「ピヤノアキコ。」発売記念
純・トリビュート企画

矢野顕子感謝祭。

グランドフィナーレ:
矢野顕子さんからの、お礼。



ほぼにちわ、ごぶさたしちゃいました。
「矢野顕子感謝祭」ひさしぶりの更新です。
そして、今回が、グランド・フィナーレです。

矢野さんが日本を発つ前、
矢野さんからこんな提案がありました。

「今回はほんとうにどうもありがとう。
 うれしかったです。
 でも、感謝されっぱなし‥‥っていうのも、ね?
 わたしからも、感謝したい。うん、感謝しよう。
 なにがいいかな?
 ‥‥そうだ、曲、つくろうか?!」


どえっ。
と、妙な声が出てしまったのは、
矢野さんいや矢野様に曲をつくっていたただだだくなんて
そそそそそんなそんなそんな、おそれ多くて。
いいんでしょうか。

「もちろん、いいですとも。
 待っててね。NYに帰って、つくるから。
 できあがったら、送ります」


あああああありがとうございます!

そうしてしばらくしたのち、
矢野さんの東京のオフィスのかたから
連絡をいただきました。

「NYから、小包みと、ファクスが届きました」

と。おお、小包み。ファクス。
明るいビルから、目黒川に近いオフィスへと伺い、
それを受け取りました。



ありがとうございますありがとうございます。
小包みをあけると10本のMD。
ファクスで届いていたのは、手書きの楽譜でした。

10本のMDは、矢野さんがNYの自宅で録音した
「ひとり、1本」ずつのもの。
ダビングではなく、1本ずつ、
録音したそうなのです。
MDには「○○○○さま」という手書きの文字と、
かわいい切手が貼ってありました。
矢野さんは、切手を集めるのがすきで、
こうしてプレゼントをするときに
その人のイメージに合った切手を
貼ってくださるんだそうです。
いま風というならCD−Rなのでしょうが
矢野さんが好きなメディアということで、
MDになりました。

世界に1本ずつしかないMD。
そして、その楽譜(こちらはコピー)。
うわぁ‥‥。
これは真夏だけれどサンタクロースになって
みなさんのところに、届けなくちゃ。

そうして足を運んだ記録を、きょう、御紹介して、
この特集のフィナーレとしたいと思います。

槇原敬之さん

(コンサートリハーサルのスタジオで、
 空き時間にお届けしました。
 MDの聴ける機材がなく、
 ポータブルMDに顔をくっつけるようにして
 聴いたあと──)



「人のことを考えて生きるのって、
 むずかしいことですよね。

 あ、いや、とつぜんごめんなさい。
 僕、落ち込んでいるわけじゃないです。
 きょう、たまたま、いろんなことを考えながら
 このスタジオに来たものだから。

 ありがとうございます。すごく、うれしいです。

 こんなたいしたことない僕に矢野さんはどうして
 ここまでしてくれるのかな?
 僕、ここまでしてもらえるような
 人間じゃないのに。

 音楽家が、誰かのためにうたをつくって、歌う。
 うたを、個人的に、プレゼントする。
 僕も、みんなに聞いてもらえるように
 音楽をつくっていますけれど、
 これ、「できない」ことだったんです。
 ともだちの誕生日なんかに
 うたをプレゼントしたら喜ばれるよ、って
 言われたことがあるんですけど、
 でも、どうしても、できなくて。

 かっこわるいことなんじゃないか。
 傲慢に思われるんじゃないか。
 いらないって言われちゃうんじゃないか。

 でも、きょう、矢野さんにうたをもらって
 やっぱり、すごく、嬉しかった。

 ‥‥泣けてきちゃいました。

 (ぽろぽろと泣きながら)
 「なんでもできちゃう気分」になることって、
 ほんとに、たまに、あるでしょう?
 でも、それ、だめですよね。
 ちゃんとできていないものを、人に見せたり、
 聞かせたりしちゃ、だめなんですよね。
 でも、「ちゃんとできたもの」
 「本気でつくったもの」だったら、
 こうして、誰かのためだけにでも
 つくって、あげても、いいんですよね。

 きょうはね、矢野さんから、
 うたをもらっただけじゃなくて、
 何か大きな「答え」をもらった気がします。

 僕も、これから、ちゃんとできたものだけを
 みんなの前に、出していくことにします。

 矢野さん、ありがとうございました」


槇原さんの回はこちら。

清水ミチコさん

(テレビの収録でお忙しい中、
 時間をつくってくださり、
 清水さんの事務所でお会いしました。
 最初、矢野さんのモノマネをしてくださったり
 元気いっぱいでしたが
 MDを聴きすすむにつれ、
 どんどん静かに‥‥)



(しばらく沈黙して)

「嬉しい‥‥。
 こんなことって、あるんだ‥‥。

 じんとくるなぁ‥‥。

 すごい。
 一生の宝物になります。
 ほんとうに、うれしい。
 ‥‥なんか‥‥胸がいっぱいになってしまって。
 まさかこんな日がくるなんて、夢のようです。
 どうもありがとうございました‥‥!」


清水さんの回はこちら。

池澤智さん

(トータルワークアウトの事務所で、
 あと3分で出なくちゃいけない!
 というばたばたのなか、聴いていただきました。
 MDは「池澤智さん、ありがとう!」という
 元気な矢野さんの呼びかけではじまりました)



 
「どうもありがとうございます!
 ピアノを聞かせてくださるだけでも、
 うたを聞かせてくださるだけでもうれしいのに
 名前を呼んでくださって‥‥。
 これ、宝物にします。

 矢野さん、東京にいらっしゃる際は、
 私が、ワークアウトのプログラムを
 いくらでもつくりますからね!
 そして手弁当でパーソナルトレーニングを
 させていただきます!」


池澤さんの回はこちら。

五十嵐桂さん

(明るいビルまで取りに来てくださいました。
 聴いて、すぐは、放心して、なにも言えず、
 ふるえながら帰っていかれました。
 数日後、メールをいただきました。
 矢野さんからのメッセージは
 「これからも観察してください!」でした)



「献上品のお返し、
 まことにありがとうございました。
 お返しがあること自体にびっくりしていましたが、
 そのものにも驚いてしまいました。
 だって、歌なんですもの!
 「ほめられた」って!
 あまりのことに私は倒れました。ソファに。
  (ひいいいい)
 あまりのことに手が震えました。
  (おお、震えているぞ。)
 あまりのことにその後は固まってしまいました。
  (ぼー)
 人間、驚くと、動きが止まるものなのですね。
 そしてなぜか緊張。
 少し空に浮く感じ。現実じゃない感じ。
 きっと写真も固まってるに違いない。



 でもでも
 ほぼ日の事務所を出てから
 大事な友達(矢野顕子大ファン)にまず報告して、
 駅に向かう時自然に
 ♪欲しいものはたくさんあるのー
 とか小声で歌ってしまい、歩行者に振り向かれ、
 でもかまわず歌い続け、
 電車の中で我慢できなくて、
 楽譜ながめちゃったり、
 MDの切手をなでてみたり、
 でもやっぱりとしまってみたり、
 じわじわと喜びが体に沁み渡りました。
 えへへへへへ。

 大事にします。
 覚えて歌います。
 お言葉どおり、じっと観察しつづけます。
 ありがとうございました。
 わーい」


五十嵐さんの回はこちら。

フランソワーズさん

(広島在住のため、直接お渡しできず、
 郵送させていただきました。
 後日、メールをくださいました)



「ありがとうございました!

 わたしなんかがこのようなことをして頂くのは
 恐縮の極み。申し訳ないきもちで一杯です。

 開封して、まず、目に飛び込んできた
 「手書きの楽譜」。

 これと同じようなものを13年前、
 仕事でよく目にしていたので、
 ドキッとしました。
 タイムマシーンに乗ったような感じ。

 タイトルの「ほめられた」。
 MDを再生して、
 矢野さんのコメントと歌を聴かせていただいても、
 まだ「自分」と「矢野さん」の間に
 起こっている事実として、受け止められない私。

 だって、世界の矢野顕子ですよ!
 素直に感動していいのでしょうか?
 どうしても「申し訳ない」感じです。

 好きで好きで居ても立ってもいられずに
 東京に出て行った頃と、今も同じ気持ち。
 矢野顕子さんはずっと、わたしの女神です!

 「ほめられた」は短くて、矢野さんらしくて
 愛が詰まってて、素晴らしい歌でした。

 矢野顕子さんほどの人でも「ほめられる」ことが
 こんなに嬉しいことなのか、と初めて知って
 「ほめ道」を書く上で、勉強になりました♪

 とにかく、矢野顕子さん。
 お忙しいのに、ありがたいコメントまで頂き
 本当にありがとうございました!

 きっと、何ヶ月か後に突然「歓びと感動の渦」が
 わたしを襲う事でしょう。
 このMDは私が死んだ時、
 棺おけに入れてもらいます。

 「矢野顕子感謝祭」は終わっても
 わたしの中ではいつでも「感謝祭」しています!
 生きている限り、ずーーっと!!」

フランソワーズさんの回はこちら。

タカモリ・トモコさん

(よく晴れた土曜日の夕方、
 明るいビルまで来てくださいました。
 聴きながら、ぽろぽろっと泣いたあと、
 「なにかあったときに
  持って逃げるものができました!」と。
 その後、メールをくださいました)


 
「矢野さんからのプレゼント、
 とても嬉しかったです。
 家に帰ってからいっぱい
 聞こうと思っていたのですが、
 不思議なことに数回しか聞いてないんです。
 一回聞いてはプレイヤーから取り出して、
 ケースに戻して、
 引き出しにしまって、
 しばらくしてからまた引き出し開けて…、
 って繰り返しています。

 もうひとつ、不思議なことに気が付きました。
 矢野さんから「タカモリ・トモコさん」と
 言われるところより、
 「白ねこちゃん…」と言われるところの方が、
 自分に向けられてるメッセージなんだって
 強く感じて、
 胸があつくなるんです。

 矢野さんの音楽は、
 深層心理まで簡単に入ってきて、
 そうすると患部が反応して、矯正を始める。
 おいしくって、からだにもいい、
 ごちそう(薬膳?)みたいです」


タカモリさんの回はこちら。

今泉清保さん

(明るいビルまで取りに来てくださいました。
 やのさんの
 「ありがとうございました。
  まだのっ!(青森弁で、またね、という意味)」
 というメッセージを聴いて、
 わんわん泣き出しました)


 
「うれしい。泣けてきた。
 ぐっと来た、あああ、
 こんなにすてきなものを
 はじめてもらった気がする。
 ありがとうございます。
 ああうれしい。はずかしい。
 ああ生きててよかった。
 もう、宝物です。

 どんなにつらいことがあっても、
 これだけで生きていけそうな気がします。
 はああ、うれしい。うれしいなあ。
 よかった、生きてて。
 まさかこんなことがあるだなんてね、私の人生に。
 ほんとに、中学生のころぐらいの自分に
 教えてあげたい。
 「あなた、生きていたら
  こんなにいいことがあるんだよ、将来。
  だから、がんばれ」って。
 
 これダビングして、
 ダビングしたほうを何回も聴こう。
 帰りにかばんごと、
 うかつに電車に置き忘れたらどうしよう」

(そうつぶやきながら、
 足もともおぼつかないかんじで
 フラフラフラ〜と部屋を出ていく今泉さんでした)


今泉さんの回はこちら。

嶋田ちあきさん

(高層ビルと大きな公園に近い、嶋田さんの事務所に
 お持ちしました。
 「ほめてくださって、はげみになります。
  ジェニファーロペスには、
  ‥‥もう‥‥ちょっと、
  というところですかね!」
 という矢野さんのメッセージを聞いて)


 
「やっぱり「ちょっと」なんだね(笑)。
 え、このまんまMDをいただいちゃっていいの?
 うれしい。ありがとうございます。
 楽譜もちゃんとあるんだ。
 「ほめられた 矢野顕子」ハハハ。
 (歌詞を音読する嶋田さん)
 いいね、すごくいい歌詞。
 しあわせな気分になりますね、ぼくたちのほうが。
 これだけの短い詩だけどね。

 ほんとうに、この詞に書いてあるとおりですね。
 誰でもほめられたら絶対にうれしいし、
 自分がうれしくて幸せになれば、また
 まわりの人にも
 「そうだ、やっぱりほめてあげよう」
 という気になるし。
 そういう「ほめる」気持ちって、
 伝染していきますね。
 しあわせも伝染していく。

 すごいうれしいよ。家宝にしよう、これ。
 うちの玄関を開けると、
 この曲が鳴る仕掛けにしようかな(笑)。
 こういう気持ちで人を出迎えるって、
 いいじゃない?
 それくらい気分のいい、
 すばらしいものをいただきましたよ。

 矢野さんの声自体に、
 人をすごくしあわせにするオーラがあります。
 ましてやこういう詞ですから、
 聴いた人はみんな「にんまり」しちゃいますよ。
 いいですねぇ、こうやって
 歌で人にしあわせを与えられるというのは。

 これ、わたしたちがしたことよりも
 ずっといい「お返し」ですね。
 逆にいいプレゼントをしていただいて、
 ありがとうございます」


嶋田さんの回はこちら。

坂本美雨さん

(はじめてのソロコンサートのリハーサルスタジオに
 おじゃまして、お渡ししました)


 
「この企画に参加してくれた人に
 曲をプレゼントしたいんだけど、という話は
 前もって聞いていたんです。
 でもそれをひとつひとつ、
 別テイクで録ったと聞いて、
 すごいなあと思った。
 「しかも、いい曲ができちゃったんだ」
 って言ってて(笑)。
 でも、その話を聞いていつつも、
 「自分の分もある」ということに
 まったく気づいていなかったんです。
 わたしにもあったんだ! と知って
 びっくりしたんですよ。ありがとうございます。

 あ、しかも、ほら、切手貼ってあるよ。猫だ。
 かわいいなあ。
 母からは、手紙や荷物が
 定期的に送られてくるんですが、
 いつもかわいいんです。
 身内に対しても、
 こういうところ、たのしんでいて、
 気を抜かないんです。
 母がどういう切手をどういうアレンジで貼るか、
 わたしは毎回とってもたのしみにしてて、
 その切手の部分だけ別にして、
 とってあるんですよ。

 (「タビちゃんがありがとうって言ってたわよ。
   ほかの子にもつくってあげてください」
  という矢野さんの伝言に)

 ふふふ、また要望が(笑)。
 母は「おかあさんもほめられたい」
 という内容の曲を
 歌っていました。
 おかあさんがほめられたい、というのは
 すごく新しいコンセプトだったと
 思うんですけれども、
 でもね、わたしくらいの年の「子ども」になると、
 親からほめられることが、
 じつはそんなにないんです。
 だから、うれしい。
 親しきなかにも、こういうことがあって、
 すごくうれしい。
 ほんとに、ありがとうございます」


美雨さんの回はこちら。

糸井darling重里

(とある夜、明るいビルのソファで。
 「これからも、どんぞよろしく」
 という元気な矢野さんのメッセージに
 パチパチパチ! と、こっそり周囲で聴いていた
 「ほぼ日」乗組員からも拍手がわき起こったあと)



「ああ、いいね。
 これはもう「センターにはじき返す」
 というかんじだね。

 よかったです、
 「矢野顕子に感謝する」ことをやって。
 もう、企画段階で話し合ってたころのことを
 すっかり忘れちゃったんですけど、
 「ほめる」というのは、大切なことなんですね。
 とくに、アッコちゃんのような人には。

 アッコちゃんのように
 「すごいところへ行っちゃった人」というのは、
 疲れてもいないし力も余っているのに、
 「もっとすごいことをやれ!」って言われる機会が
 だんだん少なくなっていくんです。
 それどころか、すごいだけに
 「もっと似たようなことをやれ」って
 言われちゃうんです。
 だって、もう矢野顕子は
 「いい!」に決まってるでしょう。

 だから、「もっとすごくなる」ことへの
 踊り場が必要になるときがある。

 ほんとは、「もっとすごいの」という
 程度でもない、そうだなあ、
 「もうひとり分いいの」というくらいかな。
 前提として「すごい人」は
 「磨くこと」じゃなくて、
 もうひとり自分を「つくる」くらいのことを
 やってもいいんだと思うんですよ、ほんとうに。
 そのくらいを要求したいし、
 アッコちゃん自身も要求されたいと
 思ってるんじゃないかな。

 そういう意味で、アッコちゃんは、いま
 とってもいい時期のような気がします。

 まず、前提として、アッコちゃん、君はすごい。
 それはほんとに、毎日確認して、
 そして、身軽になって
 ピョーンとジャンプしてる姿が見たいです。

 要求ばっかりしまして、すんません。
 ほんとうに、たのしみなんです、先が」


糸井darling重里の回はこちら。


これで「矢野顕子感謝祭」を終了します。
矢野さんと「ほぼ日」は、
これからも、いろいろとたのしいことを
していきたいと思っています。
矢野さん、こちらこそどんぞよろしく。

2004-07-14-WED

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