『新選組!』
with
ほぼ日テレビガイド
第40回 「平助の旅立ち」を観て


永田 第40回を観おわりました!
糸井 おつかれさまでした!
西本 ‥‥永田さん、また、泣いてましたね。
永田 え? いや、今回は大丈夫でしたよ。
もちろん、ツーンとは来ましたけど、
ボロボロこぼれたりはしませんでしたよ。
西本 いや、泣いてましたよ。
永田 ほんとに今回は泣いてないって!
なにを根拠に。
だいたい、にしもっちゃんの
後ろで観てるんだから、
見えないでしょ、こっちは。
西本 空気でわかりますよ。
‥‥背中が感じるんです。
ふたり うそつけ!
西本 ほんとにわかるんですよ。
永田さんが「いまキテるなぁ」というのは。
糸井 ツーンという音がしたんですか。
西本 ツーンというよりピーンという感じ。
具体的に言うと、沖田が
「再来年の桜が‥‥」と言うあたり。
永田 (ドンっと机を叩き)
ああっ、あそこは、キたっ!
西本 でしょう? あそこですよね。
家で観ているときに、
「あ、永田さん、ここ好きだわ」
と思ってました。
永田 たしかにキましたけどねえ。
糸井 まあ、永田くんひとりを
泣き虫呼ばわりするのが
おもしろいのは承知してますけど、
ぼくも、じつは、家で観てたときは、
バリバリにキてましたよ。
永田 ですよねえ?
糸井 それが自然ですよ。
人がどこで泣くかなんてチェックしている
にしもっちゃんのほうがおかしいですよ。
永田 いえてるいえてる。
西本 おかしいのはわかるんですけど
気になってしょうがないんですよ。
ふたり どうかと思いますよ!
西本 反省したいところですが、
性分なので、またやっちゃうと思います。
永田 まあ、この話はそのくらいにして。
糸井 ひとつ、おもしろ枕として
言っておきたいことがあります。
ふたり どうぞどうぞ。
糸井 今週、ぼくは西本さんの役目をしましたよ。
永田 どういうことですか。
糸井 出くわしましたよ、『新選組!』関係者に。
西本 あっ、とうとうやりましたか。
永田 仕事でなく?
糸井 仕事ではなく。
西本 どなたに?
糸井 『新選組!』の色気部門担当者に。
永田 色気部門?
糸井 さんざん男をたぶらかした人ですよ。
西本 鈴木京香さん?
糸井 そうです、お梅さんです。
西本 ぼくも一度見かけています。
糸井 偶然、お会いしたんですが
ぼくは「観てますよ!」と言いましたよ。
永田 それじゃまるっきりファンじゃないですか。
え? 鈴木さんと面識は?
糸井 ないです!
ふたり 初対面かい!
糸井 会うなりファンの発言をしてしまいました。
しかも、ぼくと鈴木さんのあいだに
立っていた共通の知り合いに、
「いやらしいんですよ、この人は!」
とまで言ってしまいました。
西本 完全に「お梅」として
話してしまったんですね。
永田 ていうか失礼すぎます。
アメリカなら訴訟問題ですよ。
糸井 オトナ気なかったと反省しています。
西本 しかし、うらやましいです。
糸井 あなたも一度遭遇してるんでしょう?
西本 いや、それはそうですが、
あのときは、芹沢鴨が暗殺されるあたりの
数回を見ただけの状態でしたからね。
いまや、全エピソードを観ているわけで‥‥。
永田 あ、そのあたり、報告しておきましょう。
糸井 ぼくは先々週に、観逃していた
第24回までを観おえています!
西本 ぼくも先週観おえました!
永田 ぼくは三連休をつかって
17回まで観ました!
はい、報告終わり。どうぞ。
西本 というような状態になるとですね、
お梅に対するイメージも違うでしょう?
ふたり 違いますねえ。
西本 ぼくが遭遇したときは、
「あ、芹沢鴨といっしょに殺されちゃう人だ」
くらいの印象だったですけど、
あの色っぽい演技を先に観ておけば
ぜんぜん違った印象だったはずなんです!
糸井 その点、ぼくは観たうえですからね。
西本 ああ、それはぜんぜん違う!
永田 どうだったんですか。
糸井 危ないなと思って
それ以上は話しかけないようにしました!
永田 え? たぶらかされちゃうから?
糸井 そうそう。誘惑されちゃうから。
永田 バカバカしい。
西本 いや、気持ちはわかります。
ぼくはむしろ、いまお会いできたら、
