第5回 なんか、帰りたくなる。第4回 きもちの種類。第3回 韓流ドラマのせい。第2回 故郷。第1回 オ・ト・ナ。みんなの人気者・写真家の梅佳代さんが 「ほぼ日」に帰ってきてくれました! 『うめめ』『男子』『じいちゃんさま』『ウメップ』 という作品をつうじて ププッと吹き出しちゃうような、 ハッとするような、ジーンとするような写真を 見せてくれましたけど、 こんどはちょっと、雰囲気がちがうぞ‥‥? 新しい写真集は『のと』と言います。 梅佳代さんの、生まれ故郷の写真集です。 そのあたりの「新しい梅佳代‥‥なの?」について たっぷり、うかがってきました。 キーワードは「オトナ」「韓流」「コワい」です。 「ほぼ日」奥野が、おとどけします。

‥‥どうでもいい話しちゃった、また。
得意の。
── いや、そんなことないです。
本日のお話を、簡単にまとめてみると‥‥。
ほんと、ごめんなさいね。
忙しいとこ、せっかく来てくれたのに。

さあ、チョコパイをどうぞ。
── 韓流ドラマのおかげで
ちょっと「オトナ」になった梅佳代さんが
故郷の能登の「いい写真」でつくったのが
最新作の『のと』でありますと。
はい。

なんかわたしも、この作品については
ちょっとまだ
はっきりとした気持ち不明みたいな。
── でも「能登が好きなんだな」ということは
やっぱり、伝わってくると思いました。
ほんと? なんか、いいとこっぽい?
── はい、いいとこっぽいです。

あらためて聞きますが、
能登のいいところって、どこですか?
海があって、山があって、地味なところね。
地味なところが、いいところ。

人もあんまりおらんし、
芸能人のお忍び旅行にもピッタリ、だから。


梅佳代『のと』より。

── そんな意外な「いいところ」が(笑)。
羽田から1時間で行けるんだよ、能登空港。
── 手軽に行けて、人目につかない。
そう。能登には、輪島しかおらんしね。
── 輪島というのは、相撲の輪島?
そう、石川県出身やから。

でも、正月の空港でしか見たことないから、
もしかしたら、帰省中だったのかも。
── 正月には見るんですね、輪島さんを。
見た。輪島がおった。
── 撮った?
撮った。

妹をそのへんに置いて、
妹を撮るふりして、輪島を撮っちゃった。
── 素人のフリした玄人のやり口ですね(笑)。


梅佳代『のと』より。

あと、能登の人たちは、めったに暴れん。
── 気性もおだやかであると。
でも、そういう人たちが
1年にいちど、メッチャ暴れまわる日があって、
それが「あばれ祭り」なん。
── へえー‥‥。
最後は、お神輿に火をつけたり
海とか川に、たたき落としたりすんの。

もう、あの、おとなしい人たちが‥‥って
まさかすぎる展開だから、
あれはいっぺん、見に行くといいよ。
── 「あばれ祭り」ですね、わかりました。

梅佳代さんご自身も
けっこう能登に帰省されるんですよね。
うん、よく帰る。
── 帰りたくなる?
うん、なんかスグに帰りたくなる。


梅佳代『のと』より。

── その言葉が、能登の「いいところ」を
いちばん表現していると思いました。
そう?
── で、新しい写真集には、
そういうきもちが出ているなあって。

「なんか、帰りたくなる」っていう、
梅佳代さんの、きもちが。
ほんと?

それは、見てくれた人がそう思うんなら
きっとそうなんだろうね。うれしいです。
── ‥‥あ、6月まで新宿でやっていた展覧会では
このおばさまがたの写真が、
すっごい大きく引き伸ばされてましたね。


梅佳代『ウメップ』より。

いいでしょ? わたしも将来、こうなりたい。
そのとき、たぶん、なんにも怖くないと思う。

オトナになりすぎてて。
── ボスキャラで言えば「最終形態」的な。
ここまでいったら「韓流ドラマ」といっても
歴史物しか観ないレベル。
── オトナをつきつめると
最後は「歴史物」に行きつくわけですか。
そうそう、そこ、そこ。

今はまだ、歴史物にハマるのって
どういうきもちなのかなーって思うけど。

だって「好き」とか「あの人が男前」とか
そういう世界じゃないでしょ?
── 「ロマン」とか「天下統一」とかですよね。
それも、50話以上あるし。
── 長いと(笑)。

でも「長い」といえば‥‥って
なかばむりやり「まとめ」にかかりますけど、
梅佳代さんも
けっこう長いこと、写真家をやってますよね。
やってます。
── あの「みうらじゅんさんのビルの写真」から
数えても、もう10年以上ですよね。
わたし自身は、18歳からと思っとるから。
── じゃあ、もう14年くらい。
そうやねぇ、韓流にもハマるはずやわ。
── すこし真面目な話をしますけど、
10年以上やってきて
ご自身の「写真家」という「仕事」にたいして
考えたりすることとか、ありますか?
ない。
── 自分が選んだ仕事って
こういうことなんじゃないかなあ‥‥とかって
考えるようになったりとかは。
ないです。
── ないんですか。
そこは、あんまり考えないでいいと思う。
── 考えないようにしてる?
うーん、深く考えてみたところで
そこまで考えるほどのことをしてないし。
── そう思われますか。
深く考えても考えなくても、結果は結果。
── つまり、写真は変わらないってこと?
うん。わたしのまわりのすべての出来事が、
わたしの考えがどうだとしても
たぶん、なんにも変わらないと思うからね。
── なるほど。

自分の考えがどうであろうと
「まわりに起きてることは、変わらないよ」と。
そう思う。
── 写真って、毎日、撮ってるんですか?
毎日じゃないです。
── カメラは毎日、持ってるんですよね?
持っとる。昔から、ずっとこれ。Eos5。
── 持ってるけど、撮らない日もある?
持っとっても、撮らない日はある。
それも、昔からいっしょです。
── おもしろいものに出会ったら、撮るだけで。
そう。そこはたぶん、
もっとオトナになっても変わらないと思う。
── 歴史物、観るようになっても?
いや、そこまでいったら、わからんけど(笑)。
── 能登には次、いつ帰るんですか?
たぶん、そろそろ帰るよ。


梅佳代『のと』より。
<終わります>
2013-07-17-WED
梅佳代さんの3年ぶりの最新作は 故郷の写真を集めた『のと』です。
Amazonでのお求めはこちら。 「わー、これやっちゃったら  次はどんな作品を出すんだろう?」って よけいな心配をしてしまうほど 毎回毎回、 期待を裏切らない作品を届けてくれる、梅佳代さん。 前作『Umep』から3年、 待望の最新作は、故郷の写真を集めた『のと』です。 これ、インタビューのなかでも 語られていますが 『うめめ』や『男子』などに代表される これまでの梅佳代作品とは なんだかちょっと、趣がちがうんです。 もちろん、梅佳代さんならではの 「おもしろ写真」も収蔵されているのですが それよりも 「いい写真」が静かに並んでいるという感じ。 じわーっとよくて、何度も見てしまいました。 みなさんも、ぜひごらんください。 (ほぼ日・奥野)