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新宿二丁目のほがらかな人々。
おねぇ言葉や裏声とかで語る別角度批評。

ここのごろどうなの? その9
レストランで常連になるには。



ジョージ やっぱりお馴染みのお店で
ご飯食べるのが楽しいよね。
ノリスケ そりゃそうだ。
ジョージ そうだよね。で、お店の人から、
お馴染みさん扱いされるのって、
すごく幸せだよね。
ノリスケ 幸せ、幸せ。
ジョージ で、心ある人は、みんなそういうふうに
自分がなりたいって、思って、るよね?
ということを前提に。
こういうことをすると、
絶対、常連にはなれません講座。
常連って、回数行ったら
常連になれると思いますか?
ノリスケ いや、違うんじゃない?
ジョージ とあるお店で、毎週のように、
下手をすると、2日おきとか3日おきに、
ひとりでやって来るご婦人がいらっしゃいました。
そのお店、あの、座ると、
どんなに安くっても、
たぶん1万5千円ぐらい
かかっちゃうお店なんですけれども、
まず、あの、高級な洋風のレストランにですね、
女がひとりでやって来るということ。変でさね。
ノリスケ まあ、そうでしょうね。
ジョージ 変でさね。
でも、ま、いいでしょう。
ノリスケ 事情がおありかもしれない。
ジョージ 事情がおあり。お座りになります。
お店の方に、何をお召し上がりになりますか?
って言われても、何が食べたいとか、
おっしゃいません。
ノリスケ なんで?(笑)
ジョージ お任せします。っていうのよ。
ま、悪くはないですね。悪かない。
ノリスケ おまかせっていうのは、ありだからね。
ジョージ ええ、悪かないですよね。
それで、料理が出てきます。
出てくるすべての料理にですね、
レモンかけます。
しかも、あの、マイ・レモンをですね、
持って来られてですね、
ジャバジャバかけます。
たとえそれがグラタンであっても、
たとえそれが、もう十分に酸っぱい
サラダ仕立てのマリネであっても、
ジャバジャバレモンかけます。
ちょっとマズいでさあね。
続いてですね、ちょっとお気に召さない
料理が出ることもあるみたいなんですよ。
ノリスケ お任せだから。
ジョージ ええ。そうすると、
口の中に入れた物をですね、
そーっとカバンの中から、
ティッシュ・ペーパーをお出しになって、
その中に吐き出して、
もう一度カバンの中にお戻しになるんだそうです。
ノリスケ すごーい(笑)。
ジョージ ね? でね、この方、
都合100回くらいいらっしゃったって
いうんですけども、お店の人がですね、
「止めて下さい、もう二度と来ないで下さい、
 あなたが来ると、私の料理がかわいそうです」
って言って、もう、
お店の敷地の中に入ることすら、
許されなくなったそうです。
どうでしょう?これ。
つねさん ひとつ。
ジョージ ひとつ、常連になるには、
回数が大切なのでは、ない! ね?
ノリスケ だって、そういったら、
マクドナルドにも常連がいるものね。
ジョージ そう。だからね、たった1回でも、
常連になろうと思えばなれるんだよ。ねー?
んでね、さっき言ったように、
そのお店にふさわしくない
格好してくる人っていうの、
絶対に常連になれないよね。
んで、あの、その、
ふさわしくない格好をしてきたですね、
顔はキレイなんだよ。女の子、ふたり。
ひとりはね、けっこうお金がかかってんの。
顔に。あごと鼻かな?
うん。かなり出来上がってるわけ。
つねさん あ、お直ししてるのね。
ジョージ それ。もうひとりはね、
まだね、お金をかけるだけの余裕がない女の子。
うん。と、頭の悪そーなね、
代理店系かねテレビ局系。のね、
役職Dと役職ADのセットみたいな感じ。よ。
ノリスケ ガツガツしてますね。
ジョージ それ! それそれそれ。それ。
そんでね、男はね、いいの、