鶴の折り紙をわざわざ折って自分で落として
拾ったりもしますよ!
永田 意味わかんない。
糸井 「落ちましたよ」って?
西本 そうそうそう。
出窓の格子のところを
行ったり来たりしますよ。
永田 どういう役割なんだよ、それは。
西本 格子のところで
「階段を下りる人のマネ」
とかしちゃいますよ。
永田 小学生か。
糸井 つまり、あなたは、
芹沢というより沖田になりたいと?
西本 いや、もう、お梅が好きだと!
ふたり わはははははは!
西本 ていうか、お梅を嫌いな人って
そんなにいないでしょ?
糸井 ぼくは嫌いですね!
だって、危ないじゃないですか。
あの色気はウエポンですよ、ウエポン。
永田 「ウエポンお梅」(笑)。
西本 壬生の方々も
ころころ手玉にとられてましたからね。
糸井 あれはたいへんでしょう。
とにかくね、危ない!
深雪大夫とかはね、大丈夫だと思うんですよ。
たのしくお話ができると思うんですよ。
けど、お梅は危険ですよ。
西本 いえてます、いえてます。
永田 しかし、せっかく『新選組!』を
みんなで1話から観たというのに、
そろって話すことが「お梅再評価」ですか。
三人 (笑)
西本 本編に入るまえにぼくも違う話をひとつ。
ふたり どうぞどうぞ。
西本 先週、糸井さんが非常識なほど
まいど豊さんのことを話したじゃないですか。
そしたら、金曜日、前回の
「ほぼ日テレビガイド」
が掲載されてすぐ、
まいどさんが所属されている
東京ヴォードヴィルショーから
連絡がありまして、
「なんだか知りませんが、
 とにかくありがとうございました!」と。
糸井 そんなことが(笑)。
永田 感謝というよりは戸惑いじゃないですか。
あと、読者の方からの
まいどさん情報もたくさん来ましたね。
糸井 ぼくはさっそく、
まいどさんが出ている舞台の
DVDを購入しましたよ。
ふたり 早っ!
糸井 あとさ、先週の女子部で、
斬られるまえの谷三十郎が
「テレビの音声さんみたい」
ってのがあったじゃない?
先週の放送を観なおしたんだけどさ、
ほんとに音声さんの待ち合わせみたいなんだよ。
あれは吹いたなぁ。
永田 読者としてたのしんでますね。
西本 さらにもうひとつ。
なんと、ひで役の吹石一恵さんからも
「ありがとうございました」という
メールをいただきました!
永田 感激しました!
糸井 ありがとうございます!
永田 さあ、いい加減に本編へ入りましょう。
糸井 今回はまず、オープニング前の
カマキリ将軍がすごかったですよ。
あの二転三転ぶり!
永田 たしかに、すごかったですけど、
糸井さん、笑いすぎ。
はじまっていきなり
ケラケラ笑ってんだもんなあ。
糸井 ごめんごめん(笑)。
2回目は、知ってるもんだから、
いっそうおかしくなっちゃってさ。
西本 いきなり脱線しますが、
「カマキリ将軍」のあだ名は
あっという間に市民権を得ましたね。
永田 読者の方が、ふつうに
「カマキリ将軍ですが‥‥」って
使ってましたからね。
西本 「メガネノオカッパ」以上の反応です。
永田 ファンの方からの情報も
たくさんいただきました。
今井朋彦さんという俳優さんで、
やはり実力派の方だということです。
西本 あの存在感ですもんねえ。
永田 たくさんの情報、
ありがとうございました!
糸井 で、あのカマキリ将軍さんだけどさあ。
ふたり はいはい(笑)。
糸井 あの短時間に、三段落ちみたいなものを
顔と態度だけで表現してるんだよ。
あれは、すごいよ。びっくりするよ。
そのへんの感情がかたまりになって、
なんかもう、おかしくってさ(笑)。
「すごい!」と思って、
さっきもう一回あらためて観てみたら
‥‥芸術だね。濃かったわあ。
永田 「戦地に行くぞ!」
「やっぱ行くのやめるぞ!」
「将軍になったぞ!」
西本 そうとうな情報量ですよ。
糸井 だって、先週の回では
戦略的に断るだのなんだの言ってたんだからね。
それがあの、二転三転(笑)。
永田 なんか、もいっかい観たくなってきた。
西本 オレもです。
糸井 ちょっと観てみる? もいっかい。
永田 いいですね。いままでにないパターン。
西本 それでは。
(リモコンの再生ボタンを押す)

