなたは男だ、って言うのよ。
ノリスケ オカマなのに(笑)。
ジョージ オカマなのに。
んで、彼らには娘さんがいて、
この前、長女が成人式迎えて。
ノリスケ ふ〜ん、あ、じゃあ、けっこうお年なんだね。
ジョージ その、和服を着てね、
ハーフなんだけど、写真を撮ったと。
見てくれ! っていうのを、
自分の亭主に見せるより、
僕に最初に言ってくるんだよ。
ノリスケ ははははははは。
ジョージ どう思うか、っていうから、
うん、彼女は、彼女の中に彼女があるね、
って言ったら、
「そうでしょう?
 そういう言葉を聞きたいの私は!」
みたいなね。
ノリスケ ダンナに当てつけるかのような表現。
つねさん ははははは。
ジョージ その点アナタは解ってくれてる!
とかって褒めてくれるような。
で、ダンナのほうがやってきて、
ウチの女房は、あなたのファンだけど、
僕も、女房以上にあなたのファンだと。
で、今日はね、聞いて欲しい話があるんだと。
ノリスケ なぁに?
ジョージ なに? っていったら、
僕は、今でこそ幸せだけど、
ずっと離婚を考えてた、って。

泣き笑いー。つづきますー。
次回でこのテーマの最終回ですー。

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2004-04-12-MON
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