横尾さんのインターネット。
横尾忠則さんが相談があるって?

『横尾忠則作・暗夜光路』展の
準備の様子を、原美術館からお届けします!



ほぼにちは。ふたたびシェフ武井です。
今日は横尾忠則さんと原美術館のスタッフの皆さんが
10月20日(土)から開かれる
『横尾忠則作・暗夜光路』展のために
作品の展示準備をする日です。
昨日お伝えしましたように、
このページで、その様子をテキスト中継しますよ!
ほぼ日スタッフが原美術館に同行して、
現地からどんどん更新しますので
一度読んでくださったあとも、ちょっと時間が経ったら、
またアクセスしてみてくださいね。

(なお、展覧会の詳細は
 原美術館のサイトでどうぞ!)


まずは、
昨日までにどんなことが
行われていたのか?
ということから。
たとえば階段の踊り場を
黒い幕で覆っています。
窓も、塞いじゃってます。

なんと、階段の部分を
すべて「瀧」の
ポストカード展示に!
全体がでかいアルバムだ。
このアイデアは、
原美術館側から
出したそうです。

原美術館は壁に釘打ちして
展示をするので、
展示替えのたびに
壁を塗り替えるんだって。
これは塗り替え中の部屋。
10月12日の撮影です。
壁のペンキ塗り、
大工さんに頼むのかと
思ったら、ボランティアを
含むスタッフが、
自分たちで塗っていた!
「ワザは職人から
 盗みました。
 けっこう上手いですよ」
す、すごい。
ふたつ上と同じ部屋です。
15日に訪ねたら、
こうなってました。
壁が真っ赤だ!!
どんな絵が
架けられるんだろう?
まだガランとした
1Fの展示室。
壁はきれいに塗られて
あとは作品の到着を
待つばかりです。
10月17日夜、
都内の5つの場所から
一日かけて集められた
横尾さんの作品が
届きました。
美術品運搬の
専門業者さんが、
たいせつに運んで
くれるんですよ。
正面入口から搬入です。
「まだ絵の具が
 乾いてないのもあるから
 注意して!」
なんて声が。
えっ、描きたて???

こういうふうに完全梱包を
していない作品は
「まだ乾いていない」
ものなんだそう。
「といいますか、これは
 未完成なんですって」
えっ、えっ???

どの作品をどこに置くかは
見取り図ができています。
長い時間をかけて
美術館と横尾さんとで
綿密な打ち合わせを
重ねました。
でも……

担当学芸員の青野さんは
とても悩んでいた。
「さっき突然横尾さんが
 『こういうのどうかな』
 って、新しい作品を
 17点も追加したんです。
 予定通りにいかない!」
しかし嬉しそうだ。

大きな作品は
大勢で「せーの」で
梱包をときます。
ちなみにいちばんの大作は
5メートル三幅対の
作品らしいです。
17日の時点では
壁には架けません。
それは横尾さんと相談しながら
18日の作業になるのです。
左側に見える小さな作品は
「横尾さんが仕事のあと、
 自宅でのんびりと
 楽しみのために描かれた
 作品なんですよ」
えええええっ! って、
シャレじゃないけど、
そんなに描いているんですか!


↑ここまでが「昨日までの様子」です。
さあ、ここから↓「今日の様子」がはじまりますよ〜!


●まだ横尾さんは到着していない11時前

昨日「未完成」だと聞いた
作品は、別室に移されました。
いったい何が起こるの?
未完成作品のための額は
玄関脇に保管。
業者さんはべつの作品の
展示にとりかかり始めました。

壁に直接釘打ちをして、
絵を架けます。
「曲がってないか?」
「気をつけろよ!」
あのう、これ、逆さまじゃ?
「いえ、そういう指示
 なんです。
 これでいいんですよ」
ふうむ!

ボランティアの学生スタッフが
作品に当てるライトを
組み立てはじめました。
壁を黒く塗り遮光した部屋の
ライトに、赤いセロファンを
かぶせています。
「赤い光で作品を
 照らすんです。
 セロファンの耐久性
 大丈夫かなあ?」
青野さん、悩む。
指示を出した青野さん、
すぐに別の部屋へ移って
イーゼルを組み立て始めた。
これは、今回の展覧会の
「原点」になったもので、
横尾さん自身が模写した
いろいろな絵画を並べます。
だから、「タイトルもつけずに
イーゼルに載せたまま」
という展示のアイデアが
生まれたんだそうです。

これは何???
「ぬいぐるみ」ですよね。
インスタレーションの部屋に
あったので、その一部に
なるものらしいです。
「“涅槃”に関係するものを
 集めたんですよ」


●11時40分、横尾忠則さん到着!

