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新宿二丁目のほがらかな人々。
おねぇ言葉や裏声とかで語る別角度批評。

3泊5日ニューヨークの遊び方。その10
目的を失ったとたんに見たものは。

ジョージ でもね、そのときね、
やっぱり最近ちょっと旅行するのにね、
旅行準備、ラクし過ぎてたかな?
と思ったもん。
日本の旅行社っていうのは、
いろいろ、嫌なこととか、
損なこととかしてるんだろうなと思う。
でね、もっとね、もっとね、
一生懸命頑張って、
ニューヨークに住むの。
ニューヨークに住んでね、
秘書を置く、あそこにひとり。
そしたら、ぜったいこんな
間違い起さないから。
ノリスケ いいな、それ。
その仕事いいよね(笑)。
ジョージ うん、いいでしょ?
つねさん じゃ、代り番こに仕事しよっか(笑)。
ノリスケ でも、チケット取れなかったら、
ジョージさんに殺されちゃうよ(笑)。
つねさん 最初っから取れなかった、
って言えばいいんだよ。
ジョージ 失礼しちゃう!
つねさん (笑)
ジョージ ミュージカルのチケットを
取るとかっていうのは、
もう今は自分でもできちゃう時代に、
旅行代理店の業務って、
いちばん難しいのは、やっぱり‥‥。
つねさん ケア?
ジョージ うん、向こうに行ってからのケアで、
行くべきレストランの予約は
しっかり取れてるかとか、
劇場のチケットだって、
3ヶ月前に発売なわけだから、
3ヶ月前に買えば、
どこのシートを幾らで
買えるっていうのは、
すぐわかるんだよね。
定価でも買えるわけじゃない?
で、そういうことをしてあげる
サービスとか会社とかを作れば‥‥。
ノリスケ それこそお金持ち向けのそういう人、
いるみたいだけどね。
ジョージ うん、いるみたいなんだけど。
ノリスケ でも、すっごい高いらしいわよ。
契約金が1千万で、とかね。
ジョージ そう。
つねさん そうなんだ。
ノリスケ うん、あるんだよ。
つねさん へぇ。
ジョージ あのね、予約が取れないっていう
レストランも、
絶対予約を取ってあげる、
っていうのがあるんだよ。
ノリスケ ただし、入会条件みたいなのが
あって、芸能人だったり‥‥
ジョージ いわゆる、あの、
ほんとの意味でのセレブリティ向け。
ノリスケ は、あるんだよ。
ジョージ でね、だけどそういう
お金持ちの人たちっていうのは、
自分たちでどうでもできると思うんだよね。
でも、ふつうの人たちに
そういうサービスができるんだったら、
僕ボランティアでもいいと思うもん。
つねさん でも、ちゃんとしたら
ビジネスチャンスだよね。
ノリスケ でも、売ったぶんしか
儲からないよ。割が悪いよ。
つねさん それはそうだ。
ジョージ うん、儲けようと思ったら
誰もしないんだと思う。
だから、旅行代理店はそこまで
一生懸命しようとしないんだと思う。
でもそれこそ、一生の思い出‥‥
ニューヨークに行きたいな、って思う、
ふつうの人たちのために、
一生の思い出になるっていうことは
そういうことのはずだから。
それこそ、べつにね、
何百ドルも払って、
オペラを観ましょうっていうのが
一生の思い出じゃなくって、
たった、たった18ドルの
エントランスフィーを払って、
プラネタリウムに行くことのほうが、
一生の思い出だったりするわけでしょう?
ノリスケ そうよねえ。
ところで、その日はどうしたわけ?
その後。
ジョージ 劇場追い出されて、
どうしようかなぁ、と思って。
ちょうどその日が金曜日。
つねさん レイバーズディの
映画の初日だったの。
『キャット・イン・ザ・ハット』。
ノリスケ 『キャット・イン・ザ・ハット』?
知らないー。
ジョージ コメディ。
つねさん 邦題が『ハッとしてキャット』。
マイク・マイヤーズっていう、
『オースティン・パワーズ』の
主演の子が、猫の格好して。
ジョージ 出てて。で、例のあの、
『アイ・アム・サム』の女の子の
ダコタちゃんが出てるという。
なかなかに面白そうな。
つねさん 『グリンチ』の監督で。
ジョージ それでも観ようか、っていうんで、
昼間行った劇場に戻ったら、
ものすごい行列ができてたの。
ノリスケ あらま。
ジョージ あ、これも観れないや、と思って、
タイムズ・スクエアのあたりを
フラフラしてね。で、ほら、
ウチのお母様が最近タンゴを
おやりになってらっしゃるんで、
タンゴのCDでも買いましょうか、
っていうんで、
あのあたりをブラブラしてたの。
つねさん それで、ちょうど、前日行った
『タブー』のCD欲しいなと思って、
どうやらインポートであるらしいって。
ところが、
ヴァージンメガストア行ってもなくって。
ジョージ あのね、その時間帯をね、
何の目的もなくブラブラ歩いてるとね、
日本人の観光客にいっぱい会うの。