もうそのお店にね、連れてきたことで、
もう、役目は果たせてるわけ。
女の子的には、
男にはバカにされたくないわけよね。
おねだりしてタダ飯を食う女に限って、
男に従属したくない。
あんたの主人はわたしなのよ。
あんたは金を出せばいいのよ、
料理を選ぶのはわたしなの。
なぜなら、わたしの方が、
こういう高級な、たとえばイタリア料理なら
イタリア料理のことは、知ってるのよ。
任せなさい。
そういう感じなのね。
で、マダムが近づいてきました、ツカツカツカ。
何がお召し上がりになりたいの?
はじめてだよね、その女の子はね、
そのお店に来るのはね。
でね、なんて言ったか。
「わたしはあんまりお腹が空いてないので、
 それに太りたくないですから、
 サラダみたいなのを食べたいんですけど」!
ノリスケ ええっ?
ジョージ もう、マダム、カチンと来てるわけだよね。
腹減ってないってか?
うちに来るのか? それでも。みたいな。
んでもね、気を取り直して、お客様だから。ね?
精一杯の誠意を持って、
あ、それなら季節のイタリア野菜がありますんで、
それは、あっさりとビネガーと
オリーブ・オイルで、って言ったら、
「あ、私そういう
 月並みなサラダは食べたくないんです」。
ノリスケ そいつ殺す。
ジョージ 「もっと変わったの、ないんでしょうか?
 特にあの、油とお酢で
 ちょこちょこっていうのは、なんかぁー」
って言ったとたんに、
もうマダムの顔、大魔神よ、大魔神。
マダム、どう言ったと思う?
「あら、あなた、じゃ、マヨネーズが好きなの?」
ノリスケ あー、格好いいー!
つねさん で、その女の人は何て言ったの?
もう「出てけ」って言われてるようなものよね。
ジョージ んーもう出てけ、でしょう? なのに、
「マヨネーズは体にちょっとぉ…だから、
 あの、お任せしますんでぇ、
 おいしいサラダ作って下さい」って。
どんなの出てきたと思う?
角切り野菜に、
塩コショウ振っただけのものが出てきたの。
ノリスケ 「帰れ」だね。
ジョージ すーごいでしょー?
も、そのあと、ぜんぶその調子なんだよ。
ノリスケ ついでに角切り野菜にひとつずつ
楊枝刺したら良かったね(笑)。
ジョージ パスタはどうしましょう?
って言うと、
「んー、ボンゴレえ」。
ノリスケ アハハハハ。
ジョージ ほーっ! ボンゴレかいっ!
つねさん いいねー。
ジョージ んで、マダム、
「ロッソ? ビアンコ?」
「何ですか? それ?」
「ビアンコっていうのはね、白いの。
 ロッソっていうのはね、赤ってね、
 何で赤いのか、わかります?」
って言ったら、女の子が、
「トマトですかあ?」
「あら、よく知ってるじゃない。
 で、どっちにするの? 白いのね?」
って。そしたら、
てんこ盛で出てきました。
見たことないような大盛り。エサ。どさーっ。
も、「帰れ」。
ノリスケ ひとり500グラムぐらい(笑)?
ジョージ そんときに、僕たちとその人たちが、
おんなじように入店したんだよ?
僕たちは、3時間いたんだけど、
その人たちは、1時間20分で放り出されたの。
いい話でしょう?
ノリスケ いやー、いい話だ。
ジョージ ね? 教訓。
いいお店の常連になろうと思ったら、
とやかく、自分の専門知識を口に出さないこと。
ね? それ以上に専門的な人が働いてます。
続いて、自分が、食べたいものを、
あれこれ言うのはやめなさい。
お店の人に、今日は何が美味しいんですか?
何を食べさせていただけるんですか?
って聞くのが常連になる第一歩。
あれが食べたい、これが食べたいって
言うんだったら、
それを食べたいお店に行きなさい。
ということになるんだよ。
(そうねー。つづきます)

2002-10-04-FRI

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