ほぼ日刊イトイ新聞主催  第1回 ほぼ日作品大賞
手探りではじめた ほぼ日刊イトイ新聞の本格公募企画。 3000を超える応募作が集まり、 たいへんレベルの高いコンテストとなりました。 一次審査、最終審査、そして読者投票を経て、 すべての結果が決定いたしました。 誇らしく、ここにお伝えいたします。



先日、無事に授賞式を終えた、
「第一回 ほぼ日作品大賞」。
その全入選作品と、最終審査の対象となった
作品を展示した「第一回ほぼ日作品大賞展」が
CLASKAのGallery2で開催中です。
3100点の応募作品のなかから選ばれた
37点の「作品」たちを、
どうぞ実際に観ていただければと思います。
展示会は10月24日(日曜日)19:00まで。

「第一回 ほぼ日作品大賞」展
[会期]10月5日(火)〜10月24日(日)
    11:00〜19:00
[会場]CLASKA 2F "Gallery 2"
CLASKA HP

sunui(素縫い)
アジアでの旅行中に見つけたという
お菓子のアルミカップを叩き、
平たくして勲章に見立てたバッチ。
材料となる布や革、テキスタイルの端切れは、
作者が様々な土地を旅して出会ったもので、
国や地域により、大きさや厚み、色などが異なります。
したがって、できあがるバッチも
ひとつひとつ異なり、同じものはありません。
金具は日本で購入したものを、
付け糸はロウ引き糸を使用しています。
大きさ:縦12×横7×奥行1cm(個体差あり)
素材:アルミカップ、布、革など
重量:20グラム(個体差あり)
※より詳しいコメントは、次回から連載する座談会のなかで掲載いたします。
 今回は、その抜粋をどうぞ。
一見、「わたしにも作れる」と思わせるかもしれないけど、
よく見ると、じつはつくれない作品だなぁと感じます。
ひとことでいえば、センスがいい。
ケーキのアルミカップを使ってつくられた勲章という点にも、
セックス・ピストルズが歌った、
「ゴッド・セイブ・ザ・クイーン」なんかと通じる
何かを思い起こさせてくれます。
これが一番いいなあと思っていたんですが、
現物をみても、やっぱりよかった。
ケーキのカップを潰してつくったという着眼点もいいし、
手仕事の痕跡がちゃんと残されているところもいい。
それでいて、商品性も兼ね備えている。
そして、なによりも、「かわいい!」と思える。
それが、本当の意味で決め手だったかもしれません。
キッチュだけど、玩具っぽくはなくて、
エスニックなのにポップな雰囲気に仕上がっている。
そして、アジア各国で集められた素材は、
ちゃんとよいものを使っている。
自己満足で終わっていなくて、
人を驚かせたり、魅了したりする
サービス精神がちゃんとある、
そんな作品だと思いました。
ビジュアル的に、今までに見たことがないような作品。
とにかく、パッと目をひいた作品でした。
素材として、ケーキのカップを潰したものを
用いているという話を聞いて、
あ、自分でもつくってみたいなぁ、
と思ってしまいました。
女性どうしのユニットだということですが、
こんな世界観をもっている彼女たちの
ほかの作品がとっても気になります。
ぜひ、アトリエに行ってみたい。
この作品には
計画性と偶然性の両方があって、
そのバランスがとてもいいと思うんです。
そして、どちらかのバランスでいえば、
偶然性のほうに少しだけウェイトがある。
そのわずかな偏りが、
とっても魅力的なんじゃないでしょうか。
また、ポップな仕上がりなのに、
威厳ある勲章の形をとっている
という点にも興味を持ちました。
じつは私、最初は気に掛けていなかったんです。
外国のおみやげみたいだなと思って
細部まで詳しく見ようとしなかったんですよ。
でも、みなさんの話をうかがって、
よくよく拝見してみると、たしかに魅力的で。
あと、身近なものを潰して、形を変えて、
この形にしていくということに、
すごく感心させられました。
思いついたことは、
どんどんやっていいんだという意味で、
これから作品をつくっていく人たちに
すごくいいヒントになったんじゃないでしょうか。
集めてきた素材をひとつひとつ組み合わせて、
同じ作者がつくったとしても、
きっと、似た物はつくれても、
ふたつと同じ作品はつくることができない。
だから、もしもこの作品、この商品が
どこかのお店で売られていたとしたら、
見かけたそのときに買わなかったら、
もう二度と出会うことができないはずです。
そのあたりの「儚さ」というか、
一期一会な感じがすごく魅力的で、
その意味でも、「作品大賞」として
ふさわしいと感じました。
佐々倉文
彫刻家がつくった、
自分のための、ホットケーキ専用道具一式。
「月を食べる道具」という名前は、
作者の作るホットケーキの表面に、
クレーターのようなクボミが多かったり、
焼き色の模様が月面に似ていることに
由来しているそうです。
道具は、下記のものひとまとめで一式となります。
普通のボールに比べてズッシリしたステンレスボール、
茶筅の美しいかたちからヒントを得られた泡だて器、
持ち手よりも、フックの機能が重視されたフライパン、
焦げ付きなどを落とすヘラとしても使えるフライ返し、
ホットケーキの色と響き合う釉薬で塗られたお皿、
長刀を持って月狩りに行くような
イメージのフォーク・ナイフ 、
中のバターが動かないサイズでつくられた
バターケース 、
硬いバターを薄くクルリと削り取るために
作者が発明した道具、バターピーラー。
大きさ:縦50×横100×奥行20cm
素材:ステンレス 鉄 陶器 木
重量:2キログラム
※より詳しいコメントは、次回から連載する座談会のなかで掲載いたします。
 今回は、その抜粋をどうぞ。
木工もあって、陶器もあって、
鉄も、ステンレスもあって‥‥。
ぜんぶをひとりでつくってしまっている。
「今」という時代は、
なんでもできるという人間の本来のよさを、
どんどん分業化していってる傾向にあるんですが、
この作品の根底にあるコンセプトには、
そことは明らかに異なる
「これから」が感じられます。
おそらく、苦手なジャンルもあるんだろうけど、
そこも含めてぜんぶ自分でやってみようという、
そういう姿勢に驚かされた作品です。
最初は、やりすぎてるな、
つくり過ぎているなとも思ったんですが、
「ホットケーキをつくりたい!」という
自分の強い気持ちを発端にして、
効率を度外視してやりたいことをやっていくっていう、
その、ものづくりの姿勢のあり方は、
「作品大賞」という企画を
ある意味で象徴するように思いました。
わたし自身が、この道具を使って
パンケーキを焼くかと聞かれたら、
実際には使わないと思うんですけど、
これら全体で描き出されるポエティックな世界観とか、
それらをひとつひとつを実に丁寧に、
ひとりの作家がつくり出しているということに、
圧倒されてしまった作品です。
とても美しさのある作品だと思いました。
石井聖己
床に置いて使う、つぼ押し。
底面が平らで安定しており、
踏むとしっかり足裏のツボを刺激してくれます。
木の旋盤で手で削ってつくるため、
ひとつひとつ微妙に形が変わります。
元々は、作者のフィンランド滞在生活から
生み出された作品です。
冬、真っ暗な家の中にこもることが多く、
外に出ることが少ない、
足がだるくなりがちな生活のなかから、
必要にかられ、つくられたそうです。
大きさ:縦3×横5×奥行5cm
素材:白樺、ウォールナット
重量:80グラム
※より詳しいコメントは、次回から連載する座談会のなかで掲載いたします。
 今回は、その抜粋をどうぞ。
とてもかわいい作品ですよね。
自分でも、木材をつかった立体作品を
つくっているからわかるんですが、
シンプルでつくりやすい形だと思います。
もし商品化ということになっても、
おそらく、ある程度の数を
常識的な価格でつくれるでしょうから、
お客さんに届けるという現実的な面からも
よくできている作品だと思いました。
この位の大きさのものって、
端材をうまく利用してつくれると思うんです。
つまり、普段だったら、
廃材にしてしまうものが
このサイズにすれば活きる。
それでいて、ひとつひとつに
愛情が持てるのがいいなあと思いました。
いろいろなケースがありますから、
たとえば家族みんなで
自分専用のものを持っていても
区別できたりするでしょうし。
未完成なところもあるけれど、
ここに何かをプラスしていけば、
さらにより良い商品として、
実際に売れるようなものになる。
そんな可能性を感じさせてくれる作品でした。
この形のものって、触っていると、
妙に落ち着くんですよ。
ホッとさせられる部分が、
本来の機能を越えて、
魅力的に感じられる作品でしたね。
株式会社アドバンス
池のヘドロの浄化実験から生まれた、
米ぬかと微生物でつくっている洗剤‥‥的なもの。
微生物が流れることで、汚れを分解し、
においを消していく液剤である。
界面活性剤も入っておらず、
石鹸でもないため法律上は「洗剤」とは呼べないが、
汚れ落とし、消臭に用いることができるため、
「バイオ洗剤」と自称しているとのこと。
食器洗い、下水道洗いなど
さまざまな場所をきれいにすることができ、
素手で使っても肌荒れしないそうです。
カラダや頭、歯まで洗うことも。
大きさ:縦20×横7×奥行7cm
素材:米ぬか・フスマ・微生物(粉末)+水(液体)
重量:500グラム
※より詳しいコメントは、次回から連載する座談会のなかで掲載いたします。
 今回は、その抜粋をどうぞ。
いや、これは本当にいいんです。
ぼくはこれ、実際に使っているんですけど、
確かに、なんにでも使えて汚れが落ちます。
ぼくこれで、頭まで洗いましたから。
ちょっと独特のにおいがあるのが、
玉にきずなんだけどね。
ふだん、つかってるから、
逆にぼくは票を入れなかったんだけど、
みなさんが推すのなら、もちろん後押しします。
いわゆる作品とか、ものづくりとは
ちょっと違うものかもしれない。
でも、はっきり目に見える形ではないものも
「作品」になる、と考えると、
そう言えるのかもしれません。
例えば、ノイズの音を、
「これはコンテンポラリーなアートの形です」と
言ってしまえば、現代アートになってしまうように。
しかも、これは間違いなく実用品として
成り立っていますからね。
環境に配慮したすばらしいコンセプトですけど、
利益率も悪そうだし、
おそらく大企業は取り組みにくい商品。
資料によれば、それをご年配の方々が
奮起しておつくりになっているとか。
そう聞くと、デザイン性はなくても、
勇気づけられる。
正直、デザインはこれからという感じですが、
こういうものを受け入れることが
「作品大賞」っぽくていいんじゃないでしょうか。
藤本雄策
ブラジルのペクイアという木材で
つくったバナナ。
天然の色でありながら
鮮やかな黄色をした素材を活かし、
彩色せずにバナナの色を再現している。
熟した印であるスイートスポットなど、
細かいディテールも
見事に手作業で再現された作品。

(選者コメント)
ひとつひとつに手抜きがなくて、
どこまでいっても
同じ心でつくってある作品だなぁって、
そのつくる心の平らさ加減に感心したんです。
あと、もうひとつ、
バナナは自分にとっての、
永遠のアイテムなんですよね。
日々譚 hibitan
古着のシャツ、古い素材と素材を
組み合わせてつくった
一枚一枚表情の違う、
暮らしのためのかっぽう着。

(選者コメント)
ワイシャツを再利用してつくる。
そんな発想を私は持つことができないので、
わぁーっ、この作品、
すごくおもしろいなぁって思ったんです。
金子智子
石膏粘土でつくられた、
楽しく飾って楽しく使える砂時計。
首を横に倒すと、
ふくろうの目の中の砂が落ち、
時をはかるという作品。

(選者コメント)
なんてかわいいんだろうって
思ってしまって‥‥。
普段理屈を語って仕事をしてますけど、
これについては、
まったく理屈を語りたくないです(笑)。
お洒落なものではないと、
わかってはいるんです。
でも、好きなんですよ、
このふくろうのこと‥‥。

東明
放り投げるとペンギンの形にふくらむ作品。
作品の上部は目の詰まった
ポリエステル生地でできていて、
下部には空気をよく通すカーテン生地を採用。
この素材の構成により、
上空に投げ上げるとポリエステル生地の部分が
パラシュートのように空気をはらみ、
落下することで作品のフォルムが現れる。

(選者コメント)
可能性をすごく感じた作品。
いろんなバリエーションを
つくったりしたら、
たのしそうだなと思いました。
ぜひ、ここで終わりにしないでほしい。
じゃないと私がつくっちゃうぞ、
みたいな(笑)。
矢島美穂子
ヨーロッパに伝わる、ルリユールと呼ばれる
伝統的な製本技術を用いてつくられた手帳。
宮澤賢治は黒い手帳に紐を通し、
常に首からぶら下げていたという逸話から、
代表作のひとつ「雨ニモマケズ」が
宮澤賢治の手帳と同じページに
掲載されている。

(選者コメント)
私は、これが商品だったら、
高くても買ってしまいますね。
内向きの作品だとは思うのですが、
特別な紙、特別な革を使っていて、
伝統的な製本技術で仕上げてある。
細部へのこだわりが気に入りました。
金津沙矢香
ガラスでできたはんこ。
使わないときは、
光の反射で、模様が映り込む、
おもしろい表情のオブジェになる。

(選者コメント)
ガラスという素材と
はんこの組み合わせが
新鮮に感じられたんです。
オブジェとしても、
とってもかわいいですよね。
小川佳子
高台の一部が切りとられ、
指が入るようにつくられたお椀。
外付けの取っ手とあわせて、
「熱い汁が入っているときも
 無理なく持ち上げる」
ために工夫されている。

(選者コメント)
この作品は、
ただ置かれているだけなのに、
ちゃんと、つくり手の意図通りに
手に取らせる力があった。
僕は、自然と、切り取られた部分に、
スッと指が入りましたからね。
商品として、力があると思います。
寺沼麻美
ページの角に被せるしおり。
本を閉じても、
ひと目でどのページかがわかります。
デザインは切り絵で施されており、
カラーは6色あります。
シンプルだけど、便利。

(ひとこと)
見事、1612票の読者投票を集めて、
全体の1位に輝きました。
2位以下は接戦でしたが、
この「しおり」は、
頭一つ、抜け出していました。
ご投票いただいたみなさん、
どうもありがとうございました!



2010-10-07-THU