今泉さんからのメール

>てんちょーイズミ(仮)さん

はじめまして。
日記(メルマガ含め)楽しく拝見しています。

今日、テントストアで
(テントありませんでしたけど)
お試しセットを購入しました。

トラックストアとテントストアの何が違うのか、
買ってみるまであまり考えた事は
無かったんですが
(暇も無かったんですが)
正直言って、テントストアは厳しいなぁ、
と思いました。

私がいつも利用する駅の改札前には、
いつも何かしらの臨時ショップがあります。
靴だったりCDだったり
沖縄グッズだったり。
私はこの駅を使うようになって
4年になりますが、
SKIPストアは今まで見た中で最も地味で、
且つ「何を売っているのかがわからない」ショップでした。
野菜が並んでいるんだから
見ればわかるだろうと思われるでしょうが、
「何故ここにこんな高い野菜があるのかがわからない」
という情報しか無いショップだったのです。
これは情報じゃないと思われるでしょうが、
普通に通り過ぎる人にとっては
立ち止まる理由が無く、
たまたま立ち止まった人にとっても
前述の「情報」しか得られない、
ということです。

売場にいた女性の皆さんは
野菜の良さをずーっと声に出していましたが、
改札の前では基本的に人は通り過ぎていくので
その人の横を通った時の一瞬の声しか
耳には残りません。
ではたまたま立ち止まった人には
どういう情報が残るのか。
個別の野菜や果物には
「生で食べてもおいしい」といった
カタログにあるような言葉が
書かれた札がありますが、
どういうつもりで
この値段の野菜を売っているのかが
全然わからないんです。
安い野菜かと思って見てみたら、
近所のスーパーよりずっと高い。
しかも、それが何故高いのかよくわからない。
商売になっていないと思いました。

私はずっとこの取り組みに関心を持っていたので、
近所で売ってくれる、
というのが嬉しかったんですが、
ここ数日、野菜を買っても食べる暇が無かったので
今日になってやっと、
ゆっくり見てみました。
美味しいということ、
永田さんのこだわりが
詰まっているということ、
これを事前に知っていて立ち止まったわけですが、
脈絡無く並ぶ果物や野菜を目の前にして、
一体何を買ったらいいのかと悩みました。
今日の晩ご飯も決まっていないし、
今日はどれが美味しいのか、
お勧めなのかもわからない。
どれを買ったらいいのかがわからなかったので、
悩んだ末にお試しセットを購入したわけです。
ジャガイモとかタマネギとかニンジンとか、
全部入ってるけどどうしよう、
という思いを抱きつつ。

家に帰って、まずミカンを食べました。
一緒にいただいたカタログには
「皮ごと食べられる」とあったので
そうしてみました。
食べられるなぁ、とは思いましたが、
ミカンを皮ごと食べたのは生まれて初めてで、
私にとっては「食べられるなぁ」というだけで
美味しいと言えるほどのものではありませんでした。
次にバナナを食べてみました。
普段食べるバナナより固いな、
と思いましたが
特別美味しいというものでもありませんでした。
それよりも、
このバナナはどこで作っているのか、という
疑問がわきました。
わからなかったので。
更に、カタログに
「なすを縦に割り、
 手に塩をつけてギュッと絞れば」
とあるのでその通りにやってみました。
なすが甘いのはわかりました。
でも、なすをこうやって食べた事が無いので
違いはわかりません。
そして、甘いとは思ったけれど、
そのまま1本食べるほど
美味しいとは思えなかったので
途方にくれました。
仕方が無いので
テンメンジャンで炒めてみました。
ここで初めて
「ベタッとならない」という意味がわかりました。

書いている内容が細かいと思われるでしょうが、
私は現在「はなまるマーケット」という番組で
「はなまるアナ」という仕事をしています。
全国の主婦が興味を持っていることを
スタジオの岡江久美子さんやヤックンに説明するという形で
全国の皆さんに伝える仕事です。
今朝は銀ダラについて
全国の皆様にいろいろと話していました。
まぁとにかく、
食べ物などについて全国の主婦に説明する、
というのが仕事なわけです。
しかも生放送で1回こっきりですから、
情報の内容についてはかなり吟味します。
私は何を売っているわけでもないのですが、
「今日やっている事の良さをわかってもらう」
という事を
念頭において仕事をしています。

そんな仕事をしているので、
イズミさんの日記や、SKIPのサイトで、
永田さんの野菜や果物については
理解しているつもりでした。
でも、一消費者の立場で買ってみたら、
実はわからない事だらけだったのです。

