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新宿二丁目のほがらかな人々。
おねぇ言葉や裏声とかで語る別角度批評。

バレンタイン? ふん。その2
たった一粒。

ジョージ ゲイのバレンタインっていうのは、
どっちが男でどっちが女かわからないから、
ひじょうに難しいよね。だいたいね、
バレンタイン・デー直前になって
チョコレート売り場に
チョコレート買いに行くって、
もーのすごい勇気を要するよ。
ノリスケ そうね。
昔、ソニプラに、買いに行ったことある。
その頃、ちょっとバカな状態でね(笑)。
そしたら、店員のおねえさん、
「プレゼントですよね?」ってニコって。
僕も素直に「ハイッ!」って言った(笑)。
そのときは恥ずかしかったの覚えてるけど、
でも、じつは、いまは、
ちっとも恥ずかしくないよ。
大手を振って買いに行っちゃう。
つねさん バカが続いてるのねえ。
僕だったら恥ずかしいや。
伊勢丹の下とかね。
ジョージ 特設売り場もうけるでしょう?
ノリスケ いまね、すごいのよ。伊勢丹。
ヨーロッパ、アメリカ、日本のあちこちから
ショコラティエ集めてて、
「チョコレート界の貴公子」
とかっていうフランス人のチョコとかあるよ。
いまはブランドじゃなくて、
人で選ぶのね、チョコも。
パティシエとかで。
あーん、でも、ブリュッセルのヴィッタメールの
生チョコが食べたい! あれは、ないの〜。
つねさん あんたが食べたいだけじゃない。
で、伊勢丹は特設売り場になってるの?
ジョージ そう。それもそうだし、
いちばんすごいのはプランタンだよね。
銀座の。
つねさん あ〜、とかタカシマヤとか?
ジョージ うん、すーごいんだよ。
ノリスケ バーニーズからもハガキ来たよ。
バレンタインのチョコ、揃いましたって。
あそこでも売るんだね。
ジョージ でもさ、そういうふうに
お膳立てはすごいんだけど、
そこに来ている人たちは、
どういう風にしてチョコレートを
選んでるんだろう?
すごい心配になっちゃう。ね?
男は基本的にチョコレート好きじゃない、
と思った方がいいんだよ。
ノリスケ そうだったのか(笑)。ぼく、だーい好き。
つねさん 俺も好き!
ジョージ あんたたちは男じゃありませんっ。
男に贈って、男が十中八九喜ぶものって、
酒とかタバコのはずなんだよね。
つねさん 一時期はやったじゃん、
なんかクマの形したウイスキー。
サントリーの。
ノリスケ といって、ウイスキーボンボン
あげちゃダメだろうしね(笑)?
ジョージ にも関わらず、チョコレートでしょ?
これって、すーごい、なんか、ワナだと思わない?
ノリスケ チョコレート業界の(笑)。
そりゃ、そうなのよ。わかってる。
つねさん だって、むかしってさ、
ホワイト・デーってなかったよね?
見返りって求めなかったじゃない?
ジョージ 今、今の心構えとすればね、
相手が自分のお金を出してまで、
買いたい、買って食べたいと思うものを
あげるのは簡単なんだよ。
あげて喜ばれるのは。
だけど、別になくてもいいものを、贈って、
しかも喜んでもらうのっていうのは、
ものすごい訓練だよね。で、ワナだよね。
相手がチョコレートも好きでなくって、
チョコレートだけじゃなくって
甘いもの嫌いな男の人に、
どんなに高くてゴージャスで
有名なチョコレートでも、
1万円のチョコレートの詰め合わせで、
パカッと開けたら100個くらいあるのをあげたら、
男は、あ、愛情の押し付けだな、って。
この女、俺のことぜんぜん考えてないな。
バカなんじゃないの? 気が利かなくって、
って、思うよね。
で、じゃあ、そういう人に何を贈ればいいのか、
っていうと、ものすごくビターで、
あんまり甘くなくって、
んー、それをたった1粒。
ノリスケ ほう。
つねさん か、もしくは、それこそ、
チョコレートでなくってもいいわけでしょう?
それ言っちゃったらダメ?
ノリスケ ぼくは、チョコ、あげたいな・・・
