「やさしくないタオル」のつくりかた。

その1 とある宿の、かなしいタオル。

「やさしくないタオル」。
ああ、なんと悲しいひびき。

2000年、まだ時代が20世紀だったころに企画がスタート、
2003年、ようやく製品化が実現した「やさしいタオル」
毎日使っていて飽きがこなくて、
機能的でキレイで、
赤ちゃんからお年寄りまで
安心して気持ちよく使ってもらいたい。
そんな「やさしさ」を目指して
6年間つくりつづけてきた、「やさしいタオル」
永遠にやさしくあってくれ! ‥‥と願うんですけど、
考えてみたら、最初の「やさしいタオル」
もう6年も、使っていることになるんですよね。
もしかして、すっかり変貌を遂げた
「やさしくないタオル」もあったりして。
あったらどうしよう?!

人だと思ったらたいへんですよ。
やさしいあなた。
6年前は、やさしかったあなた。
いまはもう、ちっともやさしくないあなた。
どうしたら、やさしいあなたに戻ってくれるの。
そういうことになるじゃありませんか。
ぜひ、やさしいあなたにもどってください。

でもタオルが「やさしくない」って
どういうことなんでしょうね。

たとえば、イヤなにおいがこびりついちゃったタオル?

<イラストーくさくなっちゃったタオル>

あるいは、ぜんぜん水を吸わなくなっちゃったタオル?

<イラストーまったく水を吸わないタオル>

そして、ゴワゴワのバリバリになっちゃったタオル!

<イラストーゴワゴワのタオル>

ああ、やさしくない。

その「くさい」「水、吸わない」「ゴワゴワ」、
3つの悪しき条件が重なるかどうかはともかくとして、
それぞれなら、ちょっと経験、ありますよね。

たとえば、「やさしいタオル」を、
ガーゼとパイルの二重にしたいと
言い出した張本人であるタオル好き、
弊社のシェフは、こう言います。
くさくなるタオルはあるぞ、と。

「劇団で訪れた、とある温泉宿での出来事です。
 衝撃的にくさいタオルを
 経験したことがあるんです。
 “ご自由にお使いください”と
 山積みされていたなかから1枚をとりました。
 そのタオルはわりと厚手で硬めの、
 両面がパイルのものでした。
 まず体を洗ってから、軽くふいたんですけど、
 そのときは、ぜんぜんにおいませんでした。
 ところがサウナに持って入ったあと、
 流れた汗をふいたら、くさいんです!
 ぞうきんみたいなにおいがする。
 まさか、自分の汗のせい?! と思ってたら、
 まわりも、同じことを言っている。
 汗をふくと、妙にくさいと。
 結局、みんなで話した結論は、このタオルは
 “汗を吸うと、抜群にくさくなるタオルなのだ”
 ということでした。
 あのにおいは、
 いったい、なんだったんでしょうねー。
 いまは、ジムでも、旅行でも、
 自前の「やさしいタオル」を持っていくようにしてます。
 そうすると、汗をぬぐっても、
 いやなにおいがすることはないですから」

<イラストー温泉で劇団員が臭いタオルに驚いている>

ナイス経験。
この質問を、「やさしいタオル」を
長く一緒につくってきた、
綿のスペシャリスト、
大窪裕美さんにきいてみることにしました。
大窪さん、そんなことってありえるんでしょうか?!

2009-12-22-TUE
 
このコンテンツのトップへ
次へ

(c)HOBO NIKKAN ITOI SHIBUN / Illustration:たかしまてつを