三谷龍二さんのあたらしい場所。[10cm日記]
 


9月18日
外壁
ずっとブルーシートに覆われていた外壁も、
ようやく板壁を張る段階になりました。
ブルーシートがいつまでも、
とおっしゃっていた大家さんも、
これでひと安心かも知れません。
毎日見ているのですから、
そのお気持ち、よくわかります。
 
ここの外壁を縦板張りにしたのは、
煉瓦積みの前部分との繋がりを考え、
縦に板を張った方が素直で、
収まりがいいように思ったからです。
それに古い日本の家を見ると縦張り板壁も多いから、
そうした点でも相性がいいように思ったからです。
そうはいっても、門外漢の身、
この外壁はどういう風に答えを出すのが
本当は正しいのか、と考えはじめると、
ちょっと手に負えなくなってきます。
でも縦張りはそれ自体きれいですから、
とにかくそう決めた、という感じでしょうか。
 
現場を眺めていて、そういえば小学生の頃、
建築中の建物を見るのが好きだったことを
思い出しました。
通学途中でこんな風に建築中の家があると、
大工さんが働く様子や現場の雰囲気みたいなものを、
よく立ち止まって見ていました。
夕方通りかかると、すでに働いている人が帰っていて、
誰もいないようなこともありました。
そうした時はそっと近づいてシートをめくり、
中の様子をじっくり覗いたりしました。
なんだかワクワクするようなものが
建築現場にはありました。
普段見ている家の様子と全く違っているからでしょうか。
柱が幾本も並び、
高いところには剥き出しの屋根板が見えます。
床には工具や見たことのない機械が
きれいに整頓されて置かれていて、
胸躍るものがありました。
削り立ての木の香り。
舞台裏のようなざらざらした空気感。
僕はよく脚元に落ちている木っ端を二、三個拾い、
その現場の空気を持ちかえるように、
手に抱えて帰りました。
 
もうひとつ、こんな風に家に関心があったのは、
恐らくその頃の僕の家が、
狭いアパート暮らしだったからだということを
思いだしました。
もちろん子供部屋もなっかたので、
家に、一戸建ての家に、
あこがれのようなものを抱いていたのだろうと思います。
同じ頃、僕は授業中よくノートの端に
間取り図のようなものを描いていました。
子供の頃のことですから、
とくに建築に興味があったという程ではないのですが、
もしも自分の家がこんなだったら、と思い描きながら、
落書きをするのが好きだったのです。

2010-10-28-THU
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