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新宿二丁目のほがらかな人々。
おねぇ言葉や裏声とかで語る別角度批評。

三人、英雄を語る。その11
由紀夫さんと康成さん。

ジョージ 三島由紀夫って、
最後はどこにも行く場所がなくなって。
で、自己完結しないとけいないと
思ったから自分でお腹を
切っちゃったんだろうなって
思うんだよね。盾の会って行ったことある?
ノリスケ えっ!? ないですよぉ!
ジョージ ぼくね、大学に入って、
いちばん最初に友だちになった子がいて。
彼はね、ものすごい
ゲイ・テイストがあった。
でも、ゲイではなかった。
僕は彼に対して、
僕はゲイだよとは言わなかったけど、
彼は僕のことは多分ゲイだって
いうのがわかっていて。
一緒に酒を飲みに行って、
二言目には俺はお前のことが羨ましいよ、
って言っていた。
僕がゲイだっていうことが
羨ましかったんだと思うのね。
で、その子が、
大学入って2ヶ月目ぐらいに、
お前って三島由紀夫好きだろう?
って言うんだよね。
うん、僕好きだよ、ほとんど全部読んでる、
って言ったら、
僕はね、作品としての
三島由紀夫は嫌いなんだけど、
三島由紀夫の生き方そのものは、
なんか共感持てるんだよね、って。
んで、三島由紀夫の命日に法要があって、
しかもそこで講演会があるんだよ。
それに行かないか? って、
行ったことあるんだよ。
そのときに思ったんだ、
ゲイが感じる三島由紀夫と、
そうじゃない人が感じる
三島由紀夫がこれほど違うのかって。
僕らの中にある三島由紀夫は、
自分が信じるものに素直に生きていく、
ものすごくわがままな人間の
頂点にいるわけよね。
ノリスケ 僕ね、その「ちがい」を目に見えるように
答えを出した人がね、
篠山紀信だと思うの。
つまり、三島由紀夫が死んで
しばらくしてから、
三島由紀夫の家を
篠山紀信が撮って本にしたんだよね。
あれは、今のジョージさんの気持ちを、
言いたかったんだと思う。
三島由紀夫はこうだ!
俺はわかる! って。
ジョージ 僕は思ったの、彼は、
日本というこの国に生まれた日本人として、
このまんま行くと恥ずかしくて
仕方がなくって、
自分の美学が許さないって
いうような日本になっちゃう。
それが嫌だから、
日本を変えたいと思って
死んだのかなって。
ノリスケ そうでしょうね。
肉体だって衰えるし。
つねさん

うん、それはそうだろうね。

ノリスケ 彼としては、もうどうしようも
なかったのかな‥‥。
ジョージ そう、それをね、ものすごく
狡猾にやっているのが、
今日本で最も人口を抱えているところの
行政府の長がやっていることなわけよ。
つねさん

そうね。

ジョージ んで、彼も、ほら、同じように
芸術の世界からスタートして。
で、同じ物書きとしてスタートして、
同じアイデンティティを持っていて、
片方は純粋に自分の生き様を突き詰めていくと、
政治家ではなくて軍人になっていって、
もう片方は狡猾に周りを巻き込みながら
自分のわがままを通そうとしながら
政治家になっていった。
でもね、でももし三島由紀夫が
もっと狡猾に政治家になっていたら、
日本は変わったかもしんない。
つねさん

そうね。

ノリスケ どういう方向に変わったんだろ(笑)。
つねさん

だって、似てるよね、
そういう意味でいったら。

ジョージ あの人ね、ものすごい
ノーベル賞が取りたかったんだと思うんだよ。
康成さんもそうだからね。
つねさん

そうなの?

ノリスケ 知らなかった!
つねさん

そうなんだ。

ノリスケ 膝7回たたきました。
ジョージ 康成さんが男の子を口説くときの文句が‥‥。
つねさん

なんで知ってんの?
お前、歳ごまかしてないか?

