YOKOO LIFE ヨコオライフ
第2回 太陽光線。
横尾
うちの猫、すごい痩せててさ、
上から見てもムニャーっとなってるわけ。
病院に連れてって、注射を打ってもらったの。
そしたら元気になった。
お医者さんに聞くと、
うちの猫は年齢的に80歳ぐらいだから、
病気なわけではなく、
ちょっととぼけてるんだろう、って。
だから注射で即調子がよくなったんだね。
糸井
老猫は、徘徊しないんですか?
横尾
家の中しか徘徊しない。
糸井
いま、その猫は元気なんですか?
横尾
元気さでいうと、
ぼくとどっこいどっこいの勝負だね。
お医者さんは
「いつでも尊厳死させますので」って、
メチャクチャ言うんだよ。
糸井
元気なら、いくらなんでも。
横尾
うん、ぜんぜん苦しんではないんだからさ。
お医者さんは、命をものとして扱うね。
我々は、どうしても心理的なもので
判断してしまうけれども。
糸井
そうかもしれないですね。
老犬老猫になってからも、愛情は湧きますし。
横尾
愛情ね。犬や猫はキャッチするよね。
愛情というより感情をキャッチする。
ちょっと優しくしてあげると、
体も積極的になるみたい。
だから「治れ、治れ」とか、
いろんなこと言って撫でたりしてると、
3日か4日で、
背中のゴツゴツに丸みが出てきたのよ。
糸井
横尾さんも、どこか、
かわいがってくれる人のところに、
撫でられにいきたいものですね。
横尾
そうね。
糸井
按摩やマッサージはどうですか?
望むとおりの人がいて、撫でてくれるとか‥‥。
横尾
でもそれは、マッサージであって、
愛撫ではないでしょう?
こっちが勝手に思ったとしても、
する側が「マッサージ」という概念を
持ちすぎてるからダメだよ。
糸井
そうですね、優しさが足りないですね。
横尾
「これは愛撫なんだ、愛撫なんだ」
と、こっちが勝手に思えばいいのかも
しれないけれども、
相手がそういう気持ちになってないからダメ。
糸井
確実に、なってないですね。
横尾
なるように仕向けてもダメでしょうね。
「この人を治してあげようという、
優しい気持ちでやると、
あなたもどんどん上達していって、
手から生命エネルギーが出るよ」
なんて言ってもさ。
糸井
そう思っても、そのことを
その場で言うわけにはいきませんね。
横尾
その場で言ってるよ。
糸井
え? 言うんですか?
ええ? 
横尾
うん。
そんなもの、
最初から直接は言わないよ、
ほかの話題から、もっていかなきゃいけないんだよ。
糸井
じゃあ、
「外は雨がふってましたよ」
とか?
横尾
いや、雨じゃないよ。
雨じゃダメだよ。
糸井
もうすこし心の奥に届く話題にするんですか?
横尾
天気の話って、老人しかしないよ。
糸井
でもだいたい、お店をやってる人は
部屋に閉じこもってるから。
横尾
ああそうか、外が気になるのか。
糸井
外の空気と一緒にお客が来るんで、
「まだ雨ふってました」という話題だと
いいのかな、と思いますよ。
横尾
商売と絡んでんだね。
糸井
マッサージはひんぱんに行ってるんですか?
横尾
マッサージは週1回。
しょっちゅうやってるって感じも嫌だから。
糸井
それでも足は治らないでしょうか?
横尾
だって、足のマッサージはしてないから。
糸井
あ、そうなんですか。
横尾
足が悪いと運動できないから、
マッサージで体の運動を
してもらってるという感じ。
糸井
横尾さん、以前はけっこう散歩をしてましたよね?
横尾
そうね、だからいまはあんまり散歩もできないね。
このアトリエから降りて、
川のところまで行くと、
ビジターセンターのテラスがあるんですよ。
テラスったってテーブルふたつぐらいです。
そこで自販機でココアかなんか買って飲むと、
太陽に真正面から当たるから、快適なんですよ。
糸井
寒い日は散歩はしないんでしょ?
横尾
いや、寒い日も、その一画だけは角になってて
あんまり風が当たらない。
寒いよりも、お日さんのほうが暖かいの。
糸井
このアトリエ、
高台ですごくいい場所に建ってますね。
何年前に建てられたんですか?
横尾
もう30年ぐらい経つんじゃない?
でも、窓から冷気が伝わるから、
テントを張ってもらおうかと思ってるんだよ。
それから、窓をはずして、
あちら側の壁につけちゃおうと思ってて。
そうすると、太陽がバーッと入るでしょ。
太陽光線で絵が描けるわけ。
糸井
太陽光線で絵を描く。
横尾
そう。
糸井
いまの、カッコいいですね。
横尾
光線アートだよ。
糸井
太陽光線で絵を描く画家。
横尾
光線絵画っていうのかな? 
糸井
ちょっと豪華な気がしますね。
(日曜につづきます)
2017-09-07-THU