横尾さんのインターネット。
横尾忠則さんが、横尾忠則さんを解説するって?

「森と肉体」の部屋
ぼくはせいぜい2枚描くと
もう次に気が移っちゃうんだよ。


3階にある展示室も、そろそろなかば。
横尾さんの解説で広い展示室を見てまわるdarlingは、
ときどき冗談を言いながらも、
表情はいたって真剣です。
んん〜だんだん熱が入ってきたぞ!
東京都現代美術館では、森羅万象展にあわせて
9月28日(土)にも
横尾さん主演の映画を上映します。
整理券制で、全席自由・入場無料。
入場時に「横尾忠則 森羅万象」展観覧チケット
もしくは半券の提示が必要です。
くわしくは、東京都現代美術館のホームページ
ごらんくださいね。



横尾 このビデオ、いま全部つけてくれるのかなぁ?
じっさいの展覧会では、
ここのテレビは全部つくんですよ。


絵の下にいくつかテレビモニターが置いてあります。
糸井 この部屋、テーマは何なんですか?
横尾 「森と肉体」。
糸井 森と肉体! ほー。
リサ・ライオンとか、描いていた頃ですね。

リサ・ライオン
ボディービルダーであり、
パフォーマンス・アーティスト。
1984年来日。このころ、
横尾さんによる、リサをモデルにした
写真、絵画作品が
数多く制作されました。
横尾 そそ。リサ・ライオンのビデオをね、ここで流すのよ。
テレビが何台か置いてあるでしょう?
それぞれの画面を、何秒かずつ遅らせて
放映しようと思っているの。
糸井 なるほど。
横尾 ここの画面でパッと手を上げたら
隣の画面でちょっと遅れて手を上げるの。
それで、パパパパパッと順番に画像が流れる。
ひとつの画面での動きは、
もちろんリアルな動きなんだけども、
全体を通して見たときに・・・。
糸井 見たときに?
横尾 まあ、フフ、ちょっとアニメ的ね。
糸井 この頃の横尾さんの色使いは、なんていうか、
ものすごく素朴ですよね。
「描きたててやろう」というよりも
自分が落ち着きたい、という色を
素直に使っているような印象があります。
横尾 そうね。
自然主義的みたいなことをやっていて。
糸井 そういうことをやっていたかった時期、
なんですね。
横尾 うん、うん。
やっぱりね、相手が、テーマが、
「自然」だからね。
どうしても
自然主義的になっちゃうんですよ。
まじめにねぇ。
糸井 自然って、
手ごわい気がするんでしょうね。
横尾 自然をねじ伏せてちがうものを見ようとしたり、
変質させようとしたりするよりも、
「自然は、しぜんに入ろう」って思っちゃうね。
でも、そんなこと言いながらも、
こうやって変わってくるわけだけどね。



糸井 それで、ここまでくるわけですよねえ、ええ。
ところで、あの緑色の表現は、
ぼくは好きでしたねぇ。
横尾 どれ!? これ!?
糸井 ああ、あの緑の、です。
あの色には、ずいぶんなじみがあるなぁ。


中央に描かれているのは、横尾さんご自身の姿です。
横尾 でもなんかね、ぼくはね、
いつも継続しないわけ。
糸井 ああ、ハハ、
そうですよねぇ。
横尾 たとえばあの様式で、
もっと10枚でも20枚でもいくらでも
絵を描けるでしょう?
ところがね、ぼくは続かない。
せいぜい2枚くらい描いたらもう、
ブッフフフ(笑)、次に気が移るんですよね。
糸井 ただ、横尾さんの絵は、
みんなの目にふれる複製が世の中にいっぱい出るから、
自分では「やめたもの」で
たった2枚しか描いていないものであっても、
意外とみんなが
「オレも見た」「オレも見た」って
いうことになるんですよね。
「誰かと対談して親密に話してるんだけど、
 じつはそれがテレビに撮られて、放映される」
ようなことと同じような構造で。
ぼくは、あの緑の色使いを
本の装丁かなんかで見たような気がするんですよ。
横尾 ああ、糸井さんね、
ほんとは見てないんだよ、それ。
あれで本の装丁はやってないよ。
うん、ぼくの記憶にはないね。
糸井 じゃあぼくは、
カタログなんかで紹介されているのを
勝手に本の装丁だと思い込んでいるんですかね?
横尾 うん。自分の中でそう組み立てててるんだよ。
でもそれは、見る側の想像だしさ、自由だし、
それでいいんじゃないかなぁ。
糸井 なんだか、横尾さんの絵って、
そんなことがいっぱいありそうですね。
自分が勝手に「こうやって見た!」って
言ってそうな気がする。
横尾 フハハハ。そうねぇ。
そう言われることはじつに
多いけれども。
糸井 フハハハ!
横尾 じっさい、ぼくは心あたりがないんですよ。
糸井 それについては、
本人の記憶が正しいわけですよね・・・?
横尾 うん。そりゃあそうだよ!

横尾さんの作品は
いろんなところで目にすることが多いぶん、
それぞれの人の生活にあわせて記憶されてしまうことが
あるのかもしれませんね。
次回は「カタストロフィ」の部屋。
「森と肉体」とはまったく違った作風に
出会うことができますよ!
どうぞどうぞ、お楽しみに。

2002-09-21-SAT


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