『ドコドコドンドン!
 パラララララララ〜、
 チャカチャンチャッチャ!』
長州攻めのさなか将軍家茂が急死した!
7月26日、一橋慶喜は
徳川家宗家相続を了承した!
「出陣する! 余が自ら采配をふる!
 兵たちの士気もあがるに違いない!
 どうだ!」
「これ以上の励みはありません」
「この戦なんとしてでも勝たねばならん!
 これは亡き家茂の弔い合戦である!」
8月8日、参内した慶喜に対し
孝明天皇はすみやかに
追悼の功を奏すべしとの
勅命を与えている。しかしその3日後。
幕府軍の一部が戦線を離脱したという
知らせが京に届くと‥‥。
「出陣はヤメだ」
「しかし、長州征伐は‥‥」
「とりやめじゃ!」
「それはなりませぬ」
「今は国内で日本人どうしが
 戦っている時ではない。
 家茂公が亡くなられたことは
 いいきっかけである!
 余の申すことに間違いはあるか!」
徳川慶喜はたびたび前言を翻しながらも
その年の12月5日、
ついに第十五代将軍となった。
ところがそれから20日後、
暮れもおしせまった12月25日。
孝明天皇の突然の死が‥‥。
今でいう天然痘とも、
何者かに毒をもられたともいわれている。
「帝がっ!」(近藤、うなずく土方)
幕府、松平容保の最大の理解者であった
孝明天皇の死。時代の流れは幕府の崩壊へと
一気に加速度を強めていく」
『チャンチャラララランランラ〜♪』

