その4 和にも洋にも。
伊藤
作品によって、内側に木肌を残していたりとか、
あるいは逆に真っ白の部分をつくられたり、
あるいは何度も白漆を塗り重ねられたり。
山本
この器の周りの真っ白な部分は、
白を重ねて奥行きをもたせているんですよ。
伊藤
白を重ねて?
山本
顔料の配合を変えて何色かの白を作って
塗り重ねていいきます。
重ねることで強度も増していくので。
伊藤
なるほど。
こちらは刷毛目が残ってるような塗り方ですね。
ひとつひとつに、個性がありますね。
山本
同じように塗る技術が僕にはないっていうのが
一番の理由かもしれないんですが‥‥。
そもそも「同じもの」を揃えようっていう意識が
ほとんどないんです。
「同じようなもの」を
いっぱい作りたいと思ってはいますが。
伊藤
うんうんうん。
山本
使う方が、その中から
選んでくださればいいと思っていて。
伊藤
工業製品を買う時とは違いますものね。
1枚1枚、味わいがあるので。
山本
自分が物を買う時、やっぱり、違ったものの中から、
「あ、これが好きだな!」と選ぶ時がすごく楽しいですし。
伊藤
そう、楽しいですよね。
山本
特に刷毛目が残ったりしたものは、
傷が付いてもわかりにくいので、
気楽に使えるというのもいいところかもしれませんね。
伊藤
なるほど!
ところで山本さんは料理もなさるんですよね。
ご自身のうつわに、どんなものを合わせますか?
山本
僕、そんなにしないですけど‥‥
あ、昨日はカレーを作りましたね(笑)!
──
カレー皿としてもピッタリですよね。
漆のうつわが、カレーに合う。
ちょっと「洋」が入っている印象なんですよね。
伊藤
形はどうやって考えるんですか。
たとえば、陶器で古いもので好きなものがあって、
それを写したりとかもなさるのかなって。
山本
それもあるかもしれない。
そういうものも、見たりはしますから。
このリム皿でいうと、
リムの部分が料理の額縁の役をするので、
料理が映える。
本当に忙しくて、
コンビニでお惣菜とか買って帰っても、
このお皿に盛ると、
「なんだかおいしそう」って思ってもらえると
嬉しいですね。
伊藤
そうですね。盛りやすい。
中央に、キュッて、まとまる感じがします。
これは作ってどれくらいのものなんですか?
山本
これは、ここ2〜3年の間ですね。
伊藤
家で使ってらっしゃるものですか?
山本
はい、出番の多いお皿です。
ちなみに、使っていくと、多少は、
下地の漆が出てくる可能性があります。
僕はそれも好きなんですけど、
気になる方には、塗り直しています。
伊藤
お客様にもいろんな方がいらっしゃるんですね。
使い方とか、料理の盛り方とかも違いますし。
山本
料理の盛り方は、本当にそれぞれですよね。
僕、うつわを作る時に、
いつも自分の感覚で、
自分の料理を盛るつもりで考えるんですが、
たとえば伊藤さんが盛ると、
自分の感覚とは違う盛り方をされますよね。
それを見ると、こんどは別のうつわの形が
イメージできて、とても楽しいんです。
「あ、僕以外の人は、こういう盛り方をするんだ。
 この人のための器を作りたくなってきた!」
という感じです。
だから、この工房で持ち寄りの食事会をするとき、
器だけ提供して、それぞれの方に盛ってもらうんです。
伊藤
へぇ!
山本
「まさか!」っていうようなものを、
盛る方もいます。
たとえば自分では飯椀だと思ってるものに、
「ここにデザートのせちゃうの?!」みたいな。
そこで新しい発見ができて。
伊藤
なるほど。
山本
自分の固定観念の中でしか、
ものができなくなってしまうのが怖いので、
とても参考になるんです。
伊藤
チコリの葉っぱに白いんげん豆のペーストを乗せたものを
お皿に並べてもいいし、
こんな風にボウルにラフに盛っても。
同じ料理でも印象がぜんぜんちがう。
器を見ながら盛りつけを考えるのはたのしいです。
山本
そうなんです。そんなようすを見ると、
僕としても「あっ!」っと思うんです。
そして、そこから次のアイデアがわいてくる。
「じゃあ、口がもう少し開いてもいいのかな」とか。
伊藤
必要なものごとや、料理から、形を考えるんですね。
じゃあ、普段からいろんなヒントがありますね。
お友達とご飯を食べているときでも。
山本
そうなんです。すごく参考になります。
伊藤
職業柄かもしれませんが、
私は、たとえば友達の家で
ごはんをつくることになったとき、
「え? そのうつわに、それを盛るの?」
と驚かれることがあります。
「それは菜箸を刺しておく用なんだけど」とか。
花瓶みたいな縦に長いものに
葉野菜のサラダを入れてみたりするからかな。
でもそういうのを考えるのも楽しくて。
山本
伊藤さんはどんなことを考えて
盛りつけをなさるんだろう。
伊藤
私は、座る人の目線で考えているかもしれないです。
並べ方もそうですし、
この葉っぱは立てたほうがいいな、とか、
凹凸(おうとつ)があるようにしたり。
リズムみたいなものでしょうか。
山本
それですね。見ていて、すごく感じました。
伊藤
ギュウギュウに盛り合せても楽しいな、とか。
山本
あらかじめ、ひとつのお皿に、
何種類かの料理を盛ってスタートしましたね。
普通だと、何も乗せずにお皿を置くところを、
はじめからたっぷりめに盛りつけてあって。
伊藤
チョコンってしようと思ったんですが、
ギュウギュウに乗った感じもかわいいなぁと(笑)。
──
「今日はたくさん食べてね」
っていう意思表示に思えますね。
伊藤
そうかもしれない(笑)!
(つづきます)
(つづきます)

 

2015-03-27-FRI




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写真:有賀傑