まず、テントストアについて。
トラックストアは、
車そのものがのぼりのようなものだし、
イベントのようなものなので
(イズミさんを見てみたい、
 という人も多いと思うんですよ)
来る人が得ている情報や、
通りがかった人が持つ興味は
おのずから多いわけです。
でも、テントストアには情報がありません。
のぼりも無いし、
ディスプレイも地味で、
早い話が「何屋さんだかわからない」のです。
今ここには野菜が並んでいるけれど、
これはどんな野菜なのか、
というのを
理解させる明確なツールが必要だと思います。
「安全」なのか「美味しい」なのか、
なんでもいいんですが、
とにかく一目でそれがわかって、
立ち寄ってみようかと思わせられるもの。
のぼりでもポスターでもいいし、
「試食」もひとつの手です
(ただし、比較対照が必要ですが)。
それから、その日の売りになるものは何なのか、を
もっと明確にした方がいいように思います。
八百屋さんや魚屋さんと一緒です。
「奥さん、今日はこれ買っていってよ!
 ちょっと高めだけど美味しいんだよ!
 これだけじゃなくてみんな美味しいんだけどさ!」
というような。
これから知ってもらおうという時に、
全部を同列に並べられても、
私達は全部を買おうとはなかなか思わない訳です。
だったら、今日はとにかくこれを買ってくれ、
というプレゼンテーションがあった方が
買う方も楽なんですよね。

カタログについては、
「八百屋さん向けのカタログみたいだ」
という印象を持ちました。
私は仕事柄、港や畑で取れたてのものを
食べる機会が多々あります。
北海道の厚岸湾の船の上で、
今引き上げたばかりのカキを食べたりとか。
それは、そこに行ってその状況で食べたから
「あぁ、やっぱり違うね」
と思えるものであって、
それと同じだけの新鮮さを持つカキを
家に持ってこられても、
同じ感動は得られない訳です。
SKIPのカタログについて、
私が致命的に間違っていると思ったのは、
「生で食べてみて下さい」がベースにある、
という事でした。
生で食べるのが当たり前の野菜や果物であれば
それもいいと思いますが、
なすを塩もみで、とか、
ほうれん草をぜひ生で、
というのは1回の特殊な体験に過ぎません。
でも、家庭の主婦は、
毎度毎度なすやほうれん草を
そのまま食卓には出せません。
「そのままで」を強調すると、
調理するのが惜しいような感覚を与えます。
そして、調理したら
どういう違いがあるのかがわからないので、
生で食べないんだったら
いつものでいいや、と思ってしまいかねません。

「生で食べてみて下さい」というのは
畑でかぶりつく時に有効な言葉です。
家で食べる時には何らかの調理をする訳ですから、
具体的な調理法を提示しなければ
「家でやってみよう」とはなかなか思えません。
「味付けするのが惜しい」と思われたら、
家で食べる野菜としては、
ある意味成立していない訳ですから。

最近の主婦は、
親から料理を教わらないまま主婦になります。
私はそこそこ料理が好きですが、
番組をやっていて、
若い主婦からの問い合わせが
細かいのに驚きます。
つまり、大さじ1なのか2なのか、
火にかけるのは3分なのか5分なのか、
という部分にやたらとこだわるのです。
そんなものは加減してくれよ、と言いたいのですが、
(そして料理とはそんなものなのですが)
お母さんの横にいて、
お母さんが「いい加減」で
作る料理を見た経験が無い為、
正確なレシピが無いと
料理が作れないという人が本当に多いのです。

そんな人達にあのカタログを渡しても、
多分ポカンとしてしまうでしょう。
若い主婦の皆さんが欲しいのは、
SKIPの野菜を美味しくいただくための
美味しいレシピ、だと思います。
生でも食べられる、というのは
とっかかりの情報ではあるけれど、
家庭で食べる場合には
主婦にとっては大した情報ではありません。
料理して変わらないのなら、
主婦は安い野菜を買うでしょう。
いくら本物を打ち出しても、
生で食べた事が無い人にはわかりません。
「こうすれば美味しいし、
 今までの野菜とは違うよね」
といった部分をもっと明確に出さないと、
主婦にはなかなか継続的に手が出せないと思います。

こういう事はすでにマーケティングの部分で
話し合われている事なのかもしれませんが、
少なくとも私なら、あのカタログは作り直します。
料理研究家の先生と一緒に
そのままの素材を活かしたレシピと、
特製を活かしたこだわりレシピを
作って載せるでしょう。
SKIPの野菜だからこの料理が
こんなに美味しくできますよ、
あまり手をかけなくても、
こうすればすぐに美味しく食べられますよ、
そういう部分をきちんと出したものを
作った方がいいと思います。

私は皆さんの取り組みを
否定している訳ではありません。
ただ、あまりにも生産者側の苦労に
情報が偏っているな、
という印象を持ちました。
いくら高くても、美味しければ
好きな人は買ってくれます。
そのためには、
料理として一番美味しい食べ方を
提案しなければ。なすに塩つけて握って、
というのは
今までのなすと比べて初めてわかる事であって、
決して魅力的なレシピにはなっていない、
ということです。

長々と生意気言ってすいません。
でも、私、ずっと見ていて、
いつか食べる日を楽しみにして
いたので今日の失望は結構大きいものでした。
そして同時に、
課題も可能性も見えたんですよね。
私の仕事は万の単位の視聴者に
プレゼンテーションをする訳ですから、
本当ならこういう野菜を万の単位の人に知って欲しい。
でも、現状では正直言っていろいろと
難しいな、と思いました。
一意見として、
参考にしていただけたら幸いです。

道は険しいけれど、
決して行き止まりじゃないと思います。
応援しています。

今泉清保