ありがとうが爆発する夜
矢沢永吉バースデー記念
スペシャルイベントまでの日々。

TONIGHT THE NIGHT !
1999-9-15バースデー記念スペシャルイベント
“ありがとうが爆発する夜”NHK BS-2で放映!

10月1日(金)2000〜2200
NHK BS-2で“ありがとうが爆発する夜”が
放映されます。題して、
「エンターテインメントスペシャル
 ありがとうが爆発する夜
 矢沢永吉ハッピーバースディ50thスペシャルライブ」。
ほぼ日読者や、ほぼ日筆者、darlingやほぼ日スタッフが
体験したあのライブを、ぜひ観てください!
そして、ここからが今日の本題です。

松本人志さんとdarlingが矢沢永吉を語る
“ありがとうが爆発する夜”の数日前、
松本人志さんがネズアナビルを訪れてくれて、
darlingと3時間以上にわたり対談をしてくれました。
お忙しいところ、ホントーにありがとうございました。
このコーナーでは、対談のなかで矢沢永吉さんについて
語られている部分をピックアップしたものをお届けします。
というのは、この対談、目的地のない
行きっぱなしの散歩のようだったからです。
話題は矢沢さんに始まり、あちこち道草したり、
木登りしたり、野良犬に吠えられたりして、
いつの間にか“お笑い”の話になっていたんです。
その部分は、また後日、別なかたちで発表する予定です。

今回は序章のような感じで、
いわゆる“ファンの形”のことから話が始まってます。
はじめっからちょっとスリリングな展開です。


松本人志さんとdarlingのYAZAWAばなし!
その1

松本 あのですねぇ、なんでもそうなんですけど、
みんな、その、ファンになるっていうと、
とことんファンになるでしょ。
それが僕はいまいち納得できないところがあってね。
うーん……その人が好きやからって、
すべて認めてしまうっていうところがねぇ。
だから、なんでしょう、たとえば……。
糸井 競争になっちゃうんですよね。ファンってね。
松本 たとえば誰かミュージシャンのファンになると、
恰好までそうなっていって、
お客が並んでるの見ただけで、
誰のコンサートかだいたいわかってしまうという、
ああいうノリがねぇ、どうも納得できないというか、
ちょっと信じられない……。
特に個性みたいなものを歌ってるミュージシャンの
ファンが、そのミュージシャンと同じ恰好して
コンサート観にくるっていう発想がね、
僕はちょっと信じられないんですよね。

矢沢永吉っていう人はすごいと思うし、
もちろん好きなんですけども、
そういう意味で、僕はいわゆるファンというのとは、
ぜんぜんちがうんやろなぁ、って思いますね。
タオル持って行ったりするでしょ。
ああいうの、僕はちょっとないんですよね。
部屋にポスター貼ったりっていうのもないし(笑)。
車運転してるとき、しょっちゅう曲聴くかっていうと、
そういうことでも……たまに聴くくらいで。
ビデオも、レンタルビデオ屋でたまーに借りて観るかなぁ、
っていうくらいのことで、そんなにねぇ。
糸井 いや、いいんじゃないですか(笑)。
本当はそうなはずだと思うんだよ、好きってのは。
松本 本当はそうなはずなんですよね。
糸井 (笑)俺もそう思う。
松本 好きになり方が、僕は普通やと思ってますけど。
だから、巨人ファンとか見ててもねぇ、
それ「巨人ってなに?」って感じに
なってくるんですよね(笑)。
糸井 いや、俺もそれは知ってるのよ(笑)。
松本 (笑)ま、そうですよねぇ。
で、周りにも巨人ファンが多いんですけど、
そのへんのところで話をしだすと、
どーも結局こたえの得られんまま、
「もう好きやからええがな」っていうふうに
されてしまうんですよね。
で、「ああ、まあ俺はええねんけど」って(笑)。

