48、大作!「いったいどういう青春なの?」


このお話、
前も違うところで書いたことがあるのですが、
あまり詳しく書かなかったのと、
このあいだふと思い出して
「あまりにもすごいよな」と思ったので、
もう一度書きます。


私の幼なじみのきいちゃんが結婚することになり、
昔の友達(もちろんみんな女子です)が
一同にかいしました。
みな小学校からいっしょにいる人たちでした。
今も仲良しで、よく集まります。
しかもほんとうにお互いを思っていて、
大事にしているのです。
でも、すごく微妙。
そして言葉が汚いのです。

ものごとは比べないと
その異様さがわからないことってありますよね。

私は小学校のときからその人たちといるので、
自分の置かれている設定が
異様であることに全然気づかずにいたのです。

そのとき、
丸いテーブルをいっしょに囲んでいた人の中には
きいちゃんの高校時代、
大学時代の友達がいたのです。

まず仲人さんが
「きいさんは胡蝶蘭のような人です」
と挨拶をしたかったのに、
緊張して「こちょうりん」と言ってしまったとき、
私のとなりのKさん(もちろん女子・・・)が
ぷぷーっ!とふきだし
「こちょうりんだってよ、こちょうりん!」
と言いました。
私のとなりにいた、人の良さそうな、
きいちゃんの高校時代のお友達は
すでに眉をひそめているのを
私は見のがしませんでした。
そのKさんはRちゃんの結婚式のときにも、
目の前のお重を見て
「すげえよ、これ。
  食いたいものが一個もないんだよ!」
と言った強者です。

そのRちゃんというのもまじめすぎて
みなが引いてしまうようなすてきな人で、
いっしょうけんめい前屈みになって
大学時代の友達たちに話しかけているのですが、
今時
「そうですか、
 そういうときにお知り合いになられて・・・」
とか
「お名前を教えていただけますか、
 ああ、__さんですね。
 はじめまして、Rと申します。
 __さんは、どういったご趣味をお持ちですか?」
とかいうことを
同世代の女子に語りかけられても、ただ不気味です。

Kさんは酔ってもいないのに
「うわあ!出たよ!
 ほんとうに三つの袋の話する人っているんだね!」
とか
「きいちゃんのおばさんって
 血がつながってないんだよね!
 いったいいくつなんだ!変わらねえ!
 あたしたちが小さいときから同じじゃない?
 よしもと!」
と同意を求めてくるし、
Rちゃんの相手の顔色を読まないトークも止まらないし、
どうしましょうというときになって、
きいちゃんがお色直しをしてきたのです。

K「すっげえ、化けた!」

「きれいなお嫁さんになって・・・」
と私のとなりにいる高校時代の友達の人は
涙をハンカチで拭いていて、
もういたたまれなさはマックスに!

私たちが最後にいくら
「今日はありがとうございました」
「また機会がありましたら」などと
社交辞令を言っても、
同じテーブルの彼女たちは返事もせず
そそくさと去っていきました。さもありなん。

でも、よく考えてみると、
私たちは絶対におかしかったのです。

制服のスカートのままで、
なぜか私たち三人は中学時代に
「スーパーベースボール」という
自分たちで考えた遊びに命をかけていて、
休み時間になると鬼みたいな顔で
われ先に校庭に飛び出していき、
スーパーボールでやる三角ベース
(しかもハンドベース)をやっていたのです。

校庭は狭く、一年から三年まで
みんなが遊んでいたので、
ほんものの野球部の人とか男子とかも
たくさんいたはずなのに、
私たちは校庭のど真ん中を勝ち取っては、
本気でそれをやり、
転んでパンツを見せたり、ひざをすりむいたり、
ほんとうには殴らないけれど
「熱血」というお約束だったので
ミスをすると監督役の人が
「そこへ立て!ばかやろう!
 今のミスの意味がわかってるのか!
 おまえは大変なことをしたんだぞ!」
と殴るマネをして、
殴られた役の人は大げさに地面に倒れて
「うおお、すみませんでした!監督!」と
泣くという演技までしていました。
なんなの、この遊びの目的は?

そして私とRちゃんは、
放課後にわざわざ時代劇撮影のメッカである
根津神社に行って、
駄菓子屋で買った刀を持って、
武士として斬り合いをしていたのです。
神社の連なる鳥居を駆け抜け、
広いところに出て一対一でにらみあい、
プラスチックの刀をぶつけあいながら戦いました。
中学生にもなって・・・。
しかもやりすぎてほんとうに血が出たりして。
「今の大丈夫だった?」と武士のくせに
中断したりして。
通りすがりの人はどう思ったのだろう。あれを。

さらに・・・
みんなマンガを描いていたのですが、
Rちゃんがまじめに描いて見せてくれたマンガを
わざわざみんなでこっそり丸暗記して、
それぞれがそれぞれの役をやって、
Rちゃんをはずかしがらせる、
という遊びもしていました。

それはそのマンガとしてはクライマックスの、
好きな女の子の前で男の子が
自分の飼っていた小鳥が死んだときの
つらい話をするシーンだったのですが、
ひとりは男の子、ひとりは女の子、
ひとりは鳥の役
(この、鳥の役がいるところがミソだと思う)
をやるのです。

「でも、鳥が死んだんだ」とおおまじめにひとりが言い、
「鳥?」とひとりが言い、
鳥の役の人が手でくちばしを作って
マンガの回想シーンのとおりに
ふたりの間にどっしり横たわるのです・・・。
そしてそれを見ているRちゃんが頭を抱えて
「うおおおおおお、はずかしいいい!
 やめてくれ〜!」
とのたうちまわるのです。

これ、まわりから見たらどうだったのでしょう?

私たちのグループが、
かわいい女の子を意識する年頃の男子たちから
「ブラックホール」と呼ばれていた理由が、
よくわかりますね。

2005-12-21



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