ジョージ 自分の手をこうやって見ながら、
あー、老人斑がまた増えた、
って言うんだよ。
で、こうやってね、男の子に見せながら、
パッと手つかんで、
ああ、命を感じる、って言うと、
フケ専の男の子は‥‥。
ノリスケ も、文学だからさぁ。
その行為自体がさぁ。
もう、なんでもOKだよ、それ。
それは、かなわん。
つねさん

そうだね。

ジョージ 康成さんは、舞子さんも
大好きだったの。
ノリスケ なんか、ドラァグ・クイーン
みたいなもんじゃない、
なんかそのへんって(笑)。
ジョージ そうそう、そうだよ。
吉永小百合が、
伊豆の踊子やったでしょ?
吉永小百合が今まで会った
男の人の中で、
最もエレガントな人をひとり選ぶとしたら、
康成さんだったんだって。
ノリスケ まぁ、いいことおっしゃるわ。
ジョージ んでね、どうエレガント
だったかっていうと、
川端康成さんが、吉永小百合を、
ジーッと見て、言ったんだって。
「あなたは、裸になっちゃいけない。
 僕の中で、あなたは今が
 いちばん美しいから、
 今のあなたのままで
 踊り子をやって下さい」
で、彼は、舞子さんとか、
芸者さんとかをはべらして
飲むのが大好きだった。
一緒に寝るのが好きだった。けど、
舞子さんたちに対して、
「君たちはね、お化粧をして、
 着物を着ているからきれいなんだよ」
って。僕の前ではきれいなまんまでいて、
っていうふうに言ったから、
も、先斗町の舞子さんや芸者さんは
みーんな康成さんが大好きだった。
つねさん

へぇー、すごいね。

ジョージ でも、これってさ、
女の子が嫌いだったから言えたんだよ。
つねさん

そっかー。けど、そういう
きらびやかなものは好きだったと。

ジョージ で、同じようなことを、
三島由紀夫さんは銀座でやったの。
ホステスにね。
だって、三島由紀夫っていうのは、
男の価値はどこにあるんだ、
頭にあるのか、心にあるのか、
体にあるのか。
頭にあるべきは、宇宙の真理だ。
男の持ち物ではない。
心にあるのは、人間の持ち物であって
男の持ち物ではない。
男の価値は体にある、っていうんで
ボディビルに走ったんだよ。
つねさん

そっか‥‥。

ジョージ んで、これって、
ローマ哲学にも通じるし、
日本の葉隠れにも通じるんだよというのが、
彼の中にあって、
だから自分は日本人として、
ローマ人になれるのか、っていうと
日本人にしかなれることができなくって、
そしたら、武士道だろう、という。
ノリスケ 軍人かあ‥‥
ジョージ だから、このあたりはね、
僕らには理解できないレベルかもしれない。
女の子が、よく、わたしの中を見て、
とか言うでしょ?
違うんだよ。
んで、たとえば知恵とかを
売り物にする女がいるけど、
知恵を売り物にする男、嫌いでしょ?
ノリスケ うん。男は強くなきゃ意味ないからね。
ジョージ でしょ?
そしたらさ、
知恵を売り物にする男が嫌いな男は、
知恵を売り物にする女が、
知恵を売り物にする男よりも嫌いなんだよ。
で、知恵というのは、
自分に所属しているんじゃなくて、
世界に所属していて。
んで、じゃ、わたしは知恵じゃないのよって、
わたしの心を見て、って言われたって、
心見てもね、わたしはあんたの心よりも、
同性だけど、男の同僚の心のほうが好きだわ、
って言われたら、それでもう
終わりなわけじゃん。
男は男で自分の体に
自信を持たないといけないし、
女は女で自分の体に
自信を持たなきゃいけなくってね。
で、体というのも、
体の状態があるわけでしょ?
体形なわけじゃない?
だけど、体が起す行為はあるんだよね。
これが仕草とか所作とかって
いうものであったり。
あと、体の美しさと書いて
躾けがあったりとかして。
で、そういうものをね、
やっぱり責任を持って大切にするのが、
女らしさだったり男らしさだったり
するんだろうなーって思うよ。
つねさん

深いんだね。

ジョージ わかんない。
良いワインを飲むとけっこう‥‥。
つねさん

冗舌になります。


深い。つづきます!

2003-04-29-TUE

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