だから、巨人の原形ってなんなんやろ?
「俺は長嶋が好きやから応援してる」
って人もいるんですけど、
「長嶋が監督してないときもアンタ、応援してたがな」
っていうのがあって、うーん、どうも、
巨人ってなんなんやろ? ってところがね。
僕はああいう“好きになり方”ができないんですよねぇ。
糸井 いや、それはね、実はね、
野球チームのファンでも
俺なんか典型的にそうなんだけど、
「なんで、どこが好きなの?」
って追求したくてしょうがないわけよ。
たとえば、駒田選手が巨人にいたのに、
今は横浜にいて、打ったりするじゃん。
そうすると、ものすごく憎らしいわけよ。
駒田込みで巨人好きだったはずなのに(笑)。
松本 (笑)そ、そうでしょ。
糸井 それとか、よそのチームにいた選手が巨人に来て打つと、
ものすごくいいわけ。
松本 うーん、そうなんですよ。
阪神ファンも、まあそうんなんですけど。
糸井 野村監督の受け入れ方だってさぁ(笑)。
松本 阪神っていう人がいてね、その人がいろんなとこから
女かこってきてヤリまくって、
その子供をぜんぶ野球選手に育てていって、
ぜんぶ阪神の選手になって、
阪神っていうひとつの血統ならね、わかるんですけど、
結局、原形はないんですよねぇ。
糸井 それ考えると袋小路なんだ、けっこう(笑)。
松本 そうですよ。
答えぜったい出ないですよね。
まあ人間ってそんなもんちゃう? っていう。
糸井 たぶんそれって、好きになる異性のタイプに
近いんじゃないかねぇ。なんやかんや言ってもさ、
最初に「好きかも」って思うのって顔じゃないですか。
松本 そうですね。
糸井 で、「案外いい子だった」って言ったって、
そこから恋愛にはならないんだよね。
松本 そうですね。
糸井 「好きかも」って言ったときには、
もうアプローチしてるわけだし、
好き嫌いのことって、「顔の鼻の位置が……」
とか言っても答えはないよねぇ。
生き物としてそういうことがあるんだろうなぁ。
松本 それに近いんでしょうねぇ。
糸井 それ、だけど俺同じこと実は思ってるんだけど、
表われ方はちがうんですよ。
あの、俺、頭の中では広島ファンなんだよ。
松本 あ、そうなんですか。
ややこしいですね。
糸井 大脳は広島ファンなのよ。
「このチームが理想だよ」とか言ってんの。
でも、広島対巨人になると、広島のピッチャー見て
「打たれろ!」と思ってんの。
だから分裂してるの、ものすごーく。
だから、人には「広島ファンです」なんて
言っちゃいけないですよね。
理念として広島が好きなんですよ。
広島って貧乏だし、地元の選手入れて育てて、
みんながコツコツよく走ったり……、
あれが大好きなんですよ。
松本 うーん、そうですねー。
僕は辰吉(丈一郎)が好きなんですけどね、
それは個人的なつきあいみたいなものもあって、
まとめて好きみたいなとこがあって。
だから、一般の人がスポーツ選手を
ものすごく好きになるとかいうのがね、
いまいちわからないんですよね。
糸井 辰吉ってやっぱりおもしろいよねぇ。
松本 おもしろいですねぇ。
まあ別に、このことで語ってもしょうがないんですけど。
なんかもう“見えないベルト”をつかんでしまってねぇ。
チャンピオンベルト欲しくて
ボクサーはみんなやってるんでしょうけど、
彼は自分で知らないうちに、どこかのところで
見えないベルトをね、巻いてしまったなぁ
っていう感じがするんですよね。
だからもう別にチャンピオンじゃなくてもいいし、
本人はもちろんそれにこだわってるんでしょうけど、
僕らはもういいでしょう。
糸井 こないだの試合(対ウィラポン戦)が典型的だったよね。
松本 試合に負けてもベルトはずっとしてるんですよね。
“見えないベルト”ですよね。
なにベルトだか知りませんけども。
だから、すごい魅力ですよねぇ。
糸井 ぜったい計算どおりじゃないセリフはくしね。
松本 (笑)でも結果的にオッケーなんですよね。
糸井 オッケーなんだよ。
親父のガウンはおどろいたなぁ。
松本 そうなんですよ(笑)。
普通あんなんしたらね、
「オマエなぁ」ってなるんですけど、
もうオッケーなんですよねぇ。
糸井 辰吉って一見天才タイプに見えるけど、
実は秀才なのかもね。
生活人としては天才タイプだけど、
ボクシングに関しては秀才なのかもねぇ。
いろんなハンデ背負ってるし。
松本 うーん、そうなのかもわからないですねぇ。
糸井 それって、松ちゃんに似てるよね、パターンとして。
「ハンデあってもやる方法をワシは考えんねん!」
っていうさ。
松本 そうですねぇ。
ちょっと他人とは思えない部分もありますね。
糸井 あと、目に見えるベルト関係ないしね。
あくまで“俺のベルト”だから。
松本 俺のベルトやから。
糸井 そういう話聞くとね、永ちゃんって似てますよ。
みんなが誤解してるのは、永ちゃんのことを、
「やっぱりあんな人は2度と生まれてこない」みたいに、
特別な生まれをした特別な人として見ているけれど、
やっぱり秀才タイプですよ、本当は。
努力の人だし。
要するに「どんな細かいことでも、
ぜんぶ潰していけば、ここに立てる」
みたいなことを考えて実行するタイプですよ。
決していわゆる強気だけの人じゃないですし……。

(つづく)

1999-09-24-FRI

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