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新宿二丁目のほがらかな人々。
おねぇ言葉や裏声とかで語る別角度批評。

不幸を愛するオンナ。その3
私たちは不幸じゃないわよね。

(ベス帰宅、いつもの3人に戻る)

ジョージ なーんか、ゴメンナサイね、
不幸話はやっぱり私たちには合いませんでした!
ちょっと話が戻るんだけど、
こんなウソついたことあるのよ。
ノリスケ 戻るって、前に話したテーマじゃないの!
ジョージ そーよ、いいじゃない、……あのね、
カミングアウトしたときに、
「自分は女もできる」って言ったの!
つねさん それ、大ウソじゃん(笑)!!!
ジョージ そーーおなのよ!
あのウソはね、ほんっとに大ウソだと思う。
ノリスケ ぼく、最初にカミングアウトしたのって、
友達の女の子とドライブしてて
「ノリスケさんの好きなタイプって、
 どんな女の人なの?」ってきっかけだから
そのウソはつかずにすんだな。
「女じゃないの」って、
勢いで、正直に言っちゃったの。
ジョージ 結婚の話がでたのね。だから
「すいません、ゲイだから結婚はできません」
とは言ったけど、
「でも、女も大丈夫」
っていうのが、もう、最期の砦だったのよ。
つねさん あー、うん。
ノリスケ 言い訳として。
ジョージ 女に一切興味がありません、
って言ったら・・・。
つねさん みんな引くよね。
ノリスケ うん。
ジョージ みんな引くよ、ほんとに。
だから、女も男もできるんです、っていう、
この部分が多分ね、
いままでついたウソのなかで、
最も罪深いけど、
最も効果的で良いウソだったと思うよ、未だに。
つねさん それって他人へのカムアウトの話よね。
親には?
ジョージ できない、って言ったよ。
つねさん あ、そこでは言ったんだ。
ジョージ 言った。でも、ウチのオヤジは、真顔で、
ほんっとにできないのか?
って訊いてきたよ。
つねさん なんて返したの?
「じゃあ父さん、できるの、男と?」って?
ジョージ うん。
「父さん、男のおシリに、キスできる?」
って聞いたの。
ノリスケ すごい聞き方(笑)。
ジョージ すごい聞き方でしょう?
これ、本末転倒だと思うんだけど。
つねさん こわい親子(笑)。
ジョージ そしたらウチのオヤジが、
すんごい哀しそうな顔して、
「…………無理だ。
 いい、ガマンするな」
って言ってくれたの。
つねさん アッハッハッハッハ!
ノリスケ いい話ねえ……。
ジョージ いい親だわ、って思った。
親にはいちおう
カミングアウトしていないあんたたちは、
上手にウソをつき通してるんだよね。
つねさん うーん、親に結婚しろって言われるでしょ?
彼女いるか? とかって言われると
ウソついちゃうよね。
ノリスケ より穏やかに生きるためにつく、ウソね。
ジョージ でも、考えてみたら親も優しいよね。
たわいもないウソで答えられるような
質問しかしないから。
ベス まあね。
つねさん でも、相手が死ぬまで、
ウソをつかなくちゃいけない、
っていうのは、
ちょっと苦痛ではあるけどね。
ジョージ でも、ウソとも言えないのよね。
「彼女いるのか?」「いない」。
ホントだもん。
つねさん ウチは、きょうだいが全員結婚してて、
あとはおまえだけだ、みたいになるわけじゃない?
世間的に、今しない人って増えてるから、
そこらへんで誤魔化せてはいると思うんだけど。
ジョージ でも、ホントのことを言うのが、
親切とも限らないしね。
つねさん そうそうそうそう。なんでもそうじゃん。
ジョージ そうだね。考えてみたらあれだよ、
夫婦とか恋人の間でつくウソと、
そうじゃない人との間でつくウソは違うよね。
ノリスケ そうね、今いっしょにしちゃったけどね。
ジョージ ホントは別だよね。
恋人同士でつくウソってさ、
やっぱり恋人とか夫婦とかの関係を
つつがなく持続させるために・・・。
ノリスケ それは、たわいもないウソをつくよ。
ご飯どうしたの? 一緒に食べる?
って言われたら、
「あんまりおなかすいてないよ」とか。
ジョージ ぜんぶ正直に言ってしまうと
めんどくさくなることって、
いっぱいあるのよ。
ノリスケ 実は楽しくおいしく食べてるんだよ、
会社でみんなと。
だけど、そうは言えないから、
うん、カップラーメン食べたから
僕はいいや、って言ったりしちゃうのね。
ジョージ それはいいことだよ。でもそれってさ、
一回ついたらつき通さないと
いけないことなんだよね。
憶えとかないといけないの。
ノリスケ そうだよね、そうそうそう。
つねさん ウソはつき通さないといけないよね。
つき通せないウソだったら、つくなっていう。
ジョージ ね? あん時、カップラーメン
食べたんじゃなかったんだっけ?
って言われると、あーちゃーって。
そうすると、そっからまた新たなウソを
作り出さないといけないんだよ。
ノリスケ ふぇ〜ん、ややこしくなるよ〜。
ジョージ で、ウソにウソを重ねていくと、
自分の周りに地雷がいっぱい
埋まってくようなもんで。
ノリスケ 歩けなくなっちゃうね。
ジョージ 気がついたら踏んじゃうんだよね。
僕、昔はもう、人間関係はどうでもよくって……
つねさん 地雷しか作ってなかったの?
ジョージ 地雷っていうか、
僕が昔ついてたのは、
タイトなブッキングを
上手にすり抜けるのウソなの。
ノリスケ 上手に言うね、あなたもね。
タイトなブッキングって(笑)。
二股とかっていうことでしょう?
ジョージ そう。誰かとご飯を食べに行って、
んで、ちょこっといたしまして・・・。
ノリスケ ちょこっとか(笑)。いたすのか。
ジョージ そう、ちょこっとなの。
だって、次にもやんなきゃいけないから。
で、ちょこっといたした後で、
「あ、ごめん、このあと
 打ち合わせが入ってるんだ。
 大切な打ち合わせの前の時間に
 急に会いたくって、
 時間わざわざ作って来ちゃった、ごめんね!」
とかって言うと、
彼は彼でハッピーなわけじゃんっ!
どうよ? それで、ダァーーーッて
次んとこ行って。んで、
「あ、ごめんごめん、
 打ち合わせがちょっと長引いちゃって」。
ノリスケ …………。
つねさん いろんな意味で「うまい」よね。
ノリスケ あの、「たくみ」って字を書くのね。巧い。
つねさん そうそう。「たくみ」と「おいしい」っていう意味。
巧くて美味い。
そういうことしてるとバチがあたるのよね。
ジョージ そう、ほんとうの打ち合わせとかが
間に入ってるのを忘れちゃったりとかするんだよ。
ありゃー、とかっていう。
つねさん そりゃマズイよ(笑)。
ジョージ で、これは・・・みなさん、やめましょ(笑)。
あ〜はぁ〜、やるなら、死ぬ覚悟で。
自分の人生をかけて。
ノリスケ ジョージさんさあ、そういうアナタだけど
不幸な目に、酷い目には遭ったことないの〜?
つねさん 男関係で。あるでしょ。あるわよね?
ジョージ あるっちゃ、ある。
でも、別に不幸じゃないもん。勝ったもん。
ノリスケ 聞かせなさい!
ジョージ 脅迫だとか死んだ猫が洗濯機に入ってるとか?
(ん? もう一回つづきます)

2002-07-12-FRI

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