その1 ことしのシャツは「ふたりで」着たい。

「サイズの違うふたりで、1枚のシャツを共有できたら」

このテーマがうまれたのは、
この1年、いろんな白いシャツを、
あらためて見てきたなかでの、ある発見でした。
そんなふうに着ている女性が、あんがい、多いのだと。

たとえば、しわ感がたのしい麻素材の白いシャツを、
うんとオーバーサイズで、
前をあけて、うでをまくり、
カジュアルに着こなしている女性いわく──、

「これ、夫の着ているサイズなんです。
 でもこうしてクシャクシャにして
 羽織るふうに着るのが好きで!
 もちろん夫が着るとジャストサイズなので、
 このシャツは、我が家では共用シャツなんです」

そんな着方があるんだ! と、ちょっと驚きました。


▲メンズのシャツを着てもらいました。なるほど!

いろいろ調べてみると、レディスのシャツはいま
「ふんわり、ゆったり、リラックス」という方向にあり、
メンズシャツは、そのまま、
女性たちのオーバーサイズシャツとして
使えるのだそうです。

気が合っていっしょに暮らしている間柄だったら、
服の貸し借りはきっと「あり」。
皮膚感覚というのでしょうか、
とてもパーソナルなものとして
(たとえば「歯ブラシは嫌!」というように)
シャツの共有はしたくない、という人もいましたけれど、
「きょうはこれ、借りるね」というくらいの
かるい感覚での共有は、
そんなにハードルが高いことではないようです。
そういえば「ほぼ日」の男性乗組員にも、
「自分用に買ったシャツだけど、
 妻にとられちゃったよ」
なんて言っているのがいましたっけ。

男性が着ると、わりとフィットできっちりしたシャツも、
女性が着ると、オーバーサイズでリラックス。
極端にビジネス仕様でなければ、
ワードローブが増えるのは歓迎。

うん、「あり」だよなぁ!


▲男性が「ゆったりの女性サイズ」のシャツを着てみると、身幅や肩幅はOK、袖は短め。でも、カジュアルだったら、これも面白い!

 

探すより、つくろうか!

もちろん「そんなシャツを探す」のも
たのしい旅にちがいないのですけれど、
ことしは「いっそ、つくってみたい」と考えました。
というのも、前回の旅のときに知り合いになった
あるシャツメーカーさんの存在があったからです。

「ほぼ日」では扱いがなかったのですけれど、
店頭で展開していたシャツに
「メンズシャツのメーカーでつくった、
 レディスサイズのシャツ」がありました。
それがとても(ほんとうに)かわいかったのです。
それはオーバーサイズのシャツではなく、
メンズのディテールを生かしてつくった、
女性がきっちりフィット感をもって着られるシャツでした。
そのシャツをつくったのは、
技術が高く、いろいろなブランドが信頼をよせて
OEMを依頼している、
HITOYOSHIというシャツメーカーさんでした。
熊本の人吉に本拠地をもつ、
もともとはメンズシャツ専門の工場です。

そして、ミーティングを重ねるなかで、
メンズの仕様のシャツのディテール、
たとえばネクタイをしっかりホールドするための
ボタンダウンや、ピンホール、
背中のタックや脇のガゼット。
もともと「実用」として育ってきた
そんなこまかな仕様は、
女性の視点から、ファッションのデザインとしても、
チャーミングなのだということがわかりました。


▲ピンホールは、ネクタイをきれいに見せるためのメンズシャツのくふうのひとつ。でも、アクセサリーとしてもかわいいです。

それならば。
メンズのシャツメーカーさんのものづくりの技術と、
これまでつちかってきた基本的なデザインに、
じぶんたちが「ほしい」と思うアイデア
(デザインとサイズ感)を足せば、
「ふたりで着られる白いシャツ」を
つくることができるんじゃないか?
うん、いっそ、つくってみよう!
そんなスタートだったのでした。

このシャツづくりには、「ほぼ日」から
昨年のメンバーに加えて、
あたらしく入った乗組員も参加しています。

  • そして昨年にひきつづきのご縁で、
    三越伊勢丹のバイヤーのみなさん。
    「みんなが好きなシャツって、どういうものなんだろう?」
    ということを日々考えているメンバーです。


    ▲何度もミーティングをかさねました。


    ▲右が佐藤巧さん。メンズ担当のバイヤーさんです。左はチームの東俊秀さん。佐藤さんのチームは男性が多めです。


    ▲佐熊陽平さんと大谷宏子さん。レディス担当のバイヤーさんです。こちらのチームはほかにも女性が多い!

    メンズバイヤーのチームと、
    レディスバイヤーのチームは、
    同じ百貨店にいても、仕事内容がことなりますから、
    一緒に仕事をする機会が少ないそうです。
    でも今回は、メンズとレディス「兼用」の
    シャツをつくりたいわけですから、
    両方のチームに参加していただかないことには
    アイデアをかためていくことができません。
    どちらも「そんなモノづくり、はじめてです!」
    ということでしたけれど、
    楽しそうということで参加していただくことになりました。

    そして、前述の「シャツ専門のメーカー」である
    HITOYOSHIシャツのみなさんにも来ていただきました。


    ▲ヒトヨシシャツの松岡佳博さん(右)と大坪正信さん(左)。ふたりとも知識がシャツ博士レベル!

    次回から、どんなシャツができあがったのか、
    また、HITOYOSHIシャツの工場のことなど、
    レポートしていきますね。

    ちなみに、ことしの白いシャツは、
    それだけじゃありません。
    昨年にひきつづき、白いシャツが好きで、
    毎回のコレクションで発表をつづけている
    3つのブランドにも参加いただきました。




    ▲吉川修一さんの、STAMP & DIARY。かなり「ゆったり&たっぷり」なデザインです。




    ▲熊切秀典さんひきいる、ROUTINE for beautiful people。フィットだけれどとても動きやすいのが特徴です。




    ▲若山夏子さんと平山良佳さんの、nooy。ちいさく見えるのに、じつはゆったりしています。ことしのシャツはちょっと襟がおもしろいかたち!

    それぞれのつくり手の顔が見える、
    個性的で「ことしらしい」白いシャツ。
    オリジナルのシャツとあわせて仕入れます!

    (つづきます)

     

    2016-08-31-WED