煮沸したり、火であぶって油抜きをし、晒した真竹を
「白竹」(しろたけ/しらたけ)といいます。
わたしたちが日常で使っているかごやざる、
お箸や調理器具、バッグ、花入れなど、
さまざまな日用品の材料です。
そもそも竹は、建築資材にもなれば、
食用にも、あるいは梱包材や、医薬品にまでなる、
日本の暮らしにかかわりの深い有用植物。
竹で編んだざるやかごは、暮しの一部。
好きが高じて竹細工を習ったこともあるという
伊藤さんといっしょに、
「竹」のことを、もっと知るために、
大分の別府をたずねました。
ここは、室町の昔から
本格的な竹工芸品の生産が始まったという土地。
さらにさかのぼると日本書紀にも出ているほどなんです。
作家さん、製竹所、そして訓練校。
3つの場所をおとずれた記録を、どうぞ。
伊藤まさこさんのプロフィール
「白竹」の最初に登場いただくのは、
竹細工作家の坂田旬(さかた・じゅん)さん。
1955年生まれ、別府在住のベテラン作家です。
じつはアトリエを訪ねる前に、
別府の町で竹細工の専門店を見ていたときに、
とても目立つ、うつくしいざるを見つけました。
それが坂田さんの作品でした。
しろうと目にも、かたちの端正さや、
細部のていねいさなどから、
「手の込んだもの」ということがわかるものでした。
坂田さんのつくるざるやかごなど、
白竹をつかった日常のうつわは、個展やグループ展のほか、
所属している「別府クラフト協同組合」を通して、
デパートや専門店などへ卸されているそうです。
こちらが坂田旬さん。
別府の中心地からすこし離れた閑静な高台に、
機織りをなさっている奥さまとふたり、
共同のアトリエを構えています。

坂田さんのつくる「白物」(しろもの)、
つまり白竹をつかった細工は、たいへん美しく、
そして丈夫。
別府では「匠」のひとりとして、
とても人気の高い作家さんなんです。
伊藤さんいわく、
「坂田さんの作品は、きりっとしています」。

坂田さんのアトリエにあげていただきました。

「白といっても、
 これで25年ぐらい経ってるんですよ」
と見せてくださった作品。
左が製作中のもの、右は25年を経たもの。
こんな経年変化もうつくしい。

坂田さんが最初にふれ、
竹細工の道にすすむことを決めたきっかけは、
茶道具の世界だったそう。
それは京都をベースにした、研ぎ澄まされた世界でした。

感動はしたけれど、それは自分の仕事ではない。
そう感じた坂田さんは、学校に通いながら、
ひととおりの技術を学んでいくなかで、
「日常のもの」の作り手になる決意をします。

「白竹の細工は、素材がとても大事なんです」
つまり、後で塗りをほどこすならば、
多少の傷があっても使えますが、
素材そのもののうつくしさがきわだつ白竹細工は、
素材がよいことが、まず大切。
傷のない竹を仕入れ、さらに自分で厳選して使うのです。

作家は、基本的に、「ひごづくり」から自分でします。
油抜きは専門の工場でしてもらい、
「丸竹」を「割竹」に、
そして、そこから「ひご」をつくります。

厚いひごは、じつは2つに割(さ)いていっしょに使います。
そうすることで弾力がうまれ、編みやすくなっていく。
1枚のままだと硬くて編めないひごも、
2枚にすれば、やわらかさが出て、
なおかつ、2枚を合わせることで、強度も出る。
「強い、というのは、
 受けた力を分散する力もあるということです。
 衝撃に強くなるんですよ」

「知恵と工夫の塊ですね!
 だって、こうするのがいちばんいいっていうふうに、
 古くからだんだんわかってきたわけですもんね」

これは竹を曲げる道具。
下からガスの炎で加熱し、
水に濡らした竹を、カーブにあてて、
ひっぱって、くさびで留める。
いい竹は、「しなやかさ」だけではなく、
「粘り」があるのだそうです。
かんたんには割れたり折れたりしない、
芯の強さのようなことでしょうか。
なんだかちょっと人間的ですよね。

こちらは30年ほど経ったもの。
修行時代につくったもので、
今でも、うどんやそばを入れて使っているそうです。

「100年経っても色がもうすこし付くぐらいで、
 そんなに変化はないと思うんですよ。
 ただ、ひごがやせていきます。
 だんだん収縮するんですね」

「しなやかでいながら端正。
 坂田さんの作品を初めて見た時、
 そんな風に感じました。
 お話を伺っている間に何度か
 『ねばりがある』という言葉を耳にしました。
 もしかして『ねばり強い』という言葉は、
 こんなところからきたのかしら? と
 30年前に編まれた
 ざるを見ながらそんなことを思いました。
 ねばり強く、しなやかで端正なんて、
 まるで物腰やわらかだけれど芯の強い、
 美人さんのようではありませんか。
 美しい人が美しく年を重ねていくように、
 美しい白竹でていねいに編まれたざるやかごは、
 いつまで経っても色褪せない。
 それどころかより
 いい味わいになるものなのですね」(伊藤さん)

次回は、竹細工の材料となる
「白竹」をつくる製竹所におじゃまします。
どうぞおたのしみに!

2015-02-23-MON 

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(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN
写真:有賀傑