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新宿二丁目のほがらかな人々。
おねぇ言葉や裏声とかで語る別角度批評。

夏休みの東京デート その3
肉と心のあいだにあるもの。
ノリスケ 映画も映画館も好きなんだけど、
困ったちゃんのお客さんもいるわよね。
ジョージ どんなとこにでも変なのはいるのよ。
どこで仕入れて来たのか分からないけど、
これから見ようとする映画の・・・
つねさん 筋を、蘊蓄を。
ジョージ ベラベラベラベラしゃべるのが困るわー。
ノリスケ やあねえ。
ジョージ で、ベラベラベラベラしゃべるのは
たいてい男の方なんだよ。
つねさん あ、そうそう!
ジョージ 男的には、今日映画を見るということで
かなり張り切って来てると思うんだよ。
デートというものは
いつも女に主導権を握られているわけ。
でも、今日は主導権を握ってやろう、
みたいな感じで、情報仕入れてくるのね。
ところがてんで女の方は
聞く気になってないわけ。
だって粗筋知ってるんだったら
わざわざ見にくる必要ないじゃない、
みたいな受け答えなのに、
気が付かないでベラベラベラベラ
しゃべってんの。男が。
つねさん 僕、昔、すごーいそれで
腹立ったことがある。
「グラン・ブルー」の完全版で。
「あ、この次のシーンとかさあ、
 すっげえいいんだよ」とかさあ。
ジョージ そういうのって、自分の目で見たりとか
自分で経験したことを
言ってるわけじゃないでしょ?
つねさん うん。受け売り。
ジョージ 受け売りでしょ? だから、
何にもない、できればさらの方がいいよね。
ノリスケ うん。
ジョージ まあせいぜい、恋愛ものかホラーか、
くらいの知識はほしいけどね。
今日はロマンティックに決めましょうって
行ったら血のりがいっぱい付いて来た、
っていうのはまずいから、
最小限の情報は入れる必要はあるけど。
だけど知識は絶対入れちゃいけないと思う。
ノリスケ 知識は入れても、人に言っちゃダメね。
つねさん うん。だから一緒に見る時の
ぼくたちの暗黙の了解があるの。
雑誌の映画批評、あるじゃん。
「文春映画館」とか。
ああいうのってちょっと
ネタばれみたいなことが
あったりとかするのね。
そういうのもし読んでも、
言わないようにしてる。
ノリスケ 文春なんか参考にしてもねえ。
中野翠とおすぎが
全然違うこと言ってるんだから。
ジョージ この前すごかったよね。
「T3」。まるきし正反対。
あれは中野翠に軍配上がったよね。
すんごいつまんなかったんだもん。
ノリスケ あ、そう(笑)。
ジョージ ま、ともかくね、
お付き合いしてて、
肉同士のお付き合いだけ、
っていうのは嫌なわけよね。

だけど、肉同士だけじゃ嫌っていうと、
いきなり心同士になっちゃおうと
するんだけど、
心同士っていうのは
永遠に来ないかもしれないし、
来ると一瞬にしてやって来ると
思うんだけどさ。
肉と心の中間があるはずなんだよね。
つねさん ああ、ほんとは。
ノリスケ 地続きだからね。
ジョージ そう。それがね、
たぶん趣味だとか好奇心だとか、
今までの興味だとかね、
自分が生きてきた人生だとかね、
してきた経験だとか、
感じたこととか表現とか
そういう事柄であって。
で、ものすごく日常的に、
僕達の日常生活の横に
非日常としてぽつんと現れてくるのが
映画みたいなものだから。
ノリスケ そうね。
ジョージ だって映画っていうのは
見る人を一応感動させるというか、
見る人に非日常的なものを
与えることによって、
その人の日常をもう1回見直して、
日常を楽しく変えてあげようと
することが映画なわけでしょ? 
そうするとそういうところに
2人で行って、
お互いが感じたことを言い合ったり、
感じ合ったりするのは
大事なことなのよ。
例えば自分の彼氏が
連れて行きたがる映画って
こういうもんだって
分かっただけでも楽しいことで、
その世界が本当に嫌いだったら
付き合えない話な訳よ。
つねさん うん。
ジョージ 本当に好きなわけではないんだけど、
行くとけっこうそれも楽しくって、
っていうのは、
その人のことを100%
愛せるかどうかは自信がないけれど、
でもこの人と一緒にいると
何となく気持ちがいいし、
じゃあもうしばらく
付き合ってみましょうか、
っていうのと同じことの感じがするからね。
つねさん あと、例えば自分の興味があるからって
すべてを相手に押し付けない。
ジョージ 本当に好きな映画で僕が嫌いな映画は、
勝手に見てちょうだいって。
つねさん そうそうそう。
いっぱいあるんで、違うところが。
ノリスケ うちはそれ多いよ。
ジョージ はははは。
つねさん そういうのって、でも必要だよね。
ノリスケ そうそうそう。
つねさん 無理矢理自分の趣味全部押し付けたら、
人って嫌がるもんね。
ノリスケ うちはわざわざ辛い気持ちになる
映画は見たくないって言う。
ジョージ あ、僕も嫌い。
あのね、人間が悲しくて
仕方がないっていう
絶望的な状況で
涙をさせようとする映画は。
ノリスケ そうそう。それはね、ダメなの。
ジョージ もう止めてちょうだいって思うんだよね。
つねさん うん。
ジョージ 人間が悲惨で絶望的な状態で
笑わせようとする映画は
ものすごく幸せになれるんだけど。
ノリスケ そうね。
つねさん そういうものは落とし込むみたいな。
ジョージ そう。で、僕は涙は他人の幸せで
泣くもんだと思ってるからね。
幸せ系ね。いい映画あったね、この前ね。
ノリスケ 何見たの?
ジョージ マイ・ビッグ・ファット・ウェディング!
あれはね・・・
(と、映画解説約10分)
・・・というわけなの。
ノリスケ 見る前に知識入れちゃったじゃないの!
ジョージ その中でものすごくいい言葉があって
これかなりほがらか的にいい言葉なわけよ。
つねさん そうなの。
ノリスケ 何?
ジョージ あのね、ギリシャ人のお父さんが、
「わしはこの家の頭(あたま)だから、
 男は頭だ。頭のいうことはみんな聞け」
って言ったら、お母さんが
「確かに男は頭だけど、女は首なの。
 頭は首が向く方にしか向けないのよ」。
ノリスケ あらま。
ジョージ 頭は頭で一番上でえらそうに
させてあげればいいの、
っていうふうに娘に言うの。
・・・いいでしょう?
聞いててね、ああ、ほんとだ、
とかって思っちゃった。
すごいおもしろい映画。
じつは「どうかなあ」と思って
行ったんだけど、
やっぱり好き嫌い言わずに
たまにへんてこりんな映画を
見るのも悪くないよね。
ノリスケ 映画、毎週見てるの?
ジョージ 大抵毎週見ようとは思ってるよ。
つねさん 見れる時はほとんど毎週見てるよね。
ジョージ 1日で2本続けざまに
見たりとかもするし。
ノリスケ うん。2本は平気だね。
毎週ってすごいですね。つづきます!

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2003-08-15-FRI

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