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新宿二丁目のほがらかな人々。
おねぇ言葉や裏声とかで語る別角度批評。

上手なウソ、美しいハッタリ。その6
男社会でゲイであるというウソ。


ジョージ 昔、ウチが田舎に住んでたときに、
小っちゃいアパート住んでて。
文化住宅っていうの? 昔の。
んで、おんなじアパートに、
オカマの夫婦が住んでたんだよ。
つねさん へー。
ジョージ で、ひとりがオカマバーに勤めてて。
温泉町だったから、そういうの昔っから
あったのよね。で、もうひとりは普通に、
昼間サラリーマンの仕事してるんだけど、
あの、夫婦ゲンカするの。
ノリスケ ハハハハハ、オカマの夫婦ゲンカ。
ジョージ すーごいんだよ。
ノリスケ それは、男同士になってっちゃうの?
殴り合いになっちゃうの?
ジョージ 女同士になるの。
ノリスケ 女同士になるの?
ジョージ 最初はね、男同士としてケンカするんだよ。
で、男同士っていうのは、
理屈でケンカし始めるんだよね、最初ね。
で、それがね、そのうち
感情が高まってくるとね、女になるんだよ。
言葉遣いまで男の言葉から
女の言葉に変わってきたりとかするんだよね。
ノリスケ なんなのよっ、とかって?
ジョージ そそそそ。で、そういうのを、聞きつつね、
オヤジとオフクロなんかね、
あの、変な人間、という風に言うんだよね。
ノリスケ あ〜。
つねさん あいつらはー。
ジョージ 男にもなりそこなって、
女にもなりそこなった人間、として見るんだよ。
で、これがたぶんつい最近までの、
ゲイの見られ方だったろうと思うんだよ。
なりそこないで、どっちでもない。
んで、それが、最近は、
男でもあり女でもあり、
男でもなく女でもなく、っていうふうに、
思われ始めたじゃない?
ノリスケ うん。
ジョージ それはけっこう幸せなことかな?
って思うんだよね。
だから、おすぎさんやピーコさんなんか、そうだよね。
ノリスケ そうそう。
ジョージ ピーコのファッションチェックだったっけ?
ノリスケ うん。
ジョージ あれなんか見てると、たとえば、
女の装いを、男の立場でとやかく言うと、
男のあんたにはわからないでしょ?
っていうふうに思うんだよね。
んで、女から言われると、
女のあんたには言われたくない、
と思うんだけど、オカマが言うと、
自分に直接関係ないからね。
つねさん ふーん。
ジョージ んで、女は同性でライバルで、
男は自分に対しては消費者なんだよね、
自分を商品として見たら。
競合商品と消費者の間じゃない?
で、生産者は自分なんだよね。
つねさん うん。
ジョージ ところが、ホモっていうのは、
ライバルでもなければ、消費者でもないから、
純粋な評論家なんだよね。
ノリスケ うん、うん。
ジョージ んで、それって、人のつながりが、
ものすごく濃密になってるじゃない?
今って。なんか知らないけど、
世間は広くなってくんだけど、
ネットだとかEメールだとか、
文字のとこで、人の繋がりは
ものすごく濃密なんだよね。
で、そんな中で、
自分と一切関わりを持っていない、
関係のない人との、関係、っていうのを、
みんな渇望しているような、感じがするよ。
つねさん うーん。
ジョージ 客観的な友人というのかな?
で、そういうものが必要となった時代に、
ゲイとして生きているのは、
すごい幸せだと思う。得してる?
つねさん そういうところで?
ジョージ いや、ゲイであって。
つねさん ん、べつに得してるとも思ったこともなく、
損してるとも思ったことないから、
トータル得してんのかな?
っていう気は、するけど。
のりすけさん、どお?
僕は、カミングアウトとかしてないんで。
ノリスケ 僕は、カミングアウトしてるから。
つねさん ありゃっ? ワシだけかい?(笑)半ば、
半分っていうのはあるけど、
基本的にはしてないから。うん。
ノリスケ 得というか、新しい隣人的な、
唯一の人としていられるんで、
ワン&オンリーでいられるよね。
うん。どっちの話もわかるんで。
それはとても得してると思う。
ジョージ どっちの話もわかるけど、
ぜんぜんわかんないこともありましたっ!
ノリスケ ありましたねー。オンナの神髄はわかんないわね。
逆にあれだよね、男の子だけのチームの中に、
ポンと飛び込んだことがないんで、
今からそれはしたくないんだけど(笑)、
そういう仕事になったらどうなのかな?
と思うんだけどね。
ジョージ 男の社会って、面白いよ。
ノリスケ そうなの?
ジョージ あのね、僕らの社会とは違う。
ノリスケ あー。どんなところが?
ジョージ んーとね、僕らの社会ってね、
必要に応じてくっついたり
離れたりすることができる、
アメーバみたいな社会なんだよ。
ノリスケ うん。
つねさん ふん。
ジョージ 今日、ある部分で、
ものすごくいい友だちだったんだけれども、
明日ちがう部分だと、
ぜんぜん友だちでもなんでもない、
ような関係が縦横無尽に広がっていくのが、
僕らの世界なんだよね。
ノリスケ うん。
ジョージ で、そういう意味では、
ネットワーク的というか。
だけど、男の世界ってね、頑丈なんだよ。
ノリスケ あっそ。
ジョージ 男が作り上げたのが、
軍隊とか企業とかだから、ピラミッドなんだよ。
つねさん 序列がちゃんとしてて。
ジョージ そう。それで骨格がしっかりしてて、
柱が1本立ってるの。
んで、この柱が、「仲間」っていう柱なの。
ノリスケ あ〜。
ジョージ ね?んで、基本的にマゾ。
ノリスケ アハハハハ。
ジョージ あの、Sがひとりもいないマゾの集団。
で、じゃあ、どうやって自分を
いじめるのかっていうと、
誰かが何かを言うの。
何月何日、どこそこで集まろうぜ、
とかって言うの。そうすると、
万難を排してそこに集まるの。
ノリスケ あ〜。
ジョージ 集まって何するわけでもないんだよ?
ただ飲んでるだけなんだけど、
そんとき誰かひとり来なかったら、
仲間外れだ、っていう世界なんだよ。
ノリスケ は〜〜〜。
ジョージ あのね、オカマの世界には
仲間外れはないんだよね。
だって、もともと僕ら外れてるもの。
ノリスケ 仲間外れが集まってるからね(笑)。
ジョージ そう、仲間外れが集まってるから、
仲間外れがないんだよ。
仲間外れがない代わりに、
誹謗中傷っていう
いやらしいものがあるけれどもね。
でもね、男の世界には仲間外れがあるんだよ。
だから、仲間である限りは、
何をやっても許させるんだよ、かわいいって。
んで、ゲイである僕が、
男の仲間の世界に、
仲間として認められたことは、
すごく幸せなことかも知れない。
ノリスケ それは、仕事で?
ジョージ 仕事というかね、やっぱり、
正しく自分をさらけ出して……
ゲイっていうのは、
自分と全く違った生き物だって、
みんな思ってるんだよ。とくに男の場合はね。
ノリスケ うん。
ジョージ 女はただただ純粋に、なんか、あー、
ゲイっていう人もいるのねー、っていうふうに。
つねさん やっぱり、って。
テレビだけじゃなくて、って。
ジョージ そうそう。
ノリスケ 外の人ね。
つねさん うん。
ジョージ やっぱり、概念じゃなくって、
現象として受け入れちゃうんだよね。
いるんだから、仕方がないって。
だけど、男は、概念をしっかり
組み立てないといけないから、
頭で理解しなきゃいけないの。
んで、理解できないものに対しては、
自分たちと違うっていうふうに、
言うんだけど、だけどね、
ぜんぜん違わないんだよ。
たとえば、好きな人を必要とするし、
一生いっしょにいたいなと思う人を
必要とするんだけども、でも、
遊びたいなと思う気持ちがあって。
んで、社会的に成功しないと
いけないと思いながらも、
自分の夢はどこかで叶えたいなと思って。
でも、自分の夢と社会的な夢、
その義務と、どっちを優先するんだっていうと、
経済基盤ができるまでは
社会的な自分を大切にして、
個を犠牲にしなきゃいけないんだとかっていう、
こういう部分に関しては、ね?
ゲイも一般の人、ストレートでも
おんなじなわけ。
ただ、ただ、僕たちが違うのは、
いっしょにいたかったり遊びたい相手?
が女でなくって男、であるという、
部分だけだよ。んで、そこさえクリアすれば、
ぜんぜん大丈夫なんでね。
で、クリアするのは、もうほんっとに
丁寧に言わなきゃダメ。
すんごい丁寧に言ったもん。
ノリスケ あ〜〜〜。
ジョージ 小さーい現象をひとつひとつ考えながら。
たとえば、温泉に行って、
みんなで一緒にお風呂に入る。
僕も一緒にお風呂に入ることは、
危険ではない、とか言わなきゃいけないんだよ。
ノリスケ アハハハハ。
つねさん あ〜。
ジョージ これってさ、男の頭ん中に
ものすごい欲望があって、
女風呂に自分ひとりで入りたいって欲望は、
絶対あるんだよ、誰にでもあるんだよ。
で、それが自分は、女にならずに
自分のまんまで? 透明になって入ったら、
どんなに素敵だろう?
っていう思いがあるんだよね。
ノリスケ うんうん。
ジョージ で、それとおんなじようなことを、
僕がしちゃってるわけじゃない?
つねさん うん。
ジョージ 自分の愛欲の対象の、
男が裸で何十人もいる中に、僕ひとりでいて。
で、僕は女の姿してないから、
透明とおんなじわけでしょ?
それってね、みんなね、ズルイって思うんだよ。
違うんだよ。ズルイんじゃないのっ。
僕にとって、あんたたちみたいなね、
なんか、ケツの垂れた、若くもない、
ムッチリもしていないのに、欲情なんてしません。
あなたたちとお風呂に入るぐらいなら、
僕はイエローキャブ系の巨乳のおねえちゃんたちと
入ったほうが、楽しい。ね?
セックスの対象ではないけれども、
いっしょにお風呂入るんだったら、
そっちの方を選ぶよ、って言うと、
あー、そうなんだー、って。
おんなじじゃん、あなたもただのスケベじゃん、
とかって。
ノリスケ ちょっと違うんだけどさ(笑)。
ジョージ 違うんだけどね。そこはね、ウソだよ。
いいよ、って。
つねさん いいウソなのね。
ノリスケ あぁぁぁ(笑)。
ジョージ で、そういうのを繰り返してるとね、
仲間になれるんだよ。

(つづきまーす)

2002-06-24-MON

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