武田観柳斎の小さな野心。
〜八嶋智人さんに、あれこれ訊く〜
第1回 メガネノオカッパに抗議殺到?


糸井 じつはぼくら、
八嶋さんの演じる武田観柳斎のことを
「メガネノオカッパ」と
勝手に呼んでたんですよ。
八嶋 ああ、読ませていただいてました(笑)。
吉弥さん(桂吉弥さん:山崎烝役)が
ページをプリントアウトして
現場に持ってきていたので。
糸井 ああ、そうですか。
で、今日は、そのメガネノオカッパのこととか
『新選組!』のことをうかがおうかと。
八嶋 はい。まあ、武田観柳斎の話ばっかりしてても
ちょっとあれでしょうからね。
なにしろ観柳斎って、
NHKに抗議の電話が殺到したくらいの
インチキ臭い男ですから。
糸井 なんですか、それは(笑)。
八嶋 いや、ほんとなんですよ。
記念すべき第1話で、
観柳斎のビジュアルに抗議が殺到。
糸井 え? 「大河的にあれはどうなんだ」って?
八嶋 はい。それを聞いてぼくも困ったんですけどね。
「俺が望んで
 この格好になったわけじゃない」って。
一同 (笑)
糸井 まあ、全編をとおして、
もっとも着ぐるみっぽいキャラですよね。
いちばん満艦飾で。
あれは用意されてた格好なんですか。
八嶋 そもそもの話でいうと、撮影に入る前に、
三谷(幸喜)さんが電話してきたんですよ。
「おまえ、メガネしたいか?」って。
糸井 あははははは。
八嶋 で、まあ、
「どっちでもいいですよ」って言って。
武田は運よく、というか、肖像画とかが
残ってないから、自由が利くんですよ。
で、プロデューサーの人も、
「八嶋さんといえば眼鏡でしょう」なんつって。
糸井 資料がないのをいいことに。
八嶋 そうですそうです。で、まあ、
「ああ、じゃあありがとうございます。
 まあ、見えたほうがいいですから」って。
で、衣装合わせしたときは、メガネとして、
そんなに主張のないものだったんですよ。
ちょっと金色っぽい感じの、
頬骨のところに挟むようなやつで。
糸井 衣装合わせの段階では。
八嶋 はい。「それにしましょう」ということで。
それで第1話を撮りに行ったら、
なぜか、黒い真ん丸メガネになっていて。
糸井 オオクボヒコザエモンみたいな(笑)。
八嶋 オオクボヒコザエモンみたいなのがあって(笑)。
「あの、これ言われてたのと違うんですけど」
って言ったら、
「レンズに度が入んなかったんだよ」
って言われて。
糸井 (笑)
八嶋 ぼく、NHKも大河もはじめてだし、
ここはまあ、
言うこと聞いたほうがいいなと思って、
なんとなく、
そのメガネで1話撮っちゃったんです。
で、その第1話が放送されたら、
抗議の電話が殺到。
糸井 あはははは。
八嶋 そして三谷さんからも電話がかかってきて、
「うん、お前は予想以上に浮いている」って。
一同 (爆笑)
八嶋 「だったらあんたがとめてくれりゃ
 よかったんじゃないのか」って思いましたけど。
糸井 「予想以上に浮いてる」(笑)。
八嶋 で、じつは、つぎに出てきたとき(第26話)は、
ちょっとだけ銀色っぽい、真ん丸じゃない、
あっさりしたメガネに変わってるんですよ。
糸井 ああ、そうなんですか。
まあ、変わってても濃いけどね。
八嶋 まあ、そうなんですけどね。
だってみんな、笑うんだもん。
(香取)慎吾君とか(山本)耕史とかも、
パッと見て「プッ(吹き出す)」って。
糸井 あはははははは。
八嶋 すごいいじめられっ子な気分っていうか、
自分は自分の姿が見えないから
すごく不安になるんですよ。
芝居の最中もね、みんな、どことなく、
こう、目をそらすんですよ。
一同 (笑)
八嶋 こう、面と向かってしゃべるシーンとか、
ちょっとこのへん(八嶋さんの肩のあたり)
を見ながらやるわけですよ。
「おいおい目を見て芝居しようぜ」って(笑)。
糸井 そのくらいインパクトがあったんだ。
八嶋 ええ。あとねえ、撮影中、
ものっすごく、
「ぼく待ち」な時があるんです。
ぼくの準備で撮影を止めちゃうんですよ。
糸井 あはははは。
八嶋 まあ、正直、武田の役って、
「そこにいるだけ」みたいなシーンが
あったじゃないですか。
こう、うしろでリアクションするだけみたいな。
すると、ほら、サラサラヘアですから、
髪の毛がベロッとなったりして。
一同 (爆笑)
八嶋 メイクさんが飛んできて、
すっごい、髪、とかされたりして。
そのあいだ、
局長クラスを待たせたりするわけですよ。
糸井 「八嶋さん待ちでーす」(笑)。
このサラサラヘアのために。
八嶋 照明さんも「メガネの映り込みがなあ」とか。
一同 (笑)
糸井 あんな格好じゃなければスムーズにいったのに。
でも、あの「浮き」がないと
ドラマ全体に変な軸もなくなっちゃうんでね。
八嶋 そうですかね。
糸井 隊の中にああいう満艦飾な人がいるのは
やっぱり意味がありますよ。
八嶋 まあ、そういう意味でいえば、
すごくラッキーだったんですけど。

(どんどん続きます!)

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2005-04-26-TUE

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