白い犬。梅佳代さんちの「あのこ」のこと。白い犬。梅佳代さんちの「あのこ」のこと。

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曇りガラスの向こうから、こっちを見てる。
雪にまみれて、雪と一体化してる。
みちばたでプリッとウ◯チをしている‥‥。
梅佳代さんの写真集に、
ときどき出てくるあの「白い犬」が
一冊の写真集になりました。
タイトルもズバリの『白い犬』です。
梅佳代さんにとっては、
一緒に暮らしたことのない実家の犬のこと。
最初は怖くて触れなかったけど、
いつしか友だちになっていた、白い犬のこと。
梅佳代さんが、いつものように、
ユーモアたっぷりに、話してくれました。
担当は「ほぼ日」奥野です。


第2回
ナミりんとの思い出。

──:
そもそも、犬が怖かったっていうのには、
明確な理由があったんですか?
梅:
とくにないんやけど、いっつも思うんやけど、
犬怖い人っていっぱいおって、この世の中に。

でもね、みんな犬のこと嫌いなんじゃなくて、
ただ「怖い」だけなんだと思う。
ライオンとかだって嫌いじゃないやろ、別に。
怖いだけで、トラとかにしても。
──:
たしかに、嫌いという感覚ではないですね。

じゃあ、子犬がじゃれついてきたりする、
あのかわいらしい仕草なども‥‥。
梅:
うん、こんなちっこい犬でも、前足あげて、
「ハッ、ハッ!」って来るの怖かってん。

で、昔は、もっと野良犬いっぱいいたよね。
──:
あー、いましたね。
梅:
おったよね? 今やすっかりおらんけど、
わたしら小学生のころ、
夏休みのラジオ体操のときに来るんだよ。

野良犬が、たまに。フラーと。
──:
ラジオ体操って、あの、朝早くやってる。
梅:
そう、朝の、子どもらだけでやっとるね、
あのラジオ体操のときに。

当時、8人くらいで体操してたんやけど。
──:
よく覚えてますね。そんな、人数まで。
梅:
神社の境内で体操やっててん、
そのときに「犬来た!」ってなったら
みんな「ギャー!」となって、
全員でめっちゃ走って、逃げてたんや。

そうすると追いかけてくるんで、
ラジオ体操なんかどうでもよくなって、
ワーッて本気で逃げて、
坂を下ったとこがうちだったんだけど、
けっこう距離あるんだけど、
坂道を、めっちゃダッシュで走るから、
もう足グルグル。
──:
ああ、マンガの人がよくなってる状態。

のび太も、よく足グルグルしてますね。
まさしく、
けっとばした空き缶がぶつかった犬に、
追いかけられたりして。
梅:
わたしらが必死で逃げれば逃げるほど、
あいつら、よろこんでたよ。
──:
ああ、遊んでくれてるみたいな感じで。
誰かが怪我したりとかは?
梅:
人のことなんか見てないから、もう。
──:
自分だけ助かりたい一心ですね(笑)。
梅:
また別の犬が学校にきたときもあって。

わたしらの迎えのワゴン車、
「つくし」って名前だったんだけど、
降りるところに犬がいて、
その「つくし」から降りれんくなって、
「ナミりん怖い!」って言って。
──:
ナミりん‥‥お友だちですか?
梅:
わたしら「カヨりん、ナミりん」の仲で
親友なんや。

ふたりはドリフの志村けんが大好きで、
志村けんの話ばっかりしとって、
志村けんのことで、
1回、絶交しそうになってるくらいで。
──:
どのポイントでモメたんですか。それ。
梅:
ま、よくある、
「カトちゃんとケンちゃん、どっち好き?」
みたいな話になって、
ナミりんは、志村けんが好きやって言って、
わたしも志村けんが好きやってん。

でも、ナミりんが先に志村けんとったから、
わたしも志村けんって言えんくなって、
「わたしカトちゃん派」と言ってしまって。
──:
意地張っちゃって。
梅:
それで、くやしまぎれに
「わたし、志村けん、エッチやから嫌い!」
って言ったら、ナミちゃんが泣いた。
──:
ああー。
梅:
うまれてはじめて人泣かせてん、そのとき。
──:
志村けんのことで、親友を。
梅:
そういうこともありました。
──:
いい話ですね。

で、さっきの学校に来た犬の話に戻りますが、
そのときのピンチを、
カヨりんは、どうやって切り抜けたんですか。
梅:
怖がるナミりんを盾にして進んだ。
──:
こんどは親友を盾に!
梅:
あとで反省した。ナミりんごめんって。

わたしたち、小1から中3まで、
冬だけ寮に入っとって、雪が多いから。
──:
へえ‥‥その間、おうちには帰らず?
梅:
土日だけ帰れる。
──:
冬というと、いつからいつまでですか。
梅:
えーと、12月から3月まで。
──:
え、そんなに? すごいですね。
1年生とかママがいなかったら泣きそう。
梅:
かわいそうやろ? かわいそうやろ?