三人 すげーー(笑)!
糸井 こ〜の、短い時間でさあ、
こんだけぐらぐらに揺さぶる展開。
永田 いやあ、濃密だわ。詰め込んでる。
西本 歴史的にいっても、
かなりの重さがありますよね。
糸井 芸術的だろ(笑)?
永田 ていうか、第1回から
あらためて観て思ったんですけど、
最初のころって、ここの部分、
前回のお話を振り返るだけなんですよね。
ところが、ここんところの充実振りというか
完成度はすごいものがありますよ。
西本 たぶん、このオープニングを
つくるためだけに
命をかけているやつがいますよ。
糸井 伸び盛りの若手かなんかでね。
永田 きっと、この部分に呼び名があるんですよ。
「ハタノアト(旗の後)」とか
「ウタノマエ(歌の前)」とか。
西本 「今週さあ、慶喜がさあ
 『行く』つって、『やめる』つって、
 将軍になって、帝が死ぬんだけどさあ。
 それぜんぶハタノアトにできる?」
糸井 「ハイ、やるッス!」
三人 わははははははは。
糸井 それを成立させてるのが、
あのカマキリ将軍さんですよ。
ほとんど顔だけで表現して、
納得させてるからね。実力者だよねえ。
あんな迫力のある人そうはいないよ。
あんなに前言を翻しているのに
偉そうじゃん!
永田 あと、容保公が、微妙に
将軍に突っ込んでるのがおかしい。
「それはなりませぬ」って、
けっこう大胆発言(笑)。
西本 それでも開き直って、
ぜんぜん違うこと言い出すカマキリ将軍。
周囲は困りますよねえ。
糸井 将軍というものの身勝手さが
いかんなく表現されてますよね。
服装もカメラアングルも
ほとんど同じなんだけど
ちょっと落ち込んでいる顔と
ニヤッと笑う時の顔の違いなんて
見事でしたね。
西本 ええ、すごいです。
永田 あと、これはまあ、
こちらの勝手なおもしろがりかたですけど、
負け戦になって落ち込んでいるとき、
将軍が着てた羽織の色が
‥‥カマキリ色でしたよね?
ふたり わはははははは。
糸井 あとね、いま観直して、
ぼくはひとつ重要なことに気づきましたよ。
これはちょっと歴史的な発見かもしれない。
ふたり なんですかなんですか。
糸井 いわばぼくは、時空を超えて
歴史的な推理をしたんです。
ふたり なんですかなんですか。
糸井 ‥‥コホン。もしも、孝明天皇に、
毒を盛ったやつがいたとしたら‥‥
そいつは日本人だね! 西洋人じゃない!
永田 は?
西本 は?
糸井 なぜなら! 
孝明天皇が死んでいる日が、
クリスマス!
永田 は?
西本 は?
糸井 聖なるクリスマスに、
西洋人が暗殺を企てるわけがない!
永田 ‥‥ていうか、外国人が、帝に、
毒は盛らないと思いますけど。
西本 めちゃめちゃ目立ちますよ。
御所をヒュースケンみたいなやつが
ウロウロしてたら。
糸井 うるさい。
時空を超えた推理なんだから
細かいこと言うな。
永田 時空を超えた推理は置いといて
真面目なことを言いますが、
ここでああいう将軍の姿を見せるというのも
三谷さんの演出のひとつですよね。
っていうのは、これも、最初のほうを
観たから言えることなんですけど、
これまでは将軍の顔や姿って
まったく見えてないんですよ。
近藤たちが京都に来てすぐのときに、
人垣の向こうに、槍の先っぽが見えるだけで。
だから、近藤たちは、すごくデカい存在である
「うえさま」という人に対して尽くしてきた。
ところが、ああやって顔が見えてしまうと、
近藤たちが死ぬ思いをしてがんばっているのは
あのカマキリのためだ、
ということになっちゃうんですよね。
糸井 新選組の意義を薄くしていく演出ですよね。
三谷さんは家茂公はかたくなに出さずに、
「うえさま」という記号にしてたわけだ。
それが突然、カマキリだからね。
西本 どうでもいいですが、
ふたりとも「将軍」をつけてください。
それじゃただの虫ですよ。
ふたり これは失敬。
糸井 本編の話をすると、
今回は甲子太郎ですよね。
権謀術数ぷりがすごかった。
ぼくはもう、ますます好きになりましたね。
西本 完全に「ヤなもん好き」の
領域に入ってますね。
糸井 気になるようにできてますよ、あの役は。
見事だと思います。
永田 甲子太郎といえば、今回のポイントは
あの、絨毯(じゅうたん)ではないかと。
西本 ああ、ぼくもそこは言いたかった。
糸井 んん? なんですか?
永田 甲子太郎が斎藤と永倉を迎える席が、
すごくおかしな部屋なんですよ。
あの、赤い感じも独特なんですけど、
とくに象徴的なのが絨毯。
あれによって、
伊東甲子太郎が座っている場所が
「伊東甲子太郎の世界」
みたいになっているんですよ。
西本 伊東甲子太郎座っている場所だけ
絨毯なんですよね。
斉藤や永倉が座っていたのは畳で。
糸井 変に西洋を取り入れているんだ。
