「やさしくないタオル」のつくりかた。

その4 どうして水を吸わないのかな

「やさしくないタオル」、それは、
くさくて、水を吸わなくて、ゴワゴワのタオル。
前回までのレポートでは、においに焦点をあて、
「くさいタオル」のつくりかたについて、
取材と実験のようすを紹介いたしました。
結論はこうでした。
「くさいタオル、
 それは誰もがつくってしまう可能性があるもの。
 しかし、ていねいな洗濯と天日干しで、
 やさしいタオルに復活させることができる!」

ということで、「くさい」については
ちょっと安心した、タオルチームです。

さて、今回は第2章。
「水を吸わないタオル」です。

こんなことがありました。
乗組員の弥絵が訪れた、友人宅でのこと。
そのお宅では、お風呂場でも洗面所でも
「やさしいタオル」を使ってくださっているのですが、
手洗いで借りた「やさしいタオル」が、
どうにも吸水性に疑問があったのだそうです。


「このタオル、水、はじくよね」と聞く、弥絵。
「そう? いつも、うちのタオルはそんな感じだよ?」
と友人は答えます。
「ずっとこうなの?」
「ずっとこうだよ」
「『やさしいタオル』は、もっと、水、吸うんだよ」
「そうなの?」
「最初、パッケージから出したとき、
 水、吸ったでしょ?」
「わかんない。お洗濯してから使ったから」
「そっか。もしかして、柔軟剤、使ってる?」
「うん、柔軟剤使うよ。たっぷり使う。
 いいにおいがして、ふわふわになるじゃない!」
「それだ!」
「えっ?!」

そのお宅では、食器用のリネン以外は、
わりとなんにでも柔軟剤を使うのが習慣で、
タオルにも、わりとたっぷりめに、
使っているそうなのでした。
この柔軟剤なのです。
「やさしいタオル」を
「やさしくないタオル」にしちゃっていたのは。

それはどういうことなのか、
綿のスペシャリスト、大窪裕美さんに、
ふたたび、登場ねがいましょう。
大窪さん、どういうことなんでしょう?

「柔軟剤や、柔軟剤の入った洗剤を使うと、
 タオルの吸水性が下がります。
 柔軟剤は、洗濯物の仕上がりを柔らかくして、
 静電気を防止したり、
 色落ちを防いだりしてくれる効果があるんですが、
 それは、柔軟剤の主成分である
 『陽イオン界面活性剤』が、
 マイナスの電気を帯びた繊維の表面に吸着し、
 結果として、ごく薄い膜が
 繊維の表面を覆うことになるからなんです」

ふむ、ちょっとむずかしい話ですが、
イメージするとこういうことでしょうか。

<イラスト:陽イオンが表面をおおっているような図>

「そうですね(笑)。
 この薄い膜があるために、
 1本1本の繊維に、水が吸い込みにくくなる。
 結果として、ふわふわして、つるつるしているけれど、
 水を吸いにくいタオルになってしまうんです」

「やさしいタオル」は、その現象をふせぎ、
お届けしてすぐに使っていただけるように、
製品の仕上げに柔軟剤を使うことを、していません。
また、「柔軟剤や柔軟剤の入った洗剤のご使用は
おやめくださいね」とアナウンスしているのにも
そんな理由があるんです。

けれども「やさしいタオル」も、
洗濯の方法によっては、水を吸わない
「やさしくないタオル」なってしまいます。
では、一体、どれくらい吸水性が下がるのか、
その実験をしてみましょう。

2009-12-25-FRI
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(c)HOBO NIKKAN ITOI SHIBUN / Illustration:たかしまてつを