APPLE
新宿二丁目のほがらかな人々。
おねぇ言葉や裏声とかで語る別角度批評。

愛着と執着 その4
いつかは別れてしまうかも
しれないと思いながら。


ジョージ あとは、恋人。
愛着を持つべきなのは、恋人。
ノリスケ 恋人には、愛着を持つべきよ(笑)。
ジョージ 愛着をもって人に接しているのか、
それともその人に執着しているのか?
ノリスケ あ〜。
つねさん あの、たまにいるよね、
外に出したがらないとか、
人に会わせたがらないとか。
ノリスケ その、こだわる、
まさしく拘束。
つねさん あれは、やっぱりおかしいよね。
ジョージ だって、だってー、
僕らみたいな関係なんていうのは、
婚姻契約を結んでいるわけでもなく
いつかはいなくなるかもしれないし。
つねさん ま、いるかもしれない、うん。
ジョージ 一生いっしょにいたいねっていってても、
なんらかの問題で、
たとえば僕が死んじゃったりとかすると、
それはもう、否応なしに
別れることになるでしょ?
だから、人同士のつきあいなんていうのは、
恋人であれ夫婦であれ、
いつかは別れてしまうかもしれないと
思いながら、それでも注ぐのが愛着であり
愛情じゃない?
つねさん 愛情だよね。
ノリスケ フランスで法律ができたのよね。
パートナーシップも法律で保障する。
それは兄弟でもいいし、
友だち同士でもいいし、
同性の恋人同士でもいい、
未婚の男女でもいい。
あの、つまり、片方が亡くなったときに、
10年一緒に住んできたパートナーが
悲しみ嘆いているのに、
ほとんど会わなかった家族がやってきて
家財道具全部とっていっちゃう、
あるいは、追い出される。
何も残らないっていう状況はおかしい、
っていうふうに思った
フランス人の偉い人が、
その法律を作ったんだよね。
ジョージ そうね。でね、執着してしまうと、
逃がさないように逃がさないように
するんだよね。そうすると、
その人の携帯メールをチェックしたり、
つねさん メールをチェックしたり、郵便物を‥‥。
ジョージ ストーカー行為っていうのは
執着だものね。
ノリスケ そうね。
ジョージ で、世の中には愛情という名前の
ストーカー行為がいっぱいあって、
それは執着だよね。
ノリスケ 愛してるからよ!
っていうんだよね(笑)。
ジョージ で、昔からおとなの愛っていうのは、
自分ひとりで独占できない、
あるひとりの魅力的な人間がいてこその
ものなわけでしょう。
だって、誰からも羨まれる、
素晴しい人間だったらば、
僕ひとりにはもったいないわけであって。
で、その人を拘束しようとするから
不幸が始まるんだよね。
で、そこを乗り越えて、
どこへ行ってしまうかもわからない、
でも、あなたが好きですよ、
っていうのがおとなの恋だと思うな。
ウチのね、例のあのおちゃめな
母と父がね‥‥。
ノリスケ はい、必ずサンプルに出てくるね(笑)。
つねさん ははは。
ジョージ 今、まさにね‥‥。
ノリスケ なに? なにやらかしてるの?(笑)
ジョージ いやー、これね、すっごい、もうね‥‥。
あー、この人たちは、
もう、んーとね、自分たちの関係の
終わりに向かって、
手に手を携えて歩き始めたの。
ノリスケ あの、聞くたびに仲良くなってるよね。
ジョージ なってるー。
つねさん そう、僕もね、びっくりするんだけど。
ジョージ うん、それで、それがね、
障害を乗り越えた仲良さじゃないんだよ。
なんか、新しいものを見いだした仲良さでね。
ノリスケ はぁー‥‥。
ジョージ で、あの、金星が大接近したじゃない?
ノリスケ それは火星。
ジョージ あ、火星だ、大接近してるでしょう?
ノリスケ 6万年に1度。
ジョージ でね、あの、火星がいちばん近づいたときに、
たまたま、うちのおやじとおふくろが
家にいたの。たまたま一緒にいたっていうの、
めずらしいんだけどね(笑)。
ノリスケ それぞれ別宅があるのに(笑)。