永田 ええ。それが近代的な感じというよりは
うさんくさい感じなんですよ。
糸井 なるほどねえ。
永田 甲子太郎は今回に限らず、
なんか、つねに自分の場所を築いて、
そこから動かないみたいな
イメージがありますよね。
いっつも地の利を考えているというか、
蜘蛛の巣の真ん中から動かないというか。
自分だけが居心地のいいところに
いるみたいな。
西本 あの絨毯はその典型ですね。
本人だけニコニコしてて。
糸井 「‥‥プリーズ」。
西本 「プリーズ・ゴー・ホーム」。
永田 メガネノオカッパ、
かわいそすぎませんか!
糸井 かわいそうだけど
メガネノオカッパは近藤勇なんだから。
そういう危うい人たちの集まりなんだよ。
かわいそうだけど、
河合を殺したわけでもあるんだし。
でも、まあ、しょうがないんだけど、
かわいそうだったね。
「‥‥ボンジュール!」
永田 あの「ボンジュール」にしても、
そうとうがんばって勉強したんだろうなあ。
外国語なんて、ほんとうは嫌いなはずだから。
糸井 しかも、伊東と張り合うというか
こびるために言ってるわけですからね。
「ギブミーチョコレート」に近い
「ボンジュール」ですからね。
永田 ある意味、商売敵ですからね。
古くからの兵法を教える身としては。
西本 でも、ルックスから何から
正反対なふたりですよね。
共通しているのはうさんくささだけという。
糸井 もういっそパーマとかかければ
よかったのにね。あのオカッパに。
「西洋ではこのようにするようですな!」
って言ってさあ。
西本 バッハみたいな頭で。
永田 そういや清河八郎は
ちょっと天然パーマでしたよ。
西本 あ、そうだったそうだった(笑)。
糸井 ああ、いまやぼくらは、
そんなコトも言えるんですね。
西本 なんせ第1回から観てますからね。
清河八郎のことも勝海舟のことも
引き合いに出せますよ。
永田 縦横無尽にいきますよ。
西本 いま京都に行くとなると、
観たい場所も変わってきますよね。
清河八郎が演説した新徳寺とか、
かなりないがしろにしちゃってたもんなあ。
糸井 してたねえ。
ちらっとのぞいただけだったもん。
西本 ある意味、新選組がはじまった場所だったのに。
永田 「私は京に残ります!」と近藤。
糸井 「オレも近藤くんに賛成だ」と鴨。
西本 「う〜ん‥‥ばたーん」と倒れる上総介。
ふたり そりゃ江戸だよ!
西本 なにしろ、ものすごい勢いで観たので
ごっちゃになってます。
永田 話を甲子太郎に戻しますけど
自分の首筋に刀を向けるあの行動は、
どうですか?
「おまえら、近藤にしゃべると、
 オレの命はないぞ!」みたいな。
そんなんありかよ、って思ったんですけど。
糸井 あ、あそこはぼくはね、
切腹の様式じゃないというのが
すごくおもしろいと思ったんだよ。
永田 ああ、なるほど。
糸井 つまり、甲子太郎という人の
けれん味を出している演出なんだよね。
こういうことをするやつだという演出。
あれがふつうの人物だったら、
「おまえらがしゃべるのなら
 オレは腹を切る!」と言って
バババッと服を脱ぐんだろうけど、
それをやっちゃうと
後に引けなくなるじゃないですか。
ところが、首筋に刃を当てるのは
あとに引けるんですよ。
伊東はいつでもそういう、
独特の駆け引きの能力を持ってますよね。
そういうふうに三谷さんが
書いてるんだと思いますけど、
いろんな演出の積み重ねで、
ものすごく完成度の高い
役どころになってますよね。
たとえばあのときのやり取りにしても、
左之助を完全に無視してましたよね。
つまり、こいつが近藤に言っても、
べつにかまわないんだということですよね。
永田 そもそも近藤と土方なら、
だいたい察しがつくだろうと
伊東もわかってるでしょうしね。
斎藤と永倉が証言しなければ、
自分は生き残れるという算段ですよね。
糸井 うん。だから、伊東に関しては、
悪く思わせるような細かい演出が効いてるから
すごく悪い人のように思えるけども、
存在としてはぜんぜん悪くない人だとも
いえるわけですよね。
かいつまんで言うと、間違ってないわけです。
刀を首にあててみたり、
一首詠んでみたりという細かい演出で、
「なんかこいつは本当じゃないな」
というところに振ってますけど。
そういう描き方って
かなり難しいと思うんだけど
うまくできてるよね。
永田 その意味で完成度が高いと。
糸井 そうそうそう。
西本 言っていることはたいてい合ってますしね。
少なくとも、理屈ではその通りなんですよね。
糸井 新選組を離れることを
認めさせるところも、
憎らしいほどでしたよ。
「我らは墓を守るんです」ってさあ(笑)。
永田 あれって、もう、オトナ語ですよね。
「こう言っとくほうが、
 うちも先方も話通しやすくて