で、中学生のときに、
ナミりん、男子の前ではしおらしいのに、
わたしの前では
急に「どうもZARDでーす」とか言って、
テストの前日に、寮の部屋で、
ZARDのコンサートしはじめたりして。
──:
はあ。
梅:
ナミりん史上いちばんムカついたのが、
そのとき。

その次にムカついたのは、
寮ってごぞんじ共同トイレなんやけど、
ナミりん、ウ◯コ行くとき、
わたしのスリッパを履いていくんや。
──:
‥‥なんで?
梅:
ウ◯コしとると思われたくないから。
──:
偽装工作というわけですね、
ウ◯コ疑惑を、カヨりんになすりつける。

‥‥いま、少々、動詞が
「物体」に引っ張られてしまいましたが。
梅:
わたしのスリッパないイコール、
ナミりんウ◯コしに行っとるってわけ。
──:
いつの時代も中学生くらいの男子って、
クラスの女子に対して
過剰な神聖性を感じてるものですが、
女の子しかいないところでは、
当然、そういう日常もあるんですよね。
梅:
ナミりん、最終的にもういっこあって、
30歳くらいのときに
「わたし、じつはね‥‥」みたいな。
──:
何ですか。
梅:
「わたし‥‥じつはね、え、どうしよう!」
みたいな。
──:
非常にじれったいですね。
梅:
「え、何、何、何。言ってよー」って言ったら、
「わたし‥‥じつはね、
志村けんのブログにコメント書いとる」って。
──:
まだ!
梅:
それも、めっちゃ深刻な感じで告白してきてん。

わたしも志村けんのこと、まだ好きやけど、
そこまでの気持ちは、スッカリ忘れとった。
──:
30歳ですもんね、もう。
梅:
なのに、ナミりんは、まだそんな気持ちで、
志村けんのこと見とったんやって。

すごい一途な女でしょ? それがナミりん。
──:
でも、梅佳代さんだったら
いつか志村けんさんも撮影できそうですが。
梅:
えーっ! むりむりむり、緊張するわー。
でも、撮影したい。撮りたい。
──:
大人になってもブログにコメントしていた、
親友のナミりんのためにも、
そこはぜひチャレンジしていってください。
梅:
ほんと志村けんさんとコロッケさんだけは、
いつかディナーショー行きたいと思ってる。
──:
ナミりんと行ったらいいじゃないですか。
梅:
きっと何万円もするよ。
──:
ホテルの豪華なディナー付きですもんね。
ディナーショーともなると。
梅:
でも、一生に一度の志村けん、
一生に一度のコロッケなんだって思ったら、
絶対、その価値はあると思う。

‥‥え、で、これ、何の話なん?

<つづきます>

2017-01-23-MON
取材協力:ダンデライオンチョコレート

写真集『白い犬』、発売中。
写真展「白い犬」も開催中。

梅佳代ファンならきっとご存知、
これまでの梅佳代さんの写真集のなかに
ちょくちょく登場する
梅家の愛犬・リョウが本になりました!

タイトルはズバリの『白い犬』です。
表紙からして、もう「いい!」です。
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で、この本の発売を記念して、
現在、南青山の「TOBICHI②」では
写真展を開催しています。
会期は、2月5日(日)までです。
梅佳代さんの過去の著作をズラリならべる
特設ショップもオープンしてます。
ぜひぜひ、みんなで見に来てくださいね!

開催概要

梅佳代さん写真展@TOBICHI② 白い犬。

会期:
2017年1月20日(金)~2月5日(日)
時間:
11時~19時 ※会期中無休、1月22日(日)は17時クローズ
会場:
南青山 TOBICHI②
住所:
東京都港区南青山4­28­26
MAP:
https://www.1101.com/tobichi/access.html
入場料:
無料

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