俗物って言われてもいいから。
ジョージ ま、あなたの彼はチョコが好きなわけでしょ。
そうでない男には、チョコレート1粒。
僕が、つねさんに、
デメルの猫の舌ちょうだい、って言ったのは・・・
ノリスケ ちょうだい、って言ったんだ。
ジョージ チョコだったら何が好きって言ったからなの。
つねさん けっこう、調べたんだよ、あんとき。
ジョージ うん、猫の舌っていうのがあってね、って。
猫の舌って、ほんっとに猫の舌の形してて。
端っこと端っこをくわえて
キスをするのが楽しいとこなの〜。
ノリスケ (怒)あ、そう。す・て・き・ね〜。
つねさん ……でもまだ、冷蔵庫に残ってるよね。
去年の……。
ジョージ ま、捨てられないしね。
だから、彼とバレンタイン・デーに
キスをしたかったら、
デメルのチョコを買って下さい。
猫の舌は3種類あります。
ノリスケ そういうふうにキスを仕掛けるということは
「告白」系よね。
でも、それがそういうものだって
知っているわけでもなさそう、男は。
やっぱり自分でクルクル迷って悩んで
楽しむのがバレンタインなのかな。
つねさん 猫の舌、美味しいよね。
ジョージ うん、けっこう美味しいよ。
ノリスケ ウィーンのお菓子ですね。
ジョージ そうです。
つねさん 僕、でも、あれだったな、
それこそさっきの話じゃないけど、
あんまり日ごろほら、
チョコレートとか買わないけど、
嫌いじゃないの、でも自分で買わない。
だから貰って嬉しいな、
っていう気持ちはあるよ。
ノリスケ 半端な相手だと、
「貰えないのかな?」
と思ってるのがわかっちゃって、
「しょーがねーな」
と思ってあげたりとかしちゃうこともあるかも。
補う、みたいにして。
ジョージ むかし、あれだよね、2丁目の飲み屋さんで、
洒落た飲み屋さんになると、
バレンタイン・デーを挟んだ1週間っていうのは、
お通しに粒チョコが出てきてたよ。
つねさん ふ〜ん。
ジョージ これって、女の子的には
参考になる話だと思うよ。
実はチョコレートっていうのは、
お酒のお供になるって。
ノリスケ ウィスキーに合うよね。
シャンパンにイチゴが合うように。
ジョージ バレンタイン・デーに、
お泊まりで、久しぶりに一緒にお酒が飲みたい、
とかって言いながら、お部屋入って、ねえ?
水割りかなんか、頂きながら、
「今日バレンタイン・デーよね」
とかって言いながら
キス・チョコかなんかが
ちょっちょっちょって出てきたら、
この女はいけてるっ! って思うと思うよ。
つねさん あ〜。食べる食べないに関わらず。
ジョージ うん。それをもしね、キス・チョコと一緒に、
ヘネシーかなにかのハーフ・ボトルを、
プレゼントしてしまったら、
“銀座の女”になっちゃうんだけどね。
ノリスケ 微妙だな(笑)。
ジョージ だから、ここはね、ひとつね、
女のプレゼント・センスをためす、
いい場所なんだと思って考えるのがいいんじゃない?
たとえば僕なんかは、
固形チョコレートはダメだけど
液体チョコレート、
チョコレート・アイスクリームは好きなんだよ。
男的には、チョコは許せないけど
アイスクリームはOKな場合もあるのよ。
つねさん あ〜。
ジョージ ゴディバの直営店に行けば
チョコレート・アイスクリーム
売っておりますんでね。
つねさん は〜。
ノリスケ それこそ、
メゾン・ド・ショコラにも売っておりました。
ジョージ 売ってますよ〜。
やっぱり、想像力だよね。
で、私は、あなたがあんまり好きでもない
チョコレートで、あなたをおもてなししました。
ノリスケ おもてなしね。
それを考えている時間やなにかを
全部ひっくるめてプレゼントだもんね。
ジョージ その気持ちが、正しく伝われば、
男はホワイト・デーに、
別のものでもって
女の子をおもてなししてくれるのよ。
(つづきます)

2002-02-10-SUN
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