 楽なんだから!」って。
糸井 そうそう(笑)。
永田 だから、伊東は、現代人っぽいんですね。
自分の場所では強く振る舞って、
行動そのものよりも、行動の大義名分を考えて、
根回ししてみたり、いざとなったら
自分を斬るようなマネをしてみたり。
関係ないやつにはまったく
見向きもしなかったり。
だからきっと、書き手が変わると
伊東甲子太郎の役って
ぜんぜん違うんでしょうね。
糸井 立派な人として成立しますからね。
人を騙すというような要素を
どれくらい混ぜ込むかで
よくも悪くもなりますよ。
西本 ここでの伊東は、
近藤勇の「まっすぐさ」の
対極として描かれているので
ああいう、うさんくさい人に
なってるわけですね。
糸井 それを象徴する
ぐっさんのいいセリフがあったじゃないですか。
「あんたも近藤さんも
 同じように国を思っているけれど
 近藤さんは人を信じている。
 あんたは人を信じない。そこが違う!」と。
永田 その伊東に、「まっすぐ」な平助が
くっついていくっていうのが、
イヤな構造なんだよなあ。
そういうイヤな構造にしてるわけだけど。
流派って、重いもんなんだなあ。
西本 まあ、会社の派閥みたいなもんでしょう。
「なんでそんなに気にするの?」って
外から見ると思うけど、
当事者の感覚は違うでしょうし。
永田 なるほどね。
多摩編を観てるととくに思うんだよなあ。
平助も試衛館ならよかったのにって。
西本 そうっすね。
永田 近藤さんは
「つらくなったら帰ってこい!」
って言ってたけど‥‥。
西本 あそこ、グッときてたでしょ?
ふたり (ドンっと机を叩き)
グッときましたよ!
西本 失礼しました。
糸井 でもあそこは最後に
イヤ〜な矛盾ができてましたよね。
土方と伊東側の取り決めで、
帰ってこれないことになったじゃないですか。
あのあたりはこれから効いてくるんでしょうね。
永田 そうなんですよ。
斉藤も戻ってこれないですよね。
西本 あのとき、土方もめずらしく
「しまった」という顔になりましたよね。
永田 ヤだなあ。絶対伏線だもんな。
糸井 いよいよこれから、一話、ひとりづつ、
看取っていく感じになるんでしょうね。
西本 来週はメガネノオカッパかな。
そういえばおゆきも死んじゃいましたよ。
永田 ああ、ひっそりと亡くなってましたね。
糸井 あそこ、死んだんだなってことが
源さんの寂しそうな芝居でわかったよ。
西本 あのあたり、ちょっと間延びしたというか、
バランス悪かったような気がしました。
なんか、長々と灯籠だけが映っている
シーンがあったりして。
なんというか、どこかのシーンがなくなって、
編集のバランスが変わったのかなと。
おゆきの妹の存在も
曖昧なままになってますしね。
糸井 そういやさあ、おゆきの妹と
間違えられた女の子がいたじゃないですか。
ぼくはあのくらいの役を狙っていたんですよ。
永田 は?
西本 ひょっとして、もしも
『新選組!』に出るならという話ですか?
糸井 そうそう。
永田 まだ言ってたのか!
糸井 うん。まさにあの役がベスト。
というか、あの役がよかった。
セリフや段取りがあるとイヤだし、
かといって、斬られるだけとか、
通行人とかでもイヤだし。
ああやって、一瞬だけど注目されて、
「なんだよ」で終わるという、
あの役がよかったんだよなあ‥‥。
永田 そういう世迷い言はさておき、
あの役の女の子のキャスティングって
じつはそうとうむつかしくないですか?
西本 ああ、あれはたいへんですね!
だって、存在感がありすぎても
なさすぎてもダメですから。
糸井 そうか。キレイすぎてもダメで、
キレイじゃなさすぎるのもダメだ。
永田 そうそう。優香以上の、
「超美人!」ってんじゃダメだし‥‥。
西本 パッと顔みたら、おてもやん、
みたいなことだとコントになっちゃう。
青木さやかみたいなキャスティングだと
余計な演技が入っちゃうでしょ?
永田 とはいえ、関係者の目に
とまるようなきっかけが必要で。
オーディションがあったとすると、
そこに出られるようなコネが必要で。
糸井 「オレはあの、
 おゆきの妹に間違えられた娘が、
 じつは好きなんだよ」
っていう人が、ちょっとくらいは
いてくれないとダメでしょう?
永田 かといって、い過ぎても困りますよ。
西本 わっ、すっごい微妙ですよ、あの人。
永田 ある意味、才能のある人だ。
糸井 だいたい、あの役を与えられて、
うれしいんだか、なんだかわからないね。
永田 あれ、クレジットには
なんて出るんでしょうかね?
西本 「偽おこう」とか?
永田 「おこうもどき」とか?
糸井 「不こう」ってのはどうだ?
西本 でも、プロフィール欄には
「大河ドラマ『新選組!』に出演」って。
三人 微妙!