ジョージ で、ニュースで、
今日が火星がいちばん接近してる日ですって。
あなた、それじゃあ、見に行きましょう、
っていって、うちの近所でいちばん
小高い丘のとこまで歩いていって、
そこでふたりで火星を見たと。
「手を繋いで私たちは見たのよ」。
ノリスケ それ、息子に言うの?(笑)
ジョージ そう。そしたら、
「なんでまた?」って訊くでしょう?
ノリスケ 訊くよね。
ジョージ そしたらね、
「私たちはいつ別れてもおかしくない
 夫婦なのよ。よくもまあ、
 ここまで続いてこれたわよね、
 って、思うのよね」
って。で、
「ほんっとに明日別れてしまうかも
 しれないけれど、たとえば別れて
 輪廻転生して
 もうふたたび人間になって、
 なんかの巡り合わせでもう1度
 ふたりが結婚したとしても、
 この大きさで火星を見ることは
 2度とできないと思ったら、
 今見とかないと安心して別れることが
 できないと思ったからふたりで見てるの。
 ねぇ、おとうさん」
って言ったら、もうウチのおやじが
ニコニコニコニコしながら、
「うん、そうだ」
って言うのよ?
ノリスケ はははははは。どういうことだ。
つねさん わっかんないけど、すごい(笑)。
ジョージ ねぇ。それからね、もう、毎晩毎晩。
あそこに行き「火星があるね」、
こっちに行き
「火星があるね。今日はあそこだね」
「大きさが昨日より小っちゃいね」とかね。
つねさん へぇー。
ジョージ んで、おやじが出張に出てるときは
携帯電話で、
「あなた、今日の火星は
 どこの位置にある?」って。
つねさん あ、そこまでやってるんだ。
ジョージ そう。で、
「お月さまの斜め、下のこのくらいの
 位置だよ」っていうと、
「私もおんなじ火星が見える、
 明日もがんばってね」
っていうふうに言ってるの!
つねさん へぇー。なんかラブラブじゃん。
ジョージ ラブラブ。ラブラブなんだけど、
やっぱりね、おとなのラブっていうのは
ここまで真剣になって、
どっかで共通の盛り上がるものを
作り上げないと、なくなるぐらい
デリケートなものなんだね。
ノリスケ 確かにそうですね。
つねさん はぁ〜‥‥。
ジョージ んで、そのくらいしか
共通の話題がなくなってたんだよ。
つねさん あぁ、そっかそっか。
ジョージ でもふたりはね、
今それで、すごいラブラブなの。
ノリスケ 燃えてるの?
ジョージ 燃えてる。ほんで、
ほんっとにふたりの中には、
この人は、私とは一緒に
一生は、いないかもしれない、
というのが前提。で、おやじの中には、
俺はいつかはこいつに捨てられるだろうな、
というのが前提。
ノリスケ あぁ‥‥ま、行いを
改めないにしてもね(笑)。
ジョージ うん、改めないよ、ふたりともね。
でも、そういう、そういう前提で、
それでもあえて一生懸命ふたりでいようって、
思うことって大切よね。
つねさん うん、そうだよね。
ジョージ と思う。その部分がないと、
たとえば男的に
ウチの女房は生活力がないから、
どうせ俺と一生一緒なんだろう、とか、
あるいは奥さんとしてみれば、
ウチの亭主なんて、あんな禿げちゃって
中年太りで腹が出て
私がいなかったらなんにもできないんだから、
少々私が変なことをしたって、
家事の手を抜いたって、
絶対あの人は一生私といるんだ、って、
思ってることが、
いろーんな今の不幸を生むじゃない?
これは執着以前の問題であってね。
人間関係が当然と思うと、
ろくなことはないなと思う。
それは物もそうでしょ?
いつかは壊れてなくなってしまうと
思うものに対して‥‥。
つねさん 愛情を注ぐ。
ノリスケ それが「愛着」。


ん。つづきます。

新宿二丁目の方々への激励や感想などは、
メールの表題に「二丁目の方々へ」と書いて、
postman@1101.comに送ってください。

2003-10-24-FRI
BACK
戻る