2006.11.20, Mon
「インストバンド」PVフル試聴期間のさいごは、
お待ちかね、タムくんのインタビューです。

といっても、タムくんはいまタイにいるので、
じかにお話を聞くことはできません。
タイに行く用事があるマネージャーの木村和博さんに
質問を託して、聞き手になっていただきました。

これがよかったというか、
よく知っているかたがインタビューすることで、
まるで友だちと話してるような、
タムくんを、すごく身近に感じられるものになりました。
どうぞ、おたのしみください。



仕事中のタムくん(撮影:木村和博)

木村 じゃ、はじめようか。
よろしくね。
タム よろしくー。
木村 さいしょはこの質問から。
「『インストバンド』PVのアニメーション、
 SAKEROCK星野源さんによると、曲を聴いてすぐに
 イメージが湧いたみたいですが、
 そのときのこと、教えていただけませんか?
 タムくんの頭のなかに、
 どんなことが思い浮かんだんでしょう?」
タム いろんなパートがあるね、この曲は‥‥。
最初はピアノではじまってフルバンドになったり、
はやくなったりおそくなったり、
激しくなったりやらかくなったり、
いろんなリズムがあって‥‥。
すごく「物語」がある曲っていうかなあ。

最初はこのアニメのストーリーっていうよりも、
イメージがまず浮かんできた。
どんなイメージかって言うと、高校のイメージ。
ぼくの通ってた高校ね。
なんでかわかんないけど、そこを思い出してしまったんだ。
たぶんぼくは高校生の時に入っていた
マーチングバンド部のこと思い出したからなのかな。

だけど、ぼくの高校は男子校だったから
女の子いないんだけどね(笑)
あとすごい甘いイメージがあって‥‥
木村 甘い?
タム そう、ピアノの音とかが女の子っぽいっていうかね。
高校の時、学校終わったらバス乗って帰ってたんだけど、
わざわざ近くの女子高のバス停に行ってた。
女の子に会えるから。
なんかそういうイメージ(笑)

机が木とか、ちょっと暑い感じとか、
タイの夕方ぐらいとか、
なんか夏っぽくて、あまい感じ。

あと、やさしい曲だったから、
やさしいアニメがいいかなと思った。
あんまり変な話じゃないけど、
ふつうじゃないっていうか。

それと、ラブストーリーがいいなあと思ったんだ。
木村 他の曲も聴いたの?
タム もうひとつの曲も星野さんが聴かせてくれた。
どっちがいいかって。
もうひとつの曲は面白い曲で、
サッカーの話がでてきた。
何かやりながらサッカーする話。
ばかなやつ。
歯磨きながらサッカーとか。
木村 みんなが?
タム みんなじゃなくて‥‥。
たとえば、サッカー5秒して、ご飯食べてるとか、
なんかいろんなシーンがある。
アクションのシーンが
いっぱいどんどん切り替わるっていうか、
そういうイメージ。
すぐにイメージがでてきた。
この曲にするんだったら、
変で面白いものができるかなーと思った。
それでラブストーリーと、ばかっぽい話と
どっちがいいかな?
ぼくのおすすめはインストバンドだけど、って
星野さんに聞いたら‥‥、星野さんが考えるって。
木村 それ、ワールドカップのころだったから?
タム そんなことない(笑)
『キャプテン翼』っぽいっていうか、マンガっぽい。
ワールドカップは歯磨かないよ。


アイデアが出ないよー!
木村 じゃ、次の質問。
「音楽をつくる人は、自分でつくった音楽で、
 感動して泣いたりすることがあるみたいです。
 タムくんは、完成した『インストバンド』のPVを
 はじめて観たとき、
 どういう気持ちになりましたか?」
タム (笑)泣かなかったなあ(笑)
なんか超疲れてて(笑)
うーん、そんな泣かなかったけど‥‥、
そうだなーぼくは最後が好きだった。
こういうエンディングやったことなかった。
すごく曲と合うでしょ?
ニコッと笑って終わるというか、
自分が疲れてたから、見たら癒された。
木村 疲れてた?
タム そう。
ちょうど締め切りの時、フランス行ってて、
いろいろ道具もってくのわすれて(笑)、
余計にすげー大変になって、
ホテルで死にそーになりながらやってた。
みんな周りにいて、集中できなかったし、
なんかすごい疲れてた。
だから終わり方がリラックスしてて‥‥、
そんな感動って感じじゃなくて、
よかったねーみたいな感じ。
ぼくも、このアニメのキャラクターも。
木村 そっか、じゃあ次。
「アニメーションって、
 正直、たいへんじゃないですか?」
タム 一人では大変です。一人なんだよ。
木村 ひと言でおわっちゃった(笑)
「タムくんにとって、音楽はどういう存在ですか?
 趣味? 仕事? アート?
 マンガやアニメとのちがいは?」
タム 音楽はマジックみたい。
みんなで聞くこともできるし、
人にも聞かせてあげられるし。
聞いて何かを想像したりできるし、
その曲を聞いてた時のことを思い出したりするし。