ほぼ日テレビガイド
〜女子の部〜



モギコ
むむむむむっ!
男子部のやつら、甘い!
今週も甘いぞ、皆の衆!

ナカバヤシ
なまじ最初から観直してるもんだから、
話があっちこっち行ってるんですよ。

ゆーないと
ていうか、カマキリさんが
よっぽど好きなんだな。

モギコ
あいや待たれよ!
そのような分析よりも、
我らの感想をば!

ナカバヤシ
モギさん、ことば変ですよ。

モギコ
そーなのよ。最近、日によって、
ことばがメチャクチャになるのよ。

ゆーないと
昨日は一日中、なぜか訛ってましたね。

モギコ
そーなのよ。
「お昼どうする?」って訊かれて、
「パン屋」って
ふつうに答えたつもりだったのに、
「エンヤ」みたいな発音になっちゃってさ。

ナカバヤシ
そんなことより、感想です。

ゆーないと
先鋒、つとめさせていただきます!

ふたり
どうぞどうぞ!

ゆーないと
左之助が、マイ箸を持参!
エコロジストか
食いしん坊か!

ナカバヤシ
それ、気になりました!

モギコ
ぜんぜん気づかなかった。

ナカバヤシ
続いて私のチェックポイント。

ふたり
どうぞどうぞ。

ナカバヤシ
山崎の変装は
あれでいいのか!
めちゃめちゃ舞ってたぞ!

モギコ
ああいう場では、あれがいちばん
目立たないってことじゃん?

ゆーないと
でも、あれッスよね、
どこか、人の来ないような場所に、
こそっと入って、着替えて、
ほっかむりとかもして、
舞いながらそこを出て行くんですよね。
で、情報を仕入れたら、舞いながら帰って、
またどっかで着替えるんですよね。
そういう「舞いの前後」を考えると‥‥。

ナカバヤシ
たいへんな仕事ですよね。

モギコ
ラスト、いかせていただきます!