雨の中、デニムの上下で登場。
にこやかです。
カバンを持ったまま
まっすぐ奥の部屋に進んで
オブジェの配置の指示を
出しています。

マメ知識。
左が、壁に打ち付けられた釘。
右が、作品の裏側に
付けられたフック。
これで壁に固定するわけです。
ふつうならワイヤーで
吊るところですが
これが原美術館のやりかたなんです。

階段の踊り場の
「瀧」のポストカード展示現場。
青野さんが横尾さんに
照明の相談です。横尾さんは、
「いまのままだとちょっと暗いね。
 でも、暗いままも、いいねえ」
「でも、床の鏡のカバーをはがせば
 もうすこし光が
 回りますよ」

●12時をまわりました。エンジンかかってます。

「それはデジカメ?
 一枚ずつ撮れるの?」
と、突然振り返ってこちらに。
そうです。今日はお邪魔いたします。
よろしくおねがいします。

ミュージアムショップでは、
ポスターやポストカード、
本、グッズなどを販売予定。
この展覧会用に作られた
ダイアリーも!

青野さんと横尾さん、入り口の
絵の配置について考察中。横尾さんからは
次々と提案がなされます。
「ここは、わざと寂しい雰囲気にして
 まずはがっかりさせて
 次に進ませるというのはどうかな?」
「うーん」
「あ、やっぱりなぞめいた雰囲気にしようか?」
「うーーーーん」
「あ、でも、最初から腕組みされて
 難しい気持ちで見られるのはいやだよね。
 軽い気持ちで見てもらえるように
 応接間みたいにしようか!
 そのためには、柱時計なんか置いてさ……」
横尾さん! オープンは間近ですよ!
「大丈夫。今日一日あるんだから、
 ゆっくりいろんなことを考えようよ」
昨日突然出現した新作17点。
フレームをひとつずつ独立させて
展示させたいのだけれど、
フレームがない、のだとか。
「大きいフレームで
 4枚ずつ展示するというのは
 どうでしょう?」
「そうすると4枚の意味付けを
 吟味しないといけないよね」
決定にいたらず。
「この絵はこの部屋より、
 こっちの部屋のほうがいいな。
 替えようか!」
業者の方が
「移しますよ!」と言うのを
「いや、大丈夫。僕が」
と、横尾さんがさくさく動かしています。
真剣に話しあっているな、
と思ったら
「お昼どうしようか?」
という相談でした。
ここでお昼休憩に入ります。

●午後1時すぎ、darling到着。

京都に行く前に、
darlingが陣中見舞い。
横尾さん本人の案内で
館内を見て回りました。
ここは、前に紹介した赤い部屋。
壁の色と絵の色が同じだ!

原美術館では、作品のキャプションや、文章による説明は
あまり行っていません。
できるだけ純粋な気持ちで作品と対面してもらいたい、
という気持ちから、だそうです。
でも、darlingといっしょに横尾さんの説明を聞きながら
「そういうことって、もっと知りたいなあ」
と思ってしまいました。
学芸員さんは、きっともっと聞いていますよね。
そういうことって、ぼくらにも
「おすそわけ」
してもらえないんだろうか?

(広報・柳田さんのお話)
「横尾さんの言葉を、やはり私たちも
 聞く機会が多いものですから、
 皆さんにもお知らせしたくなっちゃいますよ。
 でも、こちらから説明をしすぎるようなことは
 あまりしていないんです。
 知りたくない、自分の感性を頼りにしたいと
 いう方もいらっしゃいますからね。
 ほんとに知りたいという方のためには、
 作品解説を日曜日と祝日にやっています。
 14:30から学芸員が喋りますよ。
 もちろん、ふだんお訊きになっていただいても
 構いませんので、どうぞお気軽にどうぞ!」

ということでした。皆さんもぜひ来てね。

こちらはインスタレーションの
展示途中。奥に見えるのが
5メートルの三幅対の作品です。
このあとdarlingは
京都へ出発しました。
入り口すぐの展示室は
「応接間ぽく」というプランに
なりました。
屋上の物置からソファを持ってきて
ここに配置。
奥に見えるのは、スタッフの英さん。
「もう流れてるの?」
はい、流れてますよ!
お聞きしたことをどんどん更新してます。
「言ってないことを、書いちゃっても、
 いいよ。作って。
 そのほうが面白いじゃない?」
え、いいんですか?
「でも、あんまりばかっぽいことは、
 やめてね」
……このやりとりは、ほんとです。

●原俊夫館長がやってきた。

原美術館の原俊夫館長と横尾さんは
古い友人関係なのだそうです。
今回の展覧会も「いつかやりましょうね」
という約束が、やっと実ったものだそう。
原さんは、長身でダンディな方だった!

