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新宿二丁目のほがらかな人々。
おねぇ言葉や裏声とかで語る別角度批評。

バレンタイン? ふん。
(もうバレンタインは過ぎましたが) その7
ハガキと手紙と電話と。

ジョージ ラブレター書くと、も、精根尽き果てるからね。
あのさ、この人、もー、
最終兵器を繰り出してきたわけよ。
ノリスケ なんなの? それー。
ジョージ ラブレターでね。
つねさん ソネット書いて送ったんだよ。
ノリスケ 14行詩!?
つねさん そうそうそう、そんなやつを送ったら・・・
ジョージ 添削して返したの。
ノリスケ ハッハッハッハッハ!
せっかく愛の詩を書いたのに。
つねさん で、その添削がね、上手いの!
ほんっとに、やなくらい(笑)。
ジョージ そういうのって、書きながら、
これもらったらやだろーなー、
僕がその立場だったらやだろうなー、
と思いながら、ま、イイヤ〜、
いじめっ子! みたいな感じで(笑)。
ノリスケ 送っちゃったわけねー。
つねさん でも俺、逆にそれが良かったよ。僕は(笑)。
ノリスケ 恋をするときさ、男女の関係みたく、
お前と一生いくぞ、みたいなさ、
これで最後だみたいなことを、
考えたりとかするじゃない?
そういうのっていうのは、
ラブレターに、書いた?
ジョージ 手紙は約束するものじゃないと思うよ。
手紙っていうのは、
ものすごく“わたくし”なものでしょ?
ノリスケ うん。
ジョージ 約束っていうのは、
おおやけのものなんだよね。
ノリスケ でも、一対一だって約束じゃない。
ジョージ うん、でも、たとえば、
口頭で相対でする約束っていうのは、
相手の目を見て確認しながら
約束ができるわけでしょ?
ノリスケ うん。
ジョージ 手紙は一方的だもん。
「今度結婚しよう」
約束でしょう?
それは、会ってから言えばいい話なんだよね。
ノリスケ 今度言えばいいことを、
うっかり書いちゃうかも知れないじゃん。
ジョージ

むしろ書くんであれば、
「ほんとうに結婚をしたいんだ。
 ところで君は結婚について、
 どういうふうに思っているのかなぁ。
 僕は、結婚というのは
 こうこうこういうもんだと思うよ。
 今度会ったときに、君の意見が聞きたいな」
っていうのが、結婚に対して、
手紙が得意なことだよ。
手紙で何でも書けるけど、
手紙が得意のことと、
電話が得意なことと、
メールが得意なことと、
実際に会って話をすることが
得意なことがあるんだよね。

ノリスケ そうか、違うよね。
ジョージ で、これだけいっぱい
伝達の手段を持ってるんだから、
得意な手段を駆使するようにしないと、
損だよね。
ノリスケ そうだね、それも。
ジョージ それこそ、広告媒体で
テレビとラジオと新聞と雑誌が違うように。
ノリスケ そうだな(笑)。
つねさん たしかにそうだね。
ジョージ うん、僕たちの中に、
たとえばラジオのような電話があって・・・
つねさん テレビのような一緒の時間があって。
ジョージ うん、あって。で、雑誌のような・・・
ノリスケ メールがあって。
ノリスケ 新聞のような・・・
つねさん 手紙が・・・
ジョージ あるんでしょ?
だから、それは正しく使わないと。
で、電話ということが、得意なのは、
即座に伝えること。
つねさん うん。
ジョージ で、自分の相手に対する
レスポンスの速さを確認しあう。
つねさん あとやっぱり、言葉の調子とかでわかるしね。
ノリスケ ニュアンスっていうのあるよね。
ジョージ で、逆に手紙が得意なことっていうのは、
想像力をかき立てること。
想像力に任せること。
あるいは、お互いの間に
何かの緩衝材を置くこと。
携帯メールが、たまにね、
電話でケンカした後に、
すぐ、さっきはゴメンね、
とかって入れることができるでしょ?
これって、ものすごくいい
媒体を使いあえたんだよね、お互いにね。
ノリスケ あって良かったね、携帯メールがね。
ジョージ そう。ぴぴぴって鳴って、
あっ、入った、とかって。
ちょっと傷つけちゃったかも、とかって。
ノリスケ なかったら、僕もひきずって、
次に電話するまで、うじうじしてたんだよね。
で、フォローの電話もしやすいんだよね。
ジョージ そんなようなもののひとつとして、
手紙があるんだろうね。
一緒にいても、
照れ臭くて伝えられないこともあるしね。
あるいは、いつも思ってるんだけども、
とりたてて言うことじゃないことって、あるんだよ。
ノリスケ うん。
ジョージ たとえば、うんと、も何年も付き合ってて、
まあ、ウチの夫婦キ××イみたいだから、
平気で・・・
つねさん 言ってっけど(笑)。
ジョージ しゅきっ、とか、アイシテル、とかって(笑)、
言うけど、普通の夫婦がね、
あるいは恋人同士がね・・・
ノリスケ 言わないでしょう。
ジョージ 言わないでしょー?
それが、寝るときに布団に入って、
2人横になったら、
愛してる? ちゅきー、とかって言わないと、
寝ないんだよ?
ノリスケ それはとっても素敵な、バカだと思うわ。
つねさん

あと、寝る前キスしてねぇ?