ふたり
どうぞどうぞ。

モギコ
本編終了後の、
犬がわんわん鳴く
ご当地情報のところ!
なんで龍馬やねん!
なんで乙女やねん!

ふたり
思った思った超思った!

モギコ
だよねー。

ナカバヤシ
当初の予定がくるったのかな。
それとも、だいたいの感じで
取材だけ先にしてるのか、
単純にネタがなくなってきたのか。

ゆーないと
‥‥あの、ちょっといいですか?

ふたり
なんですかなんですか。

ゆーないと
最近、このコーナー、
男子部みたいになってません?

ふたり
ドキッ!

ゆーないと
こんな、細かいことを
報告し合う私たちでしたっけ?

モギコ
お、沖田!
平助との場面はもちろん、
医者に向かってふすまの影から、
首を振る場面の沖田が、
よ、よかったよね!

ナカバヤシ
ひ、土方さん!
画面に映ってない捨助を
にらむところが、
持ち味出てて、よかったですよ!

ゆーないと
そういや、
甲子太郎の目張り
最近濃くなってません?

ふたり
細かいこと言うな!


ほぼ日テレビガイド
〜美術部〜



ほぼ日テレビガイド
〜読者の部〜

(印象的なメールを毎週一通紹介します!)

=
この芸達者な俳優陣の別の面も観てみたい!
もちろん、今回の配役がベスト、
と重々わかったうえで、
「短編 ある日の新選組」みたいな、
独立エピソードでの番外編を
オリジナルとは異なる、入れ代わり配役で。
例えば‥‥‥‥。

■近藤‥‥山口智充
(女好きで、すぐ舞い上がる直情型の局長を見たい)
■土方‥‥オダギリジョー
(もっと積極的に動いているところを見たい)
■沖田‥‥堺雅人
(壬生義士伝での、人切り魔みたいな不敵な微笑と、
 あのイカれた目をまた見たい)
■山南‥‥谷原章介
(素晴らしいルックスで、皆に好かれる役を
 どのように演じるか、見てみたい)
■斉藤‥‥中村勘太郎
(律儀で情に厚い、真面目一本やりの
 さわやか斉藤を見てみたい。)
■原田‥‥山本耕史
(史実の人はもう土方しかやりたくないと言いながら、
 ご本人自ら左ノ助の役も面白そう、
 とお気に入りなので)
■永倉‥‥香取慎吾
(曲がったことが大嫌いで、
 今度は苦悩しなくていい役!
 永倉・原田ペアをこの2人で見たい)
■藤堂‥‥藤原竜也
(沖田との比較に悩み、
 品のある平助を如何に見せてくれるか。
 堺沖田とつるんで遊んでほしい)
■井上‥‥照英
(皆の心の支え、源さんを、
 抑えた演技でみせてくれることに期待)
■島田‥‥中村獅童
(180度違った獅童さん。ゆったりと朴訥に
 いい味を出してくれることに期待)
■山崎‥‥小林隆
(実直で、存在感を消す役を演じたら
 天下一品の小林さんに、
 間者として活躍してほしい)
■伊東‥‥山本太郎
(真面目で憎らしーいのを一つ。
 太郎さんの別の面を見せてほしい)
■武田‥‥桂吉弥
(アクの強いキャラも
 実はお得意なのでは、とみました)
■捨助‥‥八嶋智人
(アクの強いキャラが
 本当にお得意なのでは、とみました)

まあこんな話は現実的には無理としても、
今年の大河は、
「最終回を見届けるまでは、絶対に死ねないな。」と
今までにないことを意識してしまった程、
特別なドラマなのでした。
長くなりました。
昨日も平助と沖田に泣かされながら、
男子部総長も泣いてるかなあ、と思った次第です。
(プクポン)

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2004-10-15-FRI

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