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新宿二丁目のほがらかな人々。
おねぇ言葉や裏声とかで語る別角度批評。

愛着と執着 その5
モノに関しては、
ちょっと反省。


ノリスケ こないだ、あの、
僕の前の席に座ってる
女性が、あの、ま、恋人と
ふたりで住んでるんだけど、
そろそろお客さまにね、
出せるような食器が
欲しくなってきたね、
って話になって。
食器はちょっとわかるけど、
カトラリーがわからない。
で、僕もわからない。
じゃあ、これはジョージさんに訊くべし
と思って、ジョージさんも含めて、
詳しそうな友だち三人にね、
メール書いたら、
ま、みんなゲイなんだけど、
まぁ、驚いたね!
メール出したのは夜なんですよ。
で、次の日の朝までにね、
全員返事が返ってきたの。

つねさん あはは。
ノリスケ で、全員ね、たっぷり200行ぐらい
あるんですよ。
つねさん そう(笑)。
ノリスケ 全員ね、観点ぜんぜん違うのね。
それぞれの暮らしぶりが違うし、
収入も違うし、職業も違うし、
好みが違うから、
答えがばらばらなんだけど、
みごとにばらばらだったんだけど、
ぜんっぶ素敵だった。
あまりに面白かったのでもったいなくて、
糸井さんにまで送っちゃったわ。
糸井さんからは
「きみらの、この、暮らしに
 愛情を注ぐ加減、すごい!」って。
たかがカトラリーで‥‥。
ジョージ これだけ盛り上がってる(笑)。
つねさん すごいよね。
ジョージ べつに勉強したくて
したわけじゃないから。
ノリスケ 楽しいからやってるよねぇ。
ジョージ でも昔ね、ほら、ウチ、
靴が、すごいじゃない?
ノリスケ すごいです。ジョージさんちに、
靴部屋っていうのがあってですね、
男イメルダですね。
つねさん シュークローゼットと呼んで。
ノリスケ 玄関脇に小っちゃい扉があって、
こんだけの扉の幅にクツが入ってるの?
と思ったら、そんなことはない、
部屋のドアでした。
中に姿見まであって。
クツが‥‥百はない?
つねさん 百越えてるよ。
ジョージ 百ぐらい。
ノリスケ ムカデじゃあるまいし。
ジョージ ひゃ〜。
あのね、べつに靴が
好きなわけじゃなかったんだけど、
やっぱり、足にぴったり合う靴って、
なかなかないじゃない?
ノリスケ シンデレラの例もあるように(笑)。
ジョージ そう。それでね、十何足目かに、
ものすごくぴったり合うクツがあったんだよ。
つねさん へぇ〜。
ジョージ そしてね、もしこのクツがなくなったら
困るって思うの。
ノリスケ あー、思いますね。
ジョージ そうするとね、買いだめちゃうんだよ。
おんなじサイズで違うデザインとか、
いっぱい買っちゃって。
それで、しかも、それを順ぐりに
履いていけばいいんだけど、
ぜんぶ履いちゃうと、
一斉になくなるでしょ?
そのとき履けるものがないと困る、
って思うから、
履かないクツが出始めるんだよ。
それこそ備蓄なんだよね。
それは、コレクションじゃなくって、
備蓄になっちゃう。
ノリスケ そうですね、食料庫
みたいなもんですね。
ジョージ それでね、すんごい反省したの。
おんなじようなことを、僕は、
下着でもやったし、靴下でもやったんだよね。
で、いちばん悲しかったのが靴下でね、
一時期イッセイミヤケが
ビジネスソックスを出してたときに、
ものすごく良かったの。
つねさん へぇ。
ノリスケ アイムプロダクツ。
ジョージ そう。それでね、これも、
なくなると困ると思って、
大量に備蓄したのね。
だけど、あの、
靴下の上のゴムって‥‥。
ノリスケ 劣化してくんだ!
つねさん 切れるんだ。
ジョージ そう!
それで、しばらくして、
おんなじやつばっかり履いてるわけよね、
備蓄分はなくさないように。
んで、ここぞという日ですよ、
それこそ大きいコンベンションがあって、
どっかステージの上に
立たなきゃいけないときに‥‥。
ノリスケ よし、おニューの靴下をおろそうと。
ジョージ そう、今日はもう決めソックス履いて
行こー! って。んで、履いて、
上にバッて上げた瞬間に、
プチブチーッて。
ゴムがぜんぶ切れてスコーン!
つねさん あの、ルーズソックスに
なっちゃったのね(笑)。
ジョージ そう、ルーズソックスになっちゃったの。
ノリスケ 女子高生になっちゃったのね(笑)。
つねさん ほんとに(笑)。
ジョージ えーっ!? と思って。
じゃ、次はどうだ? 次はどうだ?
っていったら、もうね、30足ぐらい、
みんなブチブチ。
ノリスケ 悲しい(笑)。
ジョージ あ、これはね、なんて
バカなことをしたんだろうと、
思いました。
ノリスケ 劣化するものはね‥‥。
つねさん あぁ、そうだねぇ。
ノリスケ 僕もその気配があって、
気に入ったシャツは2枚買っちゃう。
つねさん あぁ‥‥。
ジョージ そう、2枚買って、
2枚を交代交代で着ればいいんだけど、
1枚新品にしとくのよ。
つねさん あー。あ、それはわかる。うん。
ジョージ これを先見の明のある行為というのか、
それとも執着に等しい行為というのかね。
これは難しいところではあるんですけどね。
ノリスケ 執着がちょっとあるかもね。
ジョージ あると思う。あると思う。
ノリスケ あの、クローゼットに‥‥。
ジョージ うん、あの糸のついたまんまの
スーツがいっぱいとか、あれこそね、
あれこそ執着の絵柄よ?
つねさん そうね、着もしないのに。
ノリスケ それ、スーツじゃありませんけど、
シャツが何着か。
つねさん あ、俺、もうないや。
ノリスケ うちのにね、そんな買い放題、
好き放題買ってるのをとがめられるの
嫌なもんだから、こっそり買ってきて
こっそりしまったりしてるもんだから、
それが、リスが頬袋にためるようにね、
詰ってきちゃってねぇ(笑)。
つねさん あはは。バレちゃった?
ノリスケ いや、もうわかってると思うんだ、
共有だから、クローゼットは。
つねさん そうだね。
ノリスケ わかってると思うんだけど、
言わないだけでね。
ジョージ 僕の場合は、犬っころがいろいろ
骨とかオモチャとかを‥‥。
つねさん あー、いろんなところで(笑)。
ジョージ 埋めるでしょう?
つねさん 忘れて‥‥。
ジョージ 埋めたのを忘れて、
また同じようなものを取ってきて
近所に埋めるみたいな状態。
でも、まあ、そういう執着した部分を
自分で見て、うん、かわいいぞ、
っていう楽しみも、
まあ、たまにはいいかな?
と。物に関してはね。
ノリスケ かわいい範囲ならね。


そこらへんはいいわけね。
つづきまっす。

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2003-10-27-MON
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