あと、ライブがすごいいい。
皆で集まって、
曲を聴いたり、歌ったり、踊ったり‥‥。
その雰囲気は、どんなアートでも、映画でも、
自然でもできない。
すごいよー音楽は。
インスピレーションをいっぱいくれる。

聞きながら他のこともできるのもいいね。
音楽は耳だけだからスペースがあるじゃん。
想像したり、運転したり、本を読んだり、
絵を描いたり。

マンガとの違いは、何回も聞けるところかなー。
マンガは2、3回で飽きちゃったりするけど‥‥、
音楽は100回とか聞けるでしょ?
それが悔しい。
そして何回も聞くとよくなってきたりするじゃん。
新しいこと発見したり、曲覚えたり。

音楽はスペースがいっぱいあるからかな。
音楽と映画、音楽とファッションとか、
他のものと一緒になったりできるのがいい。
だけど音楽だけしかなくてもいい。
音楽はサポートできるし、音楽だけでもいいし。
そんな感じ。

ライブするのとかもすごい楽しい。やばいよ。


愛用のピアノで何か練習中
木村 なるほど。5つめの質問。
「タムくんの絵は、たとえば『hesheit』
 『everybodyeverything』では、
 ずいぶんちがいます。
 このちがいは、どこからくるんでしょう?
 日本の読者向けか、タイの読者向けかで、
 絵自体を変えるということは、ありますか?」
タム 『hesheit』も『everybodyeverything』も
タイではじまってるから、
そんな日本とかタイとか
分けてるつもりはないんだけどね。
『hesheit』はずっとやってきて、
完璧だとおもったから(笑)、
また違う、描けなさそうなものを
描いてみたくなったんだー。
あとは自分のイメージを無くしたいからかな。
イメージが嫌い。

ぼくのフィロソフィー(哲学)は
『hesheit』の時は絵が綺麗じゃなくても、
いいものが入っているからいい、と思ってたけど、
書いててどんどんその「ラフな絵」が
ぼくのスタイルみたいになってきたというか
そう思われてきてしまって、それが嫌だった。
ぼくが言いたかったのは絵のきれいさよりも、
入ってることが一番って思ってたんだけど、
外見より中身っていうか。
でもみんなこの汚い絵が
お洒落と思ってきてしまって、
そのイメージを消して、
違うものをやってみたくなった。

ストーリーも男の子と女の子だけじゃなくって、
子供とか大人とか、お母さんとか兄弟とか。
こういう話は『hesheit』ではできなかった。
キャラクターがなかったから‥‥。
木村 『hesheit』は、おしゃれなんだ?(笑)
タム そうそう。
なんかそういうイメージっぽくなってきた。
なんかそういう区別されるのがきらい。
「タムのキーワードはこれ」みたいなのがやだ。
ぼくのフィロソフィーは、
どんな人でもどんなとこでも
いいとこがあるっていうか‥‥。
それでいろんなものを、つくってる。
木村 次は‥‥そうだ、こんなこと言ってたねえ。
サケロックのDVD見たときだね。
「SAKEROCKのメンバーになりたいと、
 おっしゃったことがあると、
 星野さんにうかがいました。
 いまでもSAKEROCKに入りたいと思いますか?」
タム SAKEROCKみんなうまいから出来ないよー。
みんなとやりたいけど、メンバーにはなれない!
みんなすごいスキルがあるし、
曲もすごく論理的っていうか、
なんかそういう風に聞こえる。
ぼくの音楽はめちゃめちゃだからね。
ぼくは楽譜とかコードとかわからないし。
SAKEROCKの曲はすごいうまい。

もしやるとしても、ピアノで参加するのは絶対ダメ。
ドラムだったら‥‥
いや、ドラムもすっごいうまいから、
ぼくが入っても、埋めるところがない感じ(笑)

あと、SAKEROCKは楽しそうにやってるしねー。


愛犬たち
木村 さいごは、気軽な質問ね。
「日本をはなれたあと、
 いちばんよく食べたくなる
 日本の食べものは何ですか?」
タム そんな食べたくならないなあ。
タイで食べても、日本で食べるより
おいしくないしなあ。
タイの食べ物の方が美味しいよ。
日本ですごいものをいっぱい食べたから(笑)、
また日本に言ったときに美味しく食べる!
木村 じゃあ日本に帰ったら何が食べたい?
タム マグロ。
木村 質問は以上です。
今日はどうもありがとう!
タム はーい。

(タムくんへのインタビューはこれでおわりです。
 次回からは、「インストバンド」以外の
 タムくんのアニメーション作品をご覧になれますよ。
 どうぞ、おたのしみに!)
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© wisut ponnimit / HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN