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新宿二丁目のほがらかな人々。
おねぇ言葉や裏声とかで語る別角度批評。

不景気になんか負けないわ。その1
強い女が嫉まれるのって。


ジョージ ねえ、最近、女性誌、
おもしろくないでしょ〜?
つねさん 読みたいっていう欲求がなくなったわね。
ノリスケ あのねえ、実用っぽくなってる感じがする。
つねさん ああ、そっかそっか。
ジョージ 出過ぎだよね、新しいのが。
出ちゃ消え出ちゃ消えって。
ノリスケ 広告収入を期待する出版社が、
広告収入が入りやすい女性誌を立ち上げる
ってことじゃないかしら。
立ち上げるとご祝儀広告が出る。
で、当たればそのまま継続できる。
ジョージ はずれたらまた次の。
ノリスケ 次出せばいいって。
ジョージ 昔ものすごく楽しみだった
女性誌が元気じゃないのよ。
ノリスケ 例えば?
ジョージ マリ・クレール、ヴォーグ・ニッポン、
うーん。フィガロ・ジャポンもそうだよね。
つねさん うん。
ジョージ 僕は個人的にマリ・クレールが
元気じゃなくなったのがすごーく残念なの。
というのも、
僕らは女の子みたいな男の子だから、
普通の男の人が女性誌を手にするよりは
抵抗感なく女性誌を手にできるよね。
だけど、どんなに読んだって
かかとの高い靴が買えるわけじゃなし。
つねさん 服が買えるわけじゃなし。
ノリスケ 雑貨やインテリア程度よね、買えるのは。
ジョージ そう。だけど、化粧品も買わないんだよね。
ノリスケ 買わないねえ。
ジョージ あの、みなさん私たちは
別に化粧してるわけじゃないですからね。
つねさん スキンケアはするけど。
ジョージ オカマの化粧は基礎代謝能力を高めることと
おひげのお手入れ、このくらい。
つねさん あははははは。
ジョージ なので、そうやって考えると、
最近の女性誌ってほんっとに洋服、
美白、あと旅行かあ。旅行、グルメ程度。
ノリスケ あと蓄財とねえ、健康。
ジョージ ああ、そうだねえ。なんだけど、
例えばグルメにしても旅行にしても
蓄財にしても健康にしても、
それは女の子雑誌よりも
男の子雑誌の方が得意なことなんだよね。
ノリスケ うん。専門誌あるしね。
ジョージ そう。だからね、あんまり見なくなった。
ノリスケ ああ。
ジョージ 昔のマリ・クレールを開くと
必ず文化だとか、書評だとか、
古典やクラシックがどうのこうのとか、
そういうのがあって、
今時のパリジェンヌは、
みたいな感じのがあって。
ノリスケ 学問のこともけっこうあったわ。
ジョージ そう。だけどね、今ってねそういうところが
どんどんなくなるんだよね。
薄っぺらになっていって。
つねさん 実用的っていうか。
ジョージ そう。
ノリスケ 昔だったらそれこそ塩野七生がね、
ローマのことを延々書くみたいな
教養があったんだけど、
そんなことやってる場合じゃない、
みたいな感じになってるわね。
ジョージ そんな感じ。そんな感じの不景気です!
ノリスケ やっぱり不景気なのよね。
ジョージ 不景気だと思う〜。
身の回りの不景気の話ってある?
ノリスケ 恋人がお店をやってるんですけど、
お客様が少なくてとっても大変そう。
2丁目もね‥‥、
若い子は当然新陳代謝で
入って来るんだけど、
その子たちは
やっぱり渋谷の子たちと同じで
たむろしてるだけで
お店で飲んだりっていうふうには
なってないみたいね。
ジョージ うん。
つねさん 飲んでもお金落とさないよね、
最近の子って。
僕の不景気はね、収入すごい落ちました。
1/4は減ったかな。
連載していた雑誌がつぶれたりして。
ジョージ 僕はね、不景気なんだって感じたのが、
僕の秘書のファッションなの。
鼻っ柱の強い女でね、
もう40になってるんですけど、
やる気のある女として
自分の気持ちを鼓舞するために、
非常に派手な小物を持つのが

好きな子なんだよ。
ノリスケ 具体的に言うと?
ジョージ ルイ・ヴィトンの
ヴェルニシリーズをですね、
全色全アイテム制覇している女なのよ。
上司を見習った部分も

あると思うんですけれど。
つねさん あんたも、そういうとこあるものねえ。
ジョージ それがすごい自分の中の勲章みたいで、
いままでは出張なんかに持って行ってたの。
着替えとか入れてるのは
実用的にプラダかなんか持ってるんだけど、
必ず一つ指物(さしもの)として

ヴェルニの、今回は真っ赤だったら
次回は黄色みたいな
感じで持って歩いてたんだけど、
今年に入ってから同じヴィトンでも
モノグラムシリーズを持って
歩くようになったんだよね。
ノリスケ 不景気になると女の人は
エレガンスに行くんですって。
例えばおかっぱで濃い化粧をしてた時代は
やっぱり景気が良かったのね。
だけど今はやっぱりエレガンス。
スーツを着て、エレガントな髪型をして、
お化粧も女性らしく。
そして、車は白が流行るのよ。
ジョージ 秘書にね、「何でなの?」って聞いたら、
最近、立て続けに嫌な思いをしたんだって。
と言うのが、同性の女の人から
「この不景気なのに
 そんなにチャラチャラしたもの持って」

とか。
ノリスケ ええ〜? そんなこと言われたの?
ジョージ 言われるんだって。
特に出張して行って同じような立場の人たちに、
「そんなにいろいろ物が買えて

 うらやましい」とか、
露骨に嫉まれるようになったんだって。
景気の良かった時も、多分、
嫉みとかはあっのよ。
でも景気の良い時の嫉みって
そんなに毒じゃないんだよね。
ノリスケ うん。
ジョージ ところが、
最近ほんとに景気が悪いでしょう。
「そういうことを聞くと

 心が冷えちゃうんです。
 だから目立たないように
 モノグラムにしたの」って言うの。
ノリスケ そんな人までが影響を受けるなんて。
ジョージ そうだよ。だってそれはね、
僕もたまに感じるもん。
ノリスケ 地味にしてようかしらって?
つねさん そういえば、あなた、
今年、オレンジ色のダッフル

着なかったよね。
ジョージ そう。エルメスのオレンジ色の
ダッフルコート着てないの。
人の目が怖いっていうのはないのね。
人の目は元々怖いものだから
今さら怖がってもしょうがないの。
でも、人の嫉みってさあ。
ノリスケ やっかい!
ジョージ 嫉みは増幅されるでしょ?
ノリスケ 噂と一緒で、尾ひれがついて、ね。
巡り巡って増幅された強力な嫉みが
噂になってまた戻って来たりして。
ジョージ そう。それとね、
景気の良かった時の嫉みの分量よりも、
景気が悪くなった今の、
嫉ましいと思う人の「嫉みの量」が
増えているような感じがする。
ノリスケ モテる人が嫌われるようなもの?
ジョージ やーん。
そういう経験はいっぱいあったわん。
つねさん はいはい。


嫉妬は嫌いよ。つづきま〜す。

2003-03-27-THU

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