つねさん そうね。
ジョージ でね、そんときもうひとつ思ったのね。
目的を持って歩いてるときには
日本人に会わないのに、
目的をなくしたとたんに
日本人にいっぱい会うの。
ノリスケ はははは。
ジョージ だから、どれほど多くの日本人が、
海外にわざわざ行ったのに、
目的もなく街を
さまよってるんだろう、って。
ノリスケ お互いに「日本人だ」
って思いながら(笑)。
ジョージ 目的をなくして
さまようときの人間って、
誘蛾灯に群がる蛾のように
明るいところに集まってくるのよ。
ノリスケ だからタイムズ・スクエアに(笑)。
ジョージ 晩ご飯どこで食べようか?
とか言いながら歩いてるの。
おじさんと、若い女の子3人の
日本人のグループがいたのね。
んで、上司風の男の人が、
何食べたいんだ? とかっていうと、
んー、そろそろなんか
スパゲティでも食べたいです、って。
お、あそこにイタリア料理屋があるぞ、
って指さしたのが、
オリーブ・ガーデンっていうね、
んー、日本でいうと、ファミレス?
ま、ファミレスの料理が、
けして悪いとは言わないんですけど、
ここは、まずいです!
フォークでグルグル巻き付けようとすると、
巻き付けてるはなから、
みんなマカロニに
なっちゃうっていうような、
スパゲティのお店です。ね。
ノリスケ あ〜。もそもその茹でおきの。
ジョージ そこを指さして向って行くの。
もうこれはね、まるでね、
八甲田山死の彷徨のような景色ですっ。
つねさん あはははははは!!
ジョージ いけない、そっちに行っては
いけないんだぁーー!!
って思うんだけど、
ま、言う立場に、
私はあるわけではないので。
ノリスケ そんなふうにうろうろしてたのね?
ジョージ そしたらね、すっごい
へんてこりんなCD屋さんが
あったんだよ。
ノリスケ へぇー。
つねさん 僕が入るって言ったの。
ジョージ で、僕ね、なんかね、
嫌だなーって思って。
ノリスケ なんか変な雰囲気だったの?
ジョージ そう。なんか、オタクな感じ?
あの、秋葉原か‥‥
中野のブロードウェーみたいな感じ。
ノリスケ 「タコシェ」みたいの?
つねさん もっとデカいんだよね、ちゃんと。
ジョージ なんか、ホコリっぽーいんだよ、雰囲気が。
ノリスケ ふーん。
ジョージ で、バーン! とドア開けたら、
ほんっとにホコリっぽいんだよ。
なのにこの人、ズンズンズンズン
奥に入っていくの。
で、僕ね、第一声がね、
「お父さん、ダメ、これ。
 ダメかもしれない」って(笑)。
ノリスケ この人は、オタクの血が騒いで、
何か見つけられるかもしれないって
思ったんだよ、勇敢にも。
探してたCDはあったの?
つねさん なかったんだよね。
ジョージ なかったんだよ。
『タブー』のCDはなかったの。
つねさん インポート入ってないってことで。
ところが‥‥。
ジョージ で、なんか奥の方へ入っていったら、
楽譜がいっぱいあるんだよ。
ノリスケ へぇー。
ジョージ で、しかも、見てると、
ラテンっていうコーナーがあったんだよ。
あら! これじゃないの、と思って。
んで、見てたら、なんか、
タンゴのね、楽譜がいっぱいあんの。
ノリスケ へぇー。
ジョージ うちのお母様から、
日本では、あんた、
タンゴの楽譜って、
絶対手に入んないのよ、って。
ノリスケ 聞いてたから。
ジョージ 先輩に楽譜をコピーさせてもらうのに、
お金を払わなきゃいけないぐらいなの、
って聞いてたから、
これよ、これ、と思って
ダッダッダッダッて買って。
つねさん 何冊か買って。
ジョージ で、買いました。
ノリスケ どうだった?
ジョージ お褒めの言葉を頂戴しました!
ここ数年、稀に見るほど、
お褒めの言葉を頂戴しました。
ノリスケ おぉ〜!(笑)
ジョージ 誰にも貸してやるもんか、
こんなすごい楽譜!
とかっていうぐらいに、
お気に召していただいたんですね。
ノリスケ はぁー。
ジョージ だから、目的のある旅も
素敵だけども、
たまに寄り道する旅も素敵かな?
ノリスケ それ、ご褒美だね。
ちょっと嫌なことが続いたからね。
ジョージ そうそうそう。
だから、あれはほんとに、
完璧じゃなかったから、
やってきた幸福だよ。
ノリスケ 神様が、かわいそうに、
チュチュチュチュ〜ンって
つねさんをおびき寄せて、
ホコリっぽい方に(笑)。
つねさん そうそうそうそう(笑)。
なのに、僕の御褒美はなくって、
こっちにあったという。

さあ次回でこのテーマ最終回。
なぜかパリの話題に!

新宿二丁目の方々への激励や感想などは、
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2004-01-14-WED
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