ジャン・ピエール・レイノーの
常設展示「ゼロの空間」
(こういう空間の作品です)を使って
展示を行います。
もとはこういう感じでした。
ここに、横尾さんのコレクションである
「涅槃像」を置きます。
「その像、もうちょっとこっちに
 動かしたほうがいいんじゃないかな?」
と、原館長も指示をだしています。
レイノーの部屋につながる階段の
壁面。ここにも天井近くまで涅槃像が!

窓を塞いだ壁の一部がこんなふうに
ぽっかりあいています。
「ここにも涅槃像を置こうか?」
と横尾さん。
「それとも内側に人がいてさ、
 手を入れた人がいたら
 その手をぎゅーっとつかんじゃうのは
 どう??? 怖いよ〜」


●3時を回りました。

原館長と横尾さん、
しばし休憩中。
シンメトリカルに座っています。
目の前に制作途中の絵を置いて
その絵について話しておられました。
ショップの指示は英さんから。
「横尾時計、魔除け猫、大仏猫など、
 ちょっと意味不明なようなものも
 たくさん並べますから
 いらっしゃる皆さん、
 ぜひお立ちよりくださいね!」
天井の高いショップの
電球交換にはこの秘密兵器。
それは……
ペットボトルを再利用した
「電球つかみ棒」。
こういうことも、美術館員の
たいせつな仕事です。

●16時すぎ、加筆開始!

未完成だった作品に、筆を加えることに。
「公開制作だね」
絵の具の調合には、
意外と時間をかけるものなのですね。
「あと二箇所くらいだけなんだけどね」
と、加筆開始。
筆が速い!
筆を持つ横尾さんの姿は
やっぱり迫力がありました。
ピアノを前にした矢野顕子さんとか、
そういう感じに近いような気がしました。
さらに……

わかりますか?
額と絵の間に、
本物の写真を挟み込んでいる。
「絵」と「写真」と「額」と
それを展示する「壁」「空間」
すべてが「作品」なんだ!

「ここまで来れば、
 全体のイメージが見えました。
 やっと落ち着いた気持ちに
 なってきました」
と、担当学芸員の青野さん。
「でも、今日はそうとう
 遅くまでの作業になりそうね」
横尾さん、もう一箇所を加筆。
じべたに座っての作業。
お邪魔ではないですか?
「いいよ、どんどん
 邪魔して大丈夫!」
「イトイさん、もう京都についたかな?
 いいねえ、旅行ができて」
話しながらも、筆は止まらない。

そしてさらに写真を差し込む。
がしがし差し込む。
用意したぶんがなくなるまで
どんどん差し込んでいます。
「もう、写真なかったかな?
 じゃあ、これで完成だ!」

完成した作品を見る横尾さん。
上の方に、キラキラした
写真が集まっているのは、
意図してのことですか?
「そうだね、考えていないように
 思えても、実は、
 アタマを使っているんだね」
(ジュースをひとくち飲んで)
「きれいだね。
 展示したくないくらい(笑)。
 きれいだね」

●最後の大詰め

展示室の照明の調整。
新しい照明を取り付けたり、
外したり、角度を変えたり。

階段の「瀧」の展示を設計した
建築家の武松幸治さんが
いらっしゃいました。
94年から横尾さんの展覧会の
会場構成などを
手がけてきた方です。
「横尾さんは、
 ものを空中に浮かせよう、とか
 そこまで無理なことは言いませんが
 それに近いことはおっしゃいます」
と、さらり。
横尾さんは今回の展示を見ながら
はやくも次の「瀧」の展示の構想が
浮かんだようすです。

18時すぎ。すべての指示をおえて、
横尾さんの仕事は一段落しました。
「では、そろそろ帰ります。
 みなさんよろしくおねがいします」
「あとは、まかせてください」
と青野さん。頼もしい!
運搬施工の「ビコン」のスタッフの
みなさん。
これからさらに一仕事です。
スタッフのみなさん、
ボランティアのみなさんも、
どうぞがんばってください!
横尾さんが帰られました。
というところで、この中継も
ひとまずここまでと
させていただきます。
この展覧会は、20日から。
どうぞみなさん、
足をはこんでくださいね!

「横尾忠則作 暗夜光路」
会期:2001年10月20日[土]− 2002年1月14日[月]
主催・会場:原美術館 東京都品川区北品川4-7-25
Tel 03-3445-0651
助成 芸術文化振興基金
協力
コニカ株式会社
美術出版社
凸版印刷株式会社

* 開館時間:11:00 am - 5:00 pm
* 水曜日は8:00pmまで開館(祝日の場合を除く)
* 休館日:月曜日(12月24日は開館し、12月25日は休館)、
 年末年始(12月28日〜1月4日)
* 入館料:一般 1,000円  大高生 700円  小中生 500円
* (70才以上の方と原美術館メンバーは無料、
  学校が休業となる第2・第4土曜日は小中高校生の入館無料)

原美術館のサイトはこちら

横尾忠則さんのホームページはこちら

2001-10-18-THU


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