「やさしくないタオル」のつくりかた。

『「やさしくないタオル」のつくりかた。』へ いただいた質問に、お答えします。

年末にお届けした
“「やさしくないタオル」のつくりかた。”
臭くなっちゃったり、
硬くなっちゃったり、
水を吸わなくなっちゃったり。
そんな「やさしくないタオル」が
どうしてできるかを考えることで、
「やさしいタオル」をいつまでも
やさしいままで使っていただくための方法を
研究したコンテンツでした。

今回、紹介するのは、
この連載にたいして読者のみなさまからいただいた、
たくさんのお便りから、いくつか紹介するとともに、
いただいた質問について、
綿のスペシャリストの大窪裕美さんのアドバイスを
お届けいたします。
連載の内容とあわせて、お役立てくださいね。


バスタオルは比較的陰干しになっているせいか、
やさしいタオルを保っていますが、
フェイスタオルがごわついてる訳が解りました。
ちょいとずらして陰に干そうっと!

(つねの母m)


日光に当てない方がいいというのは、
初めて知りました。
「日光消毒しなくちゃ!」と
張り切って当てていたので(汗)
ありがとうございました。

(あさこ)


おっと、もちろん、
くさくなった「臭い」を取るには、
「天日干し」の日光消毒は有効ですよ!
でも、ふだん、いちばんいいのは
天気のいい日に
風通しのいいところで陰干しをする方法です。
徐々に水分が抜けていくので、
ふんわり感が維持できるんですよ。


カビが付いてしまったタオルは
もう元には戻らないのでしょうか?
においとカビを取る方法があったら、
ぜひ教えていただきたいです。

(ぱたぱたママ)

なるほど、
基本的には、連載の記事でもレポートしたとおり、
湿ったままで放置しないということが
カビの生えたタオルをつくらないベストな方法です。
でも、すでにカビが生えてしまったタオルの場合、
どうにかなるものなのでしょうか?
大窪さん、いかがですか。

「残念ながら、
 生えたカビをとるのは、
 まず不可能かと思います。
 というのも、
 カビは繊維の奥深くにまで根を張っているからです。
 たとえば、お風呂場のタイルの
 目地に入り込んでいるカビを取るのは、
 超強力な塩素系のカビ除去剤でも、
 簡単なことではないですよね?
 これがタオルとなると、
 柔らかで疎密な繊維の内部に
 カビが根を張るわけですから、なおさらです。
 ただ、紫外線に当てたり、
 塩素殺菌をすれば、
 黒っぽい汚れは残ったとしても、
 カビのイヤな臭いは
 除去することはできるはずです」

‥‥ということでした。
ぱたぱたママさん、残念ながら、
カビの汚れは取れないそうです。
でも、何らかの方法でまだタオルを使いたい。
だから、せめて、カビの臭いだけでも取りたい、
そうお考えなら、天日干しか、
除去剤の使用を試してみてくださいね。

また、このぱたぱたママさんには、
もうひとつ悩みがあるみたいです。


くさいタオルについて、
真剣に読ませて頂きました。
我が家のタオルのなかには、
汗を拭いた時だけでなく
洗濯してもくさいのがおさまらないものがあり、
困っています。
そういうタオルは、もう寿命なんでしょうか?

(ぱたぱたママ)

慢性的な臭いが残っていて、
その臭いがしつこい
というわけですね。
じつは、
同連載に対して
いただいたメールのなか、
いちばん、多かったのが、
臭いタオルについてだったんです。

そのなかには、
こんな示唆に富んだお便りもありました。


やさしいタオルを毎日使ってます。
臭いタオルには、
私はハイターを使っています。
タオルにやさしくないことは承知してますが、
毎日、天日干しできるわけでもありませんし、
何より私の経験上、
「一度、臭くなったタオルは、
 洗濯だけでは戻らない」です。
申し訳ないんですけど、
「次亜塩素酸」の力を借りてます。
ハイターも、使い方によっては
(あきらめ方によっては)いいものですよ。

私は洗濯機に水を張りながらハイター、
洗剤、柔軟剤をセットし、
水がいっぱいになるまで洗濯物は
入れないようにします。
少し回し、十分に攪拌できてから
洗濯物をサッと投入、
速やかに回します。
これだと、色落ちが均一になって、
見た目に違和感があまりありません。
色が変わってしまうのはあきらめます。
うちのやさしいタオルは
少し薄めの色になってます。
ハイターの量は規定より
少なめでも大丈夫です。
菌の繁殖が臭いの原因ですから。
それで最後に、乾燥機を使って部屋干しです。

(金子)

なるほど、漂白剤、ですね。
「やさしいタオル」では、
変色や不自然な色あせをなくすため、
塩素系漂白剤の使用はおすすめしていないのですが、
たしかに、金子さんのおっしゃるとおり、
色落ちしてしまうことを覚悟してならば、
塩素系漂白剤を使うというのも、
有効なのでしょうね。
(ちなみに、色柄ものに使えるのは
 「酸素系漂白剤」で、
 花王の「ワイドハイター」、
 ライオンの「手間なしブライト」などです。)
そして金子さんの「乾燥機を使って部屋干し」というのは
おそらく、「しわとり脱水」的なモードで、
かるく乾燥機をかけた状態で終了し、
最後は干して乾燥させるという方法かと思われます。
シャツなどのしわを残さないためのモードですが、
これ、タオルにも使えそうですね。

さて、「しつこい臭いはどうしたら取れるの?」
という問い、
スペシャリストの大窪さんにも
お答えいただきました。
それくらい、しつこい臭さのあるタオルを
どうにか救う方法ってあるのでしょうか?

「紫外線で殺菌しても駄目、
 酸素系漂白剤を使っても駄目という場合、
 可能性として考えられるのは、
 洗濯槽の内側にカビの胞子や細菌類が
 付着してしまっている状態に
 なっている可能性があります。
 家庭で臭いを取る方法としては、
 一番目が紫外線殺菌、
 二番目が酸素系漂白剤、
 そして、三番目が煮沸消毒です。
 それでも、
 まだ臭いが残っているようなら、
 使っている洗濯機の洗濯槽を洗浄するという、
 根本的なところにメスを入れてみましょう。
 カビ菌は黒っぽい汚れとして目に見えますが、
 カビの胞子は目視できません。
 洗濯槽に付着していた
 カビの胞子が繊維に飛び移ってしまうと、
 その胞子は臭いガスを発します。
 ですから、何をしても駄目な場合には、
 一度、洗濯槽の汚れ(カビや細菌の付着)を
 疑ってみるといいと思います。
 洗濯すればするほど臭くなる、
 というような場合は、おそらくそれが原因です。
 そして、もし洗濯槽に汚れがあるようなら、
 市販されている洗濯槽用のクリーナーなどで、
 洗浄してあげることをお奨めします」

なるほど、タオル自体ではなく
洗濯槽そのものの汚れが原因という場合も
あるんですね‥‥。
どうぞみなさんお気を付けくださいませ。

さて、次は柔軟剤について。


そうなんです!
タオルに柔軟剤は無用なのです。
なのに、柔軟剤のCMにはタオルがよく使われます。
タオル関係者としては
それがとても不本意なのです。

タオル屋より

おお、本業のタオル屋さん!
もちろん柔軟剤って、ときどき使用するぶんには、
繰り返しの洗濯で失われてしまった
「ふんわり感」を取り戻させてくれるんですけれど、
使いすぎてしまうと、
(たしかにふわふわして、いいにおいもするけれど)
糸のすべりがよくなるため、
抜け落ちやすくなり、結果として
やせていってしまう原因になるんです。
そして、これまでお伝えしてきたように、
界面活性剤のはたらきで、
水を吸いにくくなってしまう。
だから「やさしいタオル」では、
柔軟剤の使用はおすすめしていないんです。
御理解いただけてうれしいです。
どうしてもお使いになりたい場合は、
乳白色のものではなく、
透明な液体の柔軟剤をお使いください。
乳白色のものよりも透明なもののほうが、
吸水性への影響が比較的少ないです。

では、最後のメールです。
ドラム式洗濯機について、です。


以前は縦型の洗濯機を使っていました。
バスタオルは何年も、
やさしいタオルでいてくれました。

ところが、
ドラム式の洗濯機に変えたとたん、
タオルは半年くらいしかもたなくなりました。
あとはどんなに柔軟剤を入れても、
ごわごわばりばりのまま。

よくよく洗濯機の説明書を読むと、
タオルなどが傷むことがあります、
と書いてありました。
ドラム式は水に浸して洗うのではなく、
少ない水で洗うので、傷みやすいと。

柔軟剤とかタオルの質以前に、
タオルにはドラム式はだめみたいです。

(kon)

ええっ?! そうなんですか。
ドラム式って、傷むんでしょうか。
じつは弊社のシェフ
ドラム式洗濯乾燥機を使っているそうですが、
家のタオルは「やさしい」ままだと申しております。
彼はやさしいタオルの洗濯のしかたに
なにか気をつかっていることはあるのでしょうか?

シェフ
「僕は、シャープ製のドラム式洗濯乾燥機を
 たしかこの10年くらい、ずっと使っています。
 わりと国産ドラム式が出始めのときで、
 外側はシャープ製だけど、
 エレクトロラックス社のOEMじゃなかったかな。
 外国製。‥‥でも、特に問題はないですよ。
 たぶん、今のものよりもちょっと
 しくみが乱暴だと思うけど、大丈夫です。
 洗い方も、まったく普通。
 「標準コース」で「乾燥」まで自動です。
 しいて言えば、
 タオルを洗うときは、
 デニムなどの硬い衣類とは一緒にしてませんけど‥‥」

で、いろいろ調査いたしました。
たしかにドラム式の洗濯機は、
少ない水で、叩き洗いをするため、
パイルの目が丸まってごろごろしてきます。
この結果、次第に「硬い」タオルになっていきますが、
これを防ぐのは、丸まったパイルがふんわりするように
「乾燥」させればよいのではないか、
というのが、ぼくらの立てた仮説です。

さきほどシェフは「乾燥機にかける」と言ってましたが、
たしかにそうすれば、
パイルにふんわりと空気が入りますから、
仕上がりはふんわり「やさしいタオル」になるはずです。
でも、独り者のシェフはともかく
ご家庭で使うと、消費電力が気になるところですよね。
そういうときは、機種によって違いますが
「ふんわり脱水」というような、
軽く熱風をあててふんわりとさせて
最後はふつうに干して乾かす機能であるとか、
ニットも乾燥できる機能であるとか、
そういったモードを使うのもよいかと思います。

でもこれからドラム式の導入を検討中というかたは
それでよいかもしれませんが、
いま使っているドラム式の洗濯機で、
乾燥機能は使わない、というかたは
干すときに、手でぽんぽんと
何度か空中に投げて空気をふくませ、
できるかぎりふんわりさせて干してみたら、
よいかもしれませんね。

また、ドラム式よりも、縦型の洗濯機で
「衣類がからまる」ようなタイプのもののほうが、
生地のいたみが大きいということも、言われています。
水の使用量もちがいますし、
「タオルを洗うのにドラム式はよくない」
「縦型がよい」とも言えません。
お使いの機種によって、特性がちがいますので、
じょうずな洗濯方法を見つけていただけたらと思います。


みなさん、
いかがでしたか?
『やさしくないタオルのつくり方。』の
連載を読んで沸いてきた疑問、
少しは解消できたでしょうか?

やさしいタオルが
少しでもながく、やさしいままお使いいただけることを
願っています。

そして、
お便りくださったみなさま、
どうもありがとうございました!

2010-01-26-TUE
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(c)HOBO NIKKAN ITOI SHIBUN / Illustration:たかしまてつを