ジョージ そう、するんだけど。
ノリスケ もうなにもないうちも、あると思うが(笑)。
ジョージ だから、そういうのが
何にもなくなったカップルだったら、
出張に行った先から、絵はがきで、
未だにやっぱり好きだな、
とかっていうのを書いて送るのよ。
ノリスケ ああ、それは素敵だね。
ジョージ これって、電話でね、
ねえねえねえ、なんとなく僕、
今でも好きだな、っつったら、
バカって言われちゃうんだよね。
ノリスケ なに言ってやがんだ(笑)。
つねさん この人、出張先から、絵はがきよこすのね。
「いま僕は夕焼け見てるんだけど、
 この夕焼けを、君にも見せてあげたくて、
 どうのこうの……」
とか書いてきたりするわけよ。
ジョージ そそそそ。
ノリスケ お上手。
つねさん 姑息よぉ〜。好きだけど(笑)。
そういうところが。
ノリスケ はいはい。
ジョージ そういうふうに手紙を使うといいよ。
ほんっとに。人ってね、
何気なくってどうでもいいことを、
簡単な手段で伝えようとするの。
そうすると、伝わらないの。
電話で好きだよっていうことを
伝えようとするんだけど、
どうでもいいことだからこそ、
自分の手の中にある、
一番めんどくさい手法でやるの。
ノリスケ うん、うん。
ジョージ たとえば、これもハリウッド的で
こっぱずかしいけど、
んもー好きで仕方がない女の人に、
部屋一面のバラの花を敷きつめてね、
なんにも言わずに、見せる。
それ、やりすぎなんだよね。
でも、それと同じような効果を、
手紙っていうのは発揮することが
できるんだと思うよ。
だから、たとえば、プレゼントをあげるときの、
カード1枚とかね。
つねさん プレゼントとかって、包装紙とか残さないけど、
そのカードとか手紙とかって、
けっこう残したりとかするからね。
ジョージ この前は、ウチの人に買ってもらったものを、
ポラロイドで撮って。
つねさん で、僕が返してもらった。
ジョージ 何月何日、買ってもらいましたーっていうの、
書いて渡したの。
つねさん で、僕、それを手帳に貼って(笑)。
ジョージ なんて日々がこんなに盛り上がってるんだろう?
ノリスケ 素敵なことしてる!(笑)
ジョージ 手紙とかね、封筒でくるんでしまったものは、
何でも書けちゃうの。封筒ものはね、
泣き言いっぱい書いちゃうの。
あなただけに見て欲しいと思うから。
つねさん 親書なわけね。
ジョージ そう。裸になっちゃうんだよ。
ハガキだと誰かが読むんだよね。
一番いいのはね、片方が絵ハガキになってると、
書くの半分で済むんだよ。
だけど、郵便配達夫さんが読むかもしれない。
読まないだろうけど、そのスペースで、
誰が読んでも恥ずかしくないように、
自分の気持ちをまとめるの。
それで、しかも伝えないといけないんだよ。
ノリスケ それはいいね。
ジョージ たとえば、男名前で、男に対して、
「最近冷たくって、ゴメンね。
 もっともっと君のことを、
 これからも好きになるように努力するよ」
ってこういう手紙もらいたくないでしょ?
つねさん うん。
ジョージ ハガキにはそう書けないんだよ。
ハガキだったらどう書くかっていうと、
「いつも君には迷惑をかけています。
 これからひとりの人間として、
 僕も君に負けないように
 一生懸命がんばっていこうと思うので、
 これからもよろしくお願いします」
って書くんだよね。
つねさん あ〜。
ジョージ で、それは・・・
つねさん 誰が見ても・・・
ジョージ そう、誰が見てもおかしくないの。
ああ、これは、男同士で、
仕事の関係なのか、昔からの友だちなのか、
ちょっとしたわだかまりがあって、
それを解くために書いたんだな、って思うの。
で、もらった方は、恋人同士でなくって、
一個の人間として、
彼は、僕に申し訳ないと思ってる、
許してやろう、と思うんだよ。
ノリスケ そうだよね。
ジョージ 盛り上がるときにはね、
幸せな恋人同士でいいんだけど、
なんか問題が起こったときには、
ぜったい人間同士としての問題を解決をしないと、
恋人同士の問題は解決できないの。
たとえば、最近、最近あんた
生活態度が悪いんじゃない? と。
もっと家事を手伝ってよー。
恋人同士のケンカでしょう?
だけど、掘り下げていくと、もしかしたら、
彼には、生活上のだらしなさがあったり、
あるいは人間として計画が立てられない
とかっていう部分があって、
その部分をふたりで改善しないと、
恋人の部分の問題も解決できない。
それはね、大切にしないといけないと思う。
で、そういうのの、問題提起には、
ハガキはすごくいいのよ。
(このテーマはこれにて終了。また次回をお楽しみに!)

2002-02-15-FRI
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