ちくしてつや

【筑紫哲也】


例文 『1時をお知らせします。
 ピポ、ピポ、ピポ、ポーン!』
「え〜っとね、おととい、
 浜松に行ってきたんですけどね、
 ま、ちょっとした取材で。
 うん、昼間のうちにロケは終わってね、
 軽い打ち上げなんかもして。
 そんでまあ、泊まるところって
 いっつもボクら、
 ビジネスホテルなんですよ。
 ビジネスホテルっていうのは、
 どうして、どこもいっしょなんですかねぇ。
 まあ、それはいいんですけど、
 夜中、ホテルに帰って、シャワー浴びて、
 テレビとか観てたら、
  ちょっと小腹が空いて。
 こう、スナック菓子とか
 食べたくなったんですよね。
 そういうことってない?
 なんか、じゃがりことか、
 かっぱえびせんとか、
 サッポロポテトとか‥‥あ、
 バーベキュー味じゃなくて、
 ふつうのサッポロポテトのほうね。
 そういうの、
  たまに食いたくなるんですよボク。
 まあ、あんまり眠くもないしっていうんで、
 上着着てね、コンビニまで行ったんですよ。
 窓から近くにローソン見えたから。
 でね、行ったら行ったで、けっこう、
 いろんなもの買っちゃうじゃないですか。
 あんまり必要でもないのに。
 なんかこう、耳かきでも買っとくかな?
 とか」
「ハハハハハハ」
「へんなオマケつきのお菓子とかさ。
 雑誌なんかもちょっと読んだりなんかして。
 で、いろいろ買ってね、
 レジに持って行ったわけですよ。
 そしたら、レジがおばちゃんでね。
 まあ、べつにいいんですよ、それは。
 こう、レジにざらっと商品置いて、
 おばちゃんが、ピッピッって、あの、
 なんつーの、機械でやるでしょ?」
「バーコードを」
「バーコードを。そうそう。
 で、ちょうど、1000円だったんですよ。
 キリのいい数字で、うん。
 まあ、それで、財布から、
 1万円札を出したんですよ。
 ちょうど、崩したかったってのもあって。
 そしたらね、おばちゃんが、
 それを受け取って、
 まあ、当然、おつりをくれるわけですけど、
 うん、9千円ね、9千円。
 その、おばちゃん、まずレジから
 千円札を4枚出したわけです。
 で、その4枚の千円札をボクに渡すときに、
 『まず、こまかいほうからです』
  って言ったの。
 これって‥‥どうなの?」
「ハハハハハハ」
「まあ、たしかに、『こまかいほう』ですよ。
 そのあと5千円札をくれるわけですからね。
 5千円札とくらべれば、
 千円札は『こまかいほう』なんだよ。
 そりゃそうなんだよ。でもねえ。
 これ、合ってる? なんかヘンでしょ?」
「ハハハハハハ」
「え? と思ってたら、そのおばちゃん、
 ふつうに『いっせん、にせん‥‥』って
 数え出しちゃって、
  まあ、ボクもオトナですから
 浜松のローソンで、わざわざ、
 そんなこと言い出しても
  しょうがないと思って、
 おとなしく9千円受け取って、
 ホテル帰って寝たんですけどね。
 ‥‥なんだかなあ、って思って。
 あれぇ? なんか、うまく伝わらないなぁ」
「ハハハハハハ」
「ま、それだけっちゃ、
  それだけなんですけどね。
 え〜っと、なんでしたっけ?
 ああ、そうですね、もうこんな時間。
 それじゃあ、今日も2時間、よろしくです。
 ちくしてつやの、オールナイトニッポン!」
♪ダンツク、ダンツク、ダンツク、ダンツク‥‥
 パラッパ、パッパラパ、パッパラ〜。

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