ほぼ日刊イトイ新聞

この旅も、ことしで4年目。
「ほぼ日」と伊勢丹のみなさん、
シャツメーカーのHITOYOSHIのみなさん、
そして、白いシャツをつくっている
いろいろなブランドのかたがたといっしょに、
「いま、着たいシャツ」を探します。
ことしの取材を通して、
「いいシャツを買うってどういうことだろう」
「ながく着るってどんな意味があるんだろう」
そんなテーマにも、
すこしだけ触れられたような気がします。
また「なんとなく似合わないな」を解決する、
いいヒントも教わってきましたよ。
10回の連載、たっぷりおたのしみください!

その3
かっこいいアメリカのシャツ、
INDIVIDUALIZED SHIRTS。

こんにちは、「ほぼ日」武井です。

このコンテンツは、ぼくらと、
伊勢丹のチームでつくっているんですが、
前回までに紹介したような、
「HITOYOSHI」といっしょに
オリジナルシャツをつくるプロジェクトと並行して、
いろんなあたらしいシャツを紹介すべく、
バイヤーさんたちと組んで
ブランドやメーカーのつくるシャツを選ぶ
プロジェクトも、進めてきました。
昨年も書きましたけれど、
自分たちでつくるシャツのほかに、
「それぞれにシャツをつくっている人」たちから、
ことしのシャツを仕入れたいと考えたのです。

ことしは初登場となるブランドがたくさん。
INDIVIDUALIZED SHIRTS、
MADISONBLUE、SCYE、Luxluftです。
きょうはまずINDIVIDUALIZED SHIRTSのことを
ご紹介します。

インディビジュアライズドシャツ、
と読みます。ちょっと言いづらいので
バイヤーさんたちは「インディビ」と呼んでました。

ぼくは個人的にここのメンズシャツが好きで、
綿と、麻素材の長袖シャツを持っています。

第1ボタンを外したときに
きれいに台衿が立ち上がるボタンダウン、
強靭なレジン素材のボタン、
アメリカのシャツといえば、の、胸ポケット、
トラディショナルな剣ボロの仕様、
ドレスシャツ由来のみじかめのヨーク、
丁寧に細巻き縫いをすることで、
丈夫、かつ、うつくしく仕上がる脇の縫い目。
マンハッタンの対岸、
ニュージャージーのパースアンボイという町で
つくられているシャツです。

こういうことを書くと
「ああ、男はなにかとそういうことにうるさい」
と言われそうだけど、
‥‥グッときちゃうんですよねえ。
「以前は、Brooks Brothersの
カスタムオーダーのシャツをつくっていた」
なんていう物語も、いいなあ。

でも今回つくるのはレディスのシャツです。
メンズじゃありません。
メンズのINDIVIDUALIZED SHIRTSは、
「すでに、ある」ものなので、
そのディテールやクラフツマンシップをいかして、
女性のためのシャツをつくってもらったのです。

▲こちらはINDIVIDUALIZED SHIRTSを
2000年から日本で展開するMAIDEN COMPANYの
広報の柳さんです。インディビのシャツが似合ってる!

「INDIVIDUALIZED SHIRTSは
アメリカで1961年に誕生しました。
各地方にあるメンズショップや、
NYのバーグドルフグッドマンという
百貨店にカスタムオーダーブースを設けて
販売をしてきたようなシャツメーカーです。
弁護士や医師の顧客が多かったと聞いています。
そういう方たちが、仕事用のシャツを
シーズンごとにまとめてつくっていく、というような」

シーズンごとにまとめて!
そういう人たちって、
何シーズンも着続けたりはしないんですね。

「もちろん日本ではちがいますよ。
年齢も幅広く、20代半ばから、
60代以上の方までいらっしゃいます。
既製品を買われるかたが多いんですが、
わたしたちは基本的に「お直し」をしていないので、
すこし調整したい部分がある方には、
アメリカのように、
カスタムオーダーをすすめています」

ある意味「白いシャツをめぐる旅。」も、
まるっとプロジェクト単位の
カスタムオーダーをしているようなものですね。

「そうです、そうお考えいただけるとうれしいです」

今回、INDIVIDUALIZED SHIRTSでは
2型のシャツをつくりました。
ひとつはいかにもINDIVIDUALIZED SHIRTSらしい
ボタンダウンシャツ、
もうひとつはリネンのワンピース型のシャツです。

柳さん、
「ここはインディビジュアライズドシャツ的ですよ」
「ここはちょっと冒険しました」というような
ディテールを教えてくださいますか。

いちばん「らしい」ボタンダウン。

▲INDIVIDUALIZED SHIRTS レガッタオックスのレディースボタンダウンシャツ。

「まず、こちらのボタンダウンシャツは、
レガッタオックスという生地を使っています。
厚みがあるのに、やわらかく、
すこし黄色がかった白が特徴的な生地です。
これは、もともとBrooks Brothersが使っていた
ダンリバー社というアメリカの生地メーカーの
オックスフォード生地があったんですが、
2003年ころに倒産してしまい、
数年後には生地のストックもなくなりました。
けれども、日本にその生地のファンの方が多く、
ニューヨークの生地メーカーに、
再現をお願いして実現したものなんです。
洗い込んでいくと、独特のしわ感が出ます。
とくに前立てですが、
生地がすこしつれて、パッカリングのような、
独特のしわが入っていくのが、いいんですね」

そっか。新製品のときにはぱりっと
しっかりアイロンで伸ばされてますけど、
洗ってそのまま乾かしっぱなしで着ていくと、
どんどん糸のところがつれて、
キレイなシワが入っていくんですね。

「はい。ですから、この生地は
INDIVIDUALIZED SHIRTSの
スタンダードだと思います」

かたちは、どうですか?

「基本的にはとてもスタンダードですが、
今回、レディスにするにあたり、
カフスの大きさや、台衿の高さ、
跳ね衿の幅などを
メンズよりもすこし小さく、細めにしています」

ちなみに、INDIVIDUALIZED SHIRTSは
ミシン目が目立たないつくりだったり、
まるで手仕事のような仕上がりが特徴でもあるのですが、
イタリアのシャツのように「ほんとうに手仕事」ではなく、
いかにもアメリカ的な発想のつくりかたなんだそうです。

「ふつうは手でまつらないと難しいような
仕上げをするために。
それ専用の特殊ミシンを開発するんです」

ひゃあ。アメリカっぽい!
アメリカといえば、胸ポケットがあるのも、
戦後、機能性の追求で、
ベストのポケットの代用として
シャツにつけたのだと聞いたことがあります。

「そうですよね。シャツの文化は、
もともとはヨーロッパから来ているものが
ベースになっているはずなんですが、
アメリカでは合理性がどんどん追加されました。
華美な表現よりも実用性、というような」

どんなふうに着るのがおすすめでしょう?

「いかようにも。
ただ着崩されるお客さまは多くないかもしれません。
個人的な感覚で言いますと、
オックスフォードのボタンダウンシャツを着る女性は、
リーバイスのデニムをはいて、ローファーを合わせて、
ちょっとマニッシュだけれど、色っぽさもあり、
また知性も感じさせる。そんな印象があります」

裾はどうですか? 出します?

「タックインなさるお客様が増えていますね。
デニムにタックインして、ベルトを付けて、
ブレザーやカーディガンを羽織る。
そういうスタイリングをする方が、
最近は増えてきた印象です。
でももちろん、
どんなふうに着ていただいても大丈夫です」

日本発のワンピースシャツ。

▲INDIVIDUALIZED SHIRTS リネンのワイドシャツワンピース。

もう1着が、リネンワンピースです。
INDIVIDUALIZED SHIRTSに
レディスのワンピースをつくってもらうなんて、
なかなか難しいことかと思っていましたが、
じつは数年前から日本向けに
こういう商品をつくりたいと試行錯誤を
なさっていたそうです。

「このシャツは
日本からの依頼でつくってもらっています。
アメリカ側はなかなか
つくりたがらないアイテムですけれど。
身幅をたっぷりとって、
前立ても縫い目のないフレンチフロントという仕様、
また胸ポケットも小さくして、
全体的にかわいらしさを出しています」

袖付けもおおきめですし、
肩もちょっとドロップするようなイメージ。

リネンという素材、
たっぷりしたサイズ感をいかして、
(洗濯表示は、水洗いOKになっていないのですけれど)
あえて水洗いをして洗いざらしで着るのもオススメ、
ということでした。

ボトムスは、すこしテーパードになっているような
大きめのデニムをちょっとラフにロールアップし、
「大きい」×「大きい」組み合わせで着てもよさそう。
あるいは腰回りのゆったりした動きやすいチノパン、
色落ちしたダメージデニムなども似合いそうです。

今回はちょっと男子っぽい解説になっちゃいましたね。
男子のシャツは仕入れていないというのに!

次回はかっこいい女性像を提案するブランド、
MADISONBLUEのシャツをご紹介します。